小さな巨人と嫌われ得の先生たちの話
塾の先生の中では特に英語と古典の先生が好きだった。2人とも変な人だった。
英語の先生は自分のことを小さな巨人と言っていて、「身長は160cmしかないが、俺は英語の教え方が一番うまい。近いうちに俺はこの塾の副理事になるはずだ」って豪語してた。
言葉通り、授業は本当に上手かった。教え方が上手かったかは覚えていないんだけれど、先生の授業の後は「英語って難しくないね。楽しいね」って思うようになっていた。
とある日は先生が教科書を持ってくるのを忘れたことがあったんだけれど、「教科書なんかいらねぇ」って言って、Loveの話をし始めた。
「お前ら状態動詞って進行形にならないと思ってるだろ? 違うんだよ、少なくともLoveだけはLovingになることがある。俺はハリウッド映画でそれを見つけた。」
「それは抱き合っている時。愛がまさに高まっている時だ! I'm Loving You! I'm Loving You!って言うんだぞ!」
めちゃくちゃ面白かった。1時間その話だけしていった伝説の授業なんだけれど、とにかくその先生のおかげで私は英語が好きになった。あっ、そうだ、岡村先生だ。思い出した。
「英語は前から読め!そうじゃないと速く読めるようにはならん!」って授業のたびに言ってくれたのも岡村先生だった。
古典の先生も相当変な人だった。見た目は岡田斗司夫なんだけど、眼鏡がギラっと光っていてニチャってしゃべるの。
「みなさん私のこと嫌いですかぁ?いいですよ。皆さんのようなレベルの低いクラスに私が教えてあげることは特別ですからねぇ。悔しかったら勉強して私を見返してごらんなさい。まぁ、それこそ私が願っていることなんですがねぇ。嫌われても問題ない、皆さんが頑張ってもむしろ得、どうですか嫌われ得でしょう?」
すごい濃いキャラだった。「わぁ、変な人いるぅ!」ってテンションだだ上がりだった。本当にすごい先生で、上級クラスでは授業中、全部古典で会話しているらしかった。それで古典で話せるようになった生徒にだけ優しくするんだって。それって高校古典レベルなんだけどね、今思えば、すごい先生だった。あっ、若林先生だ。思い出した。
だからだと思う。今でも私が古典に興味があるのは。あの先生がいなければ私は古典に興味を持たなかったかもしれない。古典の世界にはあの先生より濃い人がたくさんいるから(笑)
中学校の時の塾は本当に好きだった。楽しかった。私の世界をしっかり外に広げてくれたのは、こんな変な大人たちだった。