最終章 滔々と、永遠へ
最終章 滔々と、永遠へ
一
今から二十年前。僕が本当の十四歳だった頃の話。僕は実家のある新潟県新潟市を流れる信濃川で溺れてしまった。河川敷でサッカーをしていてボールを川に流してしまいそれを取ろうとした際深い川に入ってしまい溺れたのだ。なぜだろう。その時の記憶がすっぽりと抜け落ちていた。でも、花蓮さんを葬ってからどういうわけか思い出したのだ。溺れた時、僕は死を覚悟した。同時に死にたくないとも強く願った。その時遠くから声が聞こえたような気がしたんだ。あれは神だったのか、あるいは川の精霊なのかは判らない。
でも神や川なんかは永遠にその存在があるからきっとあの溺れた瞬間、僕は作り替えられたのだ。人間ではない圧倒的な存在に。だから僕は歳を取らなくなった。少年のままになったのだろう。生きたいと強く願い死を回避した結果、永遠の存在に昇華され僕はタリタスとなったのだ。可憐さんはタリタスが心だけの存在だと言っていた。
僕は思う。タリタスというのは生きたいと強く願った結果発生したバグみたいなものなのだ。花蓮さんも彼女が葬ったタリタスも恐らく強く生を願ったに違いない。それが僕らの肉体を消滅させ心だけの存在に仕立て上げ、バーチャル空間の中にいるAIのようになり、同時に人間の姿を借り受け永遠に生きる新人類にさせたのだろう。
次のタリタスが生まれるのが何百年先になるかは不明だけど僕はその日が来るまで川の滔々とした穏やかな流れのように生き続けるのだろう。
〈了〉