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2-4.

その日の深夜。

リビングでアラームが鳴って、飛び起きた。


侵入者だ。


要所要所にセットしていた防犯カメラからの映像を見ると、門の方を向いて黒いバンが停まっている。


門の中側の映像を見ると、三人、白のパーカー一人と、黒のパーカー二人のようだ。


バンの中は見る限り、誰も乗っていない。

侵入者はこの三人だけで良さそうだ。

車が門側を向いているので、素人だろう。


いつか来ると思っていた。

ネットのマップで見ると、人里離れた山中に、ポツンと家が建っているのだ。

金持ちの別荘と勘違いする輩もいるだろう。


侵入者のうち、一人がバールを持っていて、他の二人は手ぶらだ。


バールを持っているから、きっと強盗だ。

よかった。


まあ、こんな時間に来ないだろうが、警察やテレビの取材だったら、地下室に絶賛処理中のゴミがある状態なので、どうしようもなかった。


よし、処分しよう。


徒歩で、しかも慣れない道だろうから、ここまで20分はかかるだろう。

準備をしなければならない。


いそいそと真っ黒な作業服セットに着替え、倉庫に向かう。


倉庫の端に出番で出番を待たせていた、金属製のトラバサミをまとめて二つ持とうとして、重かったので、一つずつ手で持って、所定の位置まで運んでセットした。

再度倉庫に戻り、改造した特製の刺股を手に取り、ナタは腰に差して、トラバサミをセットした場所の近くの木の裏にしゃがんで待機する。


二往復半したが、まだ少し時間に余裕がありそうだ。ひとまず、息を整えながら待つ。


トラバサミも刺股もあらかじめ、真っ黒に塗ってあるので、まあ気付かれないだろう。


しばらく待っていると、話し声と足音が聞こえてきた。

もし、誰かいたら俺が、とか、いい時計欲しい、とか能天気な話をしている。


もっとだらだらしているかと思っていたが、足取りは意外とキビキビとした感じだ。

ゴミクズのくせに。


先頭の男がバールを持っている。雰囲気からするとリーダー格のようだ。

この辺りまで来ると別荘が見えるので、三人のお喋りが止まり、歩みがも少しゆっくりになった。


電気は消えてるので、留守、もしくは就寝してると思っているだろう。


息を潜める私のすぐ前を、三人がそろそろと歩みを進めていく。

もう間も無く罠の位置だ。

誰も気付いてない。全員、別荘を見ながら歩いてるからだ。


ガチンッ!!


音とほぼ同時に、絶叫が鳴り響いた。

先頭の男が綺麗にトラバサミにかかり、倒れ込む。


後ろの二人が駆け寄った。


その拍子に私も道から垂直になるように、三人の横の位置に移動した。


一人がしゃがみ込み、トラバサミに手をやる。手などで開くものか。

バールの男の横に回り込むようにもう一人が移動して


ガチンッ!


