先生は教えない。ただ筋肉フェチの深淵を見せた。
高校生3年生のとき、私は選択科目を選ぶときに、小論文の授業を選んだ。
受験で少しは役に立つだろうという、昔から効率性だけを考える嫌な性格をしていたんだよね。
それで、何回か授業を受けることになったんだけれど、確か、文学部の顧問をしていたその先生は、結局、小論文の書き方や文学論といったものは何一つ教えてくれなかった。
今日は論説文を書いてみましょうとか、初めての記憶について小説を書いてみましょうとか、そんな実践をするだけで、添削すらなかった。ただ、「これは面白いね〜」、「へぇ~」とか感想を言ってくれるだけの変な授業だった。
その中で、和歌を作ってみようという日があった。
公園で犬と見かける夕暮れに力なくしてうなだれるひまわり
確か、私はこのような作品を作ったと思う。「なんか面白くないな~」って思ったけれど、まぁ、教科書に載ってる短歌ってこんな感じだよね?って、そんな風に思っていたら、クラスの男子がこんな歌を詠んだ。
ヨン様ヨン様言ってないでたまには俺様のことも気にしてくれよな
クラスは大盛りあがりだった。私もこんな風に楽しいものがわき出てくれればいいのにって、そんな風に思った。
そのあとだったと思う。先生はこんなことを言った。
こういうの良いよね。例えばさ、女子は思わないかな。男子がサッカーしてるとさ、「うわぁ、足の筋肉ってこんな風に動くんだぁ」とかって。
私はそれを聞いて、「うわぁ、大人の女性ってエッチだ……」そう思った。
先生は小論文については何も教えてくれなかったけど、文学の深淵を私に覗かせてくれた。