2-2.
標的を沈黙させると、道路からさらに奥に引き込んで、まずは携帯電話や財布を探す。
そして、携帯電話の電源をその場で切る。
念の為、GPSでの追跡を途絶えさせなければならないからだ。
幸い、今回は歩きスマホをしていなかったので、スマホも財布もポケットの中に入っており、すぐに見つかった。
ボタンを長押しして電源が切れるのを見届ける。
今回は道路横に雑木林があったので、ちょうどいい具合に引き込み、そのままとどめをさせて、ラッキーだった。
前回は、ちょうどいい場所がなかったから、回収場所探しの調査に時間をかなり使ってしまった。
念の為、道路側に落とし物をしてないか、確認してみるが、大丈夫そうだ。
注意を引く為に使った遠隔バイブはそのまま放置だ。
リモコンは帰ってから家で処分する。
10個まとめて買ったので、遠隔バイブは使い捨てる。届いた時は、セクシー系の業者か、と自分でやった事ながら笑えてきたが、これが、本当に役に立つ。
そして次に、腕や脚を折りたたみ、長い結束バンドを使って留めて運びやすくする。
妻の介護をした際に学んだ、人体を運ぶ時の腕や脚の畳み方と持ち方がすこぶる活きているし、すでに3個目だから、慣れてもきている。
ゴミを運びやすくするよう畳めたら、あらかじめ置いてあったL字台車に乗せ、黒いケースを被せて、雑木林の入ってきた場所と反対側に停めてあった車の後部座席にスロープを使って乗せていく。
あとは、帰るだけだ。
最初の2個を処分してから、これで3個目だ。
これで都合、5個目の処理になる。
上着をジャケットに着替えて、車に乗り込みエンジンをかける。
最近のハイブリッド車はエンジンスタートが静かで助かる。今日は大して深夜ではないが、それでも、人気のないところなので、うるさいよりは静かな方がいい。目立ちにくくて。
今日は自宅よりも別荘が近い場所での回収だったのでよかった。帰路が短い。
帰路が長ければ長いほど、巡回中のパトカーとすれ違う可能性があり、職質されるとは思わないが、やはりちょっと気になる。
飲酒運転も、危険運転もしないし、パトカーを見かけても、顔を逸らしたり、道を変えることをせず、逆に普通の人がするように『あ、パトカーだ』と、言う顔であえて見るようにしている。
だからかどうかはわからないが、今のところ、と言うか、今までの人生で一度も職務質問などされた事はない。何だったら、あの飲酒運転を調べる袋を膨らませるやつなどはやってみたいくらいだ。
普通に暮らしてると、普通はされないのだ。
ただ、万が一職務質問をされて、車の中を調べられたら終了なので、残りの人生がもったいない事になってしまう。
この世に未練も後悔もないが、健康でさえあれば、まだあと十数年は映画を楽しんだり、美味しいグラタンを味わったり、趣味の掃除片付けができる。
終わるまでは楽しみたいのだ。
満足するまでとはいかないかもしれないが。




