結局、叶わないことを考えるのが一番楽しい
朝会も終わり、クラスごとに体育館を出る。途中までは綺麗に並びながらも廊下で列を崩す。どうやら転入生はみんなが移動し終わった後にくるらしい。
クラス前の廊下がざわざわするなか教室のドアを開ける。そこにいたのは、
「お、おはよう浅街」
俺が告白した子だった。挨拶に対して彼女、浅街波留佳は軽い会釈するだけ。そんなものだろう。むしろここで明るく挨拶をしてこられる方が嫌だ。
対面にいるのも気まずいだけなのでさっさと教室に入って道を空ける。
「……よく挨拶したね」
「しないほうが引きずってる感だしてキモいだろ」
実際引きずっているのだから表面だけでもよくしなければ。
机に突っ伏していながら今後のあの子への対応を考えていると廊下のざわつきが大きくなったのを感じた。真打登場らしい。
よろしく!なんて女子か男子かわからなくなるほど声が聞こえる。なんか剥がし係まで就き始めたぞ。なにこれ握手会?
「すごい人気だね。それもそうかあんな容姿を持ってるんだから」
「それを踏まえてもすごいのが男子も行ってるところだよな。群れているとはいえあんなに集まるのはアニメだけだぞ」
「はーちゃんは逝かないの?」
「まーさー。字が違うぞ字が。別に男子たちまだ振られてないから。てかその理論でいくと俺もう亡霊だから」
「そっかー。じゃあいってくるねー」
あいつあんな子がタイプだったのか。でもこの前訊いた好きなAV女優とは違う雰囲気な気がするが。…ただの興味か。言い間違えた。…あのおっぱいか。
さっきは遠くてで見れなかったが、容姿は勿論のことスタイルもいいな。ホント絶世の美女。
てかホントに列すごいな。廊下まで続いているぞ。これ流れに便乗して優先権とか売り出したらいくらつくんだろうか。試しに百二十円から初めてみたいものだ。
廊下を眺めながらニーズ層と単価を割と真面目に考えている内に匡季が戻ってきた。
「いい匂いした」
「そりゃよかったな。剥がし相手に何秒耐えたの?」
「あれ見てなかった?他平均三十秒に対して五分間話せたよ。おかげでほら見て。次の授業までのこり二分もない」
いや怖えよ。何五分って平均の十倍じゃん。剥がし見る限り五人はいるぞ。どうりで廊下の列が全然進まなかったわけだ。かわいそうに。
…コイツと組めばあの優先権上手く機能するんじゃ…?
「一枚百二十円とか?」
「あたり」
*
あっという間に授業のチャイムが鳴り、他のクラスは血の涙を流しながら各自の教室に戻っていった。…すまんなウチの親友が。恨むなら仕事を課せなかった剥がし係を恨め。
次の授業は国語。現国と表現した方が正しいのだろうか。ウチのクラスは幸いなことに担任である平井ちゃんが担当しているので授業は比較的質問しやすい。
「せっかくだし御越後さんとの親睦を深めるためにも今日は三人一組のグループワークにしましょうか。誰か組んでくれる人ー?」
先生馬鹿なんですか?なんて質問はできなかった。おかしいな、質問しやすいって勝手に思っていたのに。誰かー?なんて相手にめっちゃ失礼だろ。
ほらさっきまで群れていた男子ども、出番だぞ。授業は積極的に手を挙げようね。
…誰も手を挙げねえじゃないか。ほら御越後さん困ってるぞ。
そんなが沈黙が数秒続くと「あ、こうしない?」と学級委員の女子、中村夏美が口を開いた。
「さっきまでみんな列に並んで挨拶してたでしょ?そん中で一番印象に残った人を選んでその人と組めばいいんじゃない?」
そんな彼女の提案にクラス、というか男子が騒ぎ出した。うるせえよ。
まあしかし男子はないだろう。少しだけしか見ていないが、さっきの彼女の様子を見るに落ち着いた人柄のようだしな、騒がしいのは好きそうには見えなかった。
ていうかホントに男子うるせえな。さっきまでチキってたのが嘘みたいだ。特に騒がしい小野田、お前今一番ダセえぞ。
「マサ、組もうぜ」
「いいよー。誰を選ぶんだろうね。五分話したとはいえ流石に女子だろうし」
うわ、そうだったわ。人選ミスった…まあでもコイツ含め親しいやつあまりいないから結局組むけどな。しかもコイツめっちゃ頭いいし。
さて、あの子は誰を選ぶのだろうか。小野田ではないことに花京院の命を賭けるぜ!
*
「よろしくお願いします」
「よろしくー」
「…よろ」
選ばれたのは我々でした。やはり確率十倍は話が違うな。
残念だったな男子ども。チキンになってるからそうなるのだ。って言いたいけれど恨まれたくないので極力発言には気を付けよう。
「何も言わないままだと進まないしさっさと問題解いちまおうぜ」
「そうだね。はーちゃんの言う通りだ」
「はーちゃん…あの名前はなんて言うの?」
「…椙田葉津祈。マサとか一部からははーちゃんって呼ばれてる」
「…私もそうやって呼んでいい?」
「モチ」
友達になったらしいのでこれからはさん付けいらないな。そもそも呼んだことないけど…。
そこから先は主に匡季に御越後の相手をしてもらった。勿論俺も相手をしたし、ある程度の質問もした。男子たるもの一度はこんな風に美女転入生と話す妄想をするものだろうが、それが現実になってしまった今、何とも言えない気持ちになる。
御越後との会話もほとんど頭に入っていない。
結局、叶わないと信じながら妄想を膨らませるが一番楽しいのだと思った。
宝くじ当てた人って実際何に使っているんだろうか…。
日本語って思っている以上に難しい。誤字脱字あったらすみません。