高校の文化祭の話
高校の文化祭の前、文化祭実行委員になった私は、めずらしく張り切っていた。そういえば実行委員は2年生と3年生の2回やったな……目立ちたくないのに。
高校2年生のときは、男子がルーレットを作ってダーツで景品を決めたいって言い始めた。
私はルーレットなんて無理だよぉって思ったから「どうやって作るの?」って言い返してボツにした。
でも、男子はどうしても諦められなかったのか、準備期間中に発泡スチロールを駆使して、なんちゃってルーレットダーツを完成させてしまった。
それは私にとっては衝撃的な出来事だった。あのときの決定をとても後悔した。どうやればいいか、到達地点なんか見えなくたって、工夫を重ねていけば形になるんだ……このときの失敗は強く心の中に残っている。
3年生のときの出し物はチャーハンだった。私は料理は得意だったからチャーハンならできるなって思った。
すごく面白かった。知らなかったんだけれど、クラスには養鶏農家の子がいて卵は手に入れられるし、料理屋の子もいて業務用の冷凍チャーハンが手に入るとのことだった。
こんなに色々な人がいたんだなって、なんて狭い世界に生きていたんだろうって驚いた。
それから毎日、遅くまで残って計画を立てた。売上予測に合わせて、冷凍チャーハンはどれくらい仕入れて、ネギは何本買って、どういう時間配分で準備を進めるかっていうような予定表を作ったりしていった。
その頃から、相変わらずクラスの片隅に密やかに咲く可憐な野花のような私も、色々な人と話すようになった。
それまでは異性と話すことはほとんどなくて、今日は誰々と挨拶で1回話したなどと、日記に密やかな記録を残すような儚い淑女だった私は明るくなった。
文化祭の当日は結構忙しくて、ドタバタしていたことしか覚えていないんだけれど、途中で何かの材料が足りなくなって、エプロンのままママチャリに乗って買い出しに向かったのを覚えている。ワイルドだった。
その間は、料理なんかしたこともなかった男子が家で練習したからって、なんとかシフトを回してくれて、大きな問題もなく文化祭は終了した。
楽しかったな。高校の文化祭。
その後、どういう経緯か覚えてないけれど、それで仲良くなった子と大学一年生の時に付き合うことになった。
色々な初めてを経験して、色々うまく行かなくて、色々あって結局1年も経たずに別れてしまったと思うけれど、私の中に楽しかった思い出が色濃く残ってる。実家の黒歴史ノートともに。
そうだよねぇ。自分一人で生きていても思い出は残らないんだよねぇ。