1-12.
大型のミキサーのコードを電源に差し込み、一度、モーターを回してみる。
いい音だ。
食材を食べるために使うのではないので、洗う必要はない。
ミキサーの口に入る程度まで切り分けた脚を骨ごと投入する。全体の三分の二程度まで肉が入ったら、蓋をしてスイッチを入れた。
最初こそ、グゴッグゴッと鈍い音がして、骨に引っ掛かったようだが、少し揺らしてやると、段々と勢いがつき、高速で刃が回転し始めた。
ミキサーのモーター音の中に、刃が骨と当たる音がガガガがと混じっていたが、しばらく回していると、その音もほとんどしなくなってきた。
ミキサーの瓶の中は、血肉で上端まで赤寄りのピンクのヴェールに覆われている。
刃に抵抗する音がなくなり、響くものがモーター音だけになったところで、ミキサーを止めて、蓋を開けてみる。
鼻を近づけると、少し臭い。
肉と鉄が混ざり合った匂いがする。
えずくほどではないが、これを番重に移さなければならないので、作業中この匂いが地下室に漂っては欲しくない。
ミキサーの蓋を閉めて、一旦上にマスクを取りに行く。
今日来ているものは、すぐに洗濯をしよう。
頭の隅でそんなことを考えながら、一階への階段を上がる。
そもそも、汚れてもいい服とはいえ、服に匂いがついたり、血の汚れがついてしまう。
下洗いをした上で、洗濯機で回せば落ちるとはいえ、汚れないに越したことはない。
ゴム長でも買ってきて、飛び散る血や肉片をガードした方がよさそうだ。
モノが増えることが好きではないが、実用的に使うものは仕方がない。
マスクをすると、幾分か匂いはマシに感じた。
行って戻ってくる間に、ミキサーの内壁についていた血肉が下に溜まり、ミキサーを回す前は、三分の二程度まで詰めていたものが砕かれて、瓶の半分以下になっていた。
ヘラを使いながら、番重に移し、次は蓋がギリギリ締まるくらいまで肉を詰め込んで回した。
先ほどと同じように最初こそ骨の抵抗の音がしていたが、数分回すとすべて細かく砕かれていった。
再び、番重に移しながら残りの肉片に目をやると、まだ結構な量が残っている。
多分、あと10回以上は回さないといけないと思われる。
一回回すのに、5分程度なのでそれを10回したところで1時間。
大したことはないかもしれないが、でもやっぱり一つのミキサーでやるのは効率が悪いし、回している間、手持ち無沙汰にもなる。
もう一つミキサーを買ってきて、交互に回すようにしようか。
今回の分は、1台でやり切ってしまおうとは思うが、次からは2台で効率よく、時間と手間を短縮しよう。
良く考えたら、二人分の人間で合わせて100キロ以上ある肉と骨の塊なのだから、効率よく処理していかないと時間がかかって仕方がない。
何事もPDCAは大事だ。
やってみて、問題点を挙げて、改善していこう。
そういえば、昔見た映画で、少年が悪役に手だったか、顔だったかをミキサーに押し付けられそうになるシーンがあったな。
何という名前の映画だっただろう。
今日の晩にでも探してみて、ネットで観れるなら観てみよう。
そういえば、しばらく映画を観ていない。
オーブン作りが落ち着いたし、せっかくだからゆっくり観てみることにしよう。




