内申点は演技で稼いだ。かわいい中学生の話。
高校受験が始まった中学3年生の夏だったか、私は、見違えるように心を入れ替えた。
ノートを一生懸命にとり、先生の小話は付箋にメモをしてノートにノリで貼り付け、先生の質問には必ず手を上げ、授業の後にも必ず追加の質問をしに列に並び、家に帰ってからは復習した証としてキラキラのペンで書き込みを入れ、とにかく前向きな姿勢で取り組みまくっている……ように見せた。
何故なら、公立高校に進学するときには内申書というものがあるらしいからだ。テストで点を取ってもダメらしい。20%程度は内申点で決まるということだった。
だから、それまではやる気が無くて、授業中にひたすら資料集を読んだりして時間を潰していた私も、受験に関わる2学期だけは猛烈に"演技"した。
まぁ、実際、塾に通い始めて勉強していたから成績は上がっていたんだけれど、大事なのはそこじゃなかった。勉強しなくても演技だけで取ることができる点数が、そこに20点もあるということが重要だったのだ。
そうこうしているうちに内申書が配られた。願書と共に高校に送るためだ。
内申書は開けてはいけない茶封筒に入っていたから中が見えなかったんだけれど、トイレの天井に付いてる眩しい蛍光灯にかざすと辛うじて数字だけがぼんやりと見ることができた。
なんだか10の数字がたくさん並んでいるようだった。教育ママがいる友達によると10点満点は学年で数人しか取ることができないということだった。
私はニヤリとした。私の作戦は見事に成功したのだ。これは私の人生の中で初めての成功体験だった。私はトイレの中でガッツポーズをした。
やってやったぞぉぉぉ!!!
それ以降の3学期、私の授業態度はそれはそれは酷いものだった。中学生の時は寝ることはしてなかったけれど、またしても授業中に好きなことだけをしているスタイルに逆戻りした。
先生達もさぞかし「やられたぁぁぁ!!!」って思ったことだろう。
ただね……社会の先生だけは厳しかった。私に成績通りの点数をつけてくれた。騙せる大人もいれば、ちゃんと見ている大人もいる。
社会の鬼ババア。それを教えてくれたのは貴女だった。