二人目の絶叫が鳴り響いた。

が、服を引っ掛けただけのようだ。


罠にハマってない一人だけが立った状態になったので、特製刺股を両手に持ち、突っ込んだ。

刺股の半円の中にうまい具合に胴体が嵌まった。


手元のボタンを押すと、刺股の柄の中心から槍が飛び出し、男の脇腹にグズっと突き刺さった。いい音だ。

そのまま、道の反対側にある落とし穴まで押し切って、刺股ごと投げ込んだ。


ちょっとやそっとでは出れない深さなので、これであと一人。トラバサミを避けた男だけだ。


トラバサミに挟まれてもがく男の横で、黒いパーカーを着た男が、突っ立っている。

どう動けばいいか、混乱しているようだ。


私は腰からナタを手に持ち、構えながら言った。


「座れ」


動かない。


「殺しはしない。座れ」


パーカーの男が地面に膝立ちで座った。


「え、あの、えと…」


「まだ喋るな。両手を前に出せ。大丈夫。そいつも生かしてやるから、とにかく手を出せ」


おずおずと男が出した両腕の手首を、作業服のポケットから出した結束バンドで手際よく、キツめに留める。素直に従った方が得策だと思ったのだろう。


「そのまま、手を着け。地面に」


男の後ろ側に回り込み、足首も結束バンドで留めた。念の為、二重だ。


よし。これで、動けるものがいなくなった。

バールは男が罠にハマって倒れた際に、数メートル向こうに飛んでいるし、トラバサミもしっかりと足に食い込んでいる。

結構な血が出てるのだろう。

暗くてよく見えないが、鼻先に血液独特の鉄臭さが混じった血の匂いが届く。


「よし。お前らは、強盗しようとしてきた。で、合ってるか?」


両手両足を縛られた男に尋ねた。


「は、はい、そうです」


「誰かの指示か?」


「指示というか、あの、そんなつもりはなくて…」


「聞いたことだけに答えろ。話が終われば生きて帰してやるから。時間かけさすな。誰かの指示でここにきたのか?」


「すいません。違います。いや、違わないです」


「ん?どっち?」


「指示と言えば指示で、あの、ナオト、いや、そいつ、その足に挟まってるやつが夕方にここのことを見つけて、タタキに行こうってなったんで」


「ってことは、そいつが計画したのか?」


「いや、多分、計画とかじゃなくて、思いつきだと思います。人がいるとかも思ってなくて」


「思いつきで強盗?おい、お前、ナオトとかいったお前」


「なんだよ…」


少し、落ち着いたようだ。弱々しいが強がった返事が返ってきた。

足元を見ると、ふくらはぎにしっかりとトラバサミの刃が食い込んでいる。素晴らしい噛み合わせだ。


「素直に答えろよ。話が早く終わらないと、手当が手遅れになっちゃうからな。お前らが今日、ここに忍び込みにきたのは、誰かの指示じゃないのか?マジで思いつき?」


「マップ見てたら、たまたま見つけたから…。タタくつもりもなくて、なんか盗めたらと思って…」


タタキというのは、強盗のことだろう。

ってことは、たまたま見つけた人里離れた家に思いつきで泥棒に入って、もし誰かがいたら、そのバールで強盗に切り替えようとしたのか。

いや、したのだろう。


信じられなさすぎて、逆に信じられる。


「そうか…わかった」


「あの、ってか、すいません。これ外してもらえないですか…これ」


トラバサミが痛いのだろう。消えいるような声で懇願される。

大丈夫、すぐに楽にしてやる。


「ちょっと待ってろ」


そう言って、一旦倉庫に戻り、ロープを2本取って戻って来る。


「外した時に血が吹き出さないよう、一旦締めるぞ。動くなよ。」


返事も聞かずに、そう言って、男のトラバサミが噛んでいる方の脚にロープを巻いて、きつく締める。

 

「ちなみに、お前らはいつもこんなことしてんのか?前科はあったりするのか?」


「いや…はい。やってます。やってますけど、まだ捕まったこととかは今のところはないです」


「誰かを殺したり、怪我さしたりとかは?」


「いや、入った先が留守ばっかりだったから…別荘とか」


と言うことは、大丈夫そうだな。

まだ、犯罪者じゃないなら、行方不明になっても、警察は動かなさそうだ。大の大人のただの失踪になる。


「そうか。わかった。ちょっとお前、このまま動くなよ」


言いながら、首にロープをかけやすい体制にして、手際よくロープを首に回し、すぐさまいつものように足で首の後ろを踏みながら、引っ張った。


「んっ」


声にならない悲鳴が出るが、そのまましばらく締めると力が抜けていくのがわかった。


結束バンドの男を見ると、芋虫のように転がったまま、目を見開いてこちらを見ていた。


「たっ、助けてくれるって言ってたのに」


「馬鹿か。そんなわけないだろう」


必死で結束バンドを外そうともがくが、そんな簡単に外れる代物じゃない。


「だ、誰かぁ、誰か来てく「うるさい」


ナタの背で思いっきり側頭部を叩いて黙らせる。

感触的に、しっかり折れたと思われる。


ナオトの首に巻いたロープを、ひゅうひゅうとうずくまる結束バンドの男の首に巻き直し、先ほどと同じように踏み抜きながら、引き絞ると、すぐに力が抜けた。


よし。これでオッケーだ。

念の為、もうしばらく締めて、完全に息絶えさせる。


次に、腰につけていた懐中電灯を付けて、落とし穴の中の様子を覗くと、三メートルほどの穴の下で、刺股の槍が刺さったまま、倒れ込んでいる。

かなりの血が出ている。多分、すでに絶命しているだろうが、まあ、もうしばらく放置しておこう。


あれを引っ張り出すのは手間だから、刺股だけ上から回収して、明日にでも埋めてしまおう。

さて、とりあえず、どうやってこの二つのゴミを地下室まで運ぼうか。


台車を持って来るか。

車を持ってきて、引っ張るか。

あ、落とし穴に落として埋めてしまおうか。

そう言えば、こいつらの携帯と車も処分しなければならない。

やっぱり落とし穴に一回入らないといけないか。

めんどくさいが、やることはやらなければならない。


ふう。せっかく気持ちよく寝てたのに。

夜は長くなりそうだ。

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