表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

脱色

作者: 中井一輝

私の世界ではある病気が流行っていた。

それは、色が抜け落ちていく病気だ。

初めにその病気にかかったのは、魚だった。

5年ほど前、突然、真っ白な魚が大量に取れだしたのだ。

科学者達は熱心にその原因を調べ始めたが、5年たった今も原因はわかっていない。

その病気を学者達は、『脱色病』と名付け脱色病にかかった魚は食べないようにということがニュースで大量に流れた。

その次に脱色病にかかったのは鼠だった。

まったく接点の無い二つの生き物が脱色病になったということで世間は大騒ぎになった。

そしてその数年後、恐れていたことが起こる。

初の人間での脱色病患者が出たのだ。

その人は、髪の色、肌の色、瞳の色がどんどんと白に近づき・・・最後には溶けるように消えていったという。

人間以外にも、脱色病にかかった哺乳類はいたが、溶けるように消えたのは初めてだった。

だが、これを境に他の脱色病感染生物も溶けるように消えていくようになったという。

それからの1年で、脱色病患者は人類全てになった。

ついには、植物や空でさえも色が消え始めた。

多分、このペースで行けばもう1年で全ての色は消え去り、生きているものはいなくなるだろうとさえ言われている。

いや、もしかしたら後、1日で消える可能性もあるだろう。

なぜなら、植物はもう9割消えてしまっているのだから。

何故、今でも私達が呼吸を出来ているのかもわからない。

もしかしたら、ただ単にまだ酸素が残っているだけなのかもしれない。

わからない。

人口は、去年と比べて3分の1にもなってしまった。

脱色病にかかってから消えるまでの期間は約1年。

皆、外に出なくなり、残り少ない食料で命をつなぐ。

脱色病になった生物は、繁殖が出来ない。

この世界が滅びるのは明らかだった。


私も、あともう少しで死ぬだろう。

いや、正確に言えば消滅か。

幸いなことに、まだ無機物はそのほとんどが無事な状況だ。

だからこそ、私は今、この日記を書くことが出来ている。

もし、この後この日記を読むことが出来る知的生命体がいたとしたら、私達がどのように消えていったのか知っていて欲しい。


最後に 私の名 を書いて   と思う。


私 名  、       



見 くれた   へ


あり  う 

 して さよ  ら






  06  月 4






ここから先は真っ白なページしかない。









パタン

僕は、その紙の束を閉じた。

僕らは、新たな移住区を求めてさまよう星を捨てた人種。


この星は、今までで見た中で最も僕らが住んでいた星に近かったらしく今は、移住を検討しているみたいだ。

この文字は僕には読めないけど、どうやら日記のようなものらしく何ページにも渡って似たような文字がいくつか書かれている。

この星には何年も前に滅んでいるらしい、何故か全てのものが残されたままに。

どこかに移住したわけでもなく、消滅したようなそんな不思議な真っ白な星。

僕はその紙束をかばんにしまい、少し考える。

これを書いた人間は、どんな人だったのだろう?

この人は何かを伝えたかったのだろうか?

何故、この星の人間は消えてしまったのだろうか?


わからない。


その星の空は、真っ白な紙のように白く高かった。


実は、これ連載用のネタでした。

感想いただけたらうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