【第三話】適性検査‐1
適性検査【第一ラウンド】設定
・山梨県富士の樹海にある対魔討隊所有の土地で行われる
・富士の樹海には五級から一級までの魔物が存在し樹海の奥に行くほど魔物の等級は高くなる
・区画は四つに分けられ第一区画は四、五級まで。第二区画は三級まで。第三区画は一級まで。第四区画はまだ開拓されていない。
・審査において第一区画まで踏み入ることが許可されており、二級から一級相当の実力である副隊長以上が試験官となる
・隊員専用端末に討伐が記録され一時間以内に四十体討伐する能力が求められる。討伐しきれなかった隊員は現状討伐数によって順位が決まる
・ポイントは一位50、二位40、三位30、四位20、五位15、六位から十位10、十一位から二十位5、二十一位から四十位2、四十一位から六十四位1、に分かれる
ここは富士の樹海第一区画。戦闘隊員としての彼らは今から一時間で四級の魔物を四十体討伐することが求められる。
「や、やあ」
ひ弱そうなメガネの少年が話しかけてくる。
「君も怖いよね」
「いや、俺は覚悟を決めたから」
「そ、そうなんだ。僕は俵原樹。よろしく、です。」
「俺はユウキ。よろしくな!」
「君さっきずっとうつむいてたから。僕臆病だけど話しかけられたんだ。」
「俺は集中してたから」
軽く辺りを見回す。
「知り合いでもいた?」
「いや、むしろ逆でさ誰も知らないよ。でもグループとかできてんだな」
試験会場までは集合場所から徒歩十五分程度である。
「養成機関や、隊員の子も多くいるから顔見知りなんだよ。」
「なるほど」
「ほらあそこ見て本当に強いと噂されている子たちは一人でいるよ」
「あれか」
「まああそこにいる子たちが上位勢だろうね」
「負けてらんねえぜ」
「無茶いうなよ。いつかは隊長クラスになるかもしれない子たちだよ」
「これが終われば仲間だろ!ワクワクするな!!」
「ところでなんだけど君の能力は?」
錦さんに言われたことを思い出す。能力を使えないのではなく使う必要がないように立ち回れ。と。
「ほらこれ」
腰に掛けている剣を樹に見せる。
「ああわかった!一ラウンド目は能力なんて必要ないってことだね」
「おうよ!」
必要以上に大きい声だったのか視線が集まる。
「なんですって?能力も使わない?」
一人の少女が近づいてくる。
「アンタ名前は?」
「俺は菱井ユウキ。俺がランキング一位を取るんだ。」
「知らない名前ね。」
呆れた様子で二人を見つめる。
「おもしろいわね。私は園田沙耶よ」
「ユウキくんあの園田財閥の御令嬢ですよ」
「あら、知ってたの」
「日本の対異討隊の武器や設備はもちろん何人も優秀な隊員を輩出していて、今目の前にいるサヤさんは園田家女性史上一の逸材と呼ばれているんですよ」
「ていうことよ」
「随分図太いんだなお嬢様」
「ふん」
少しユウキの周りの空気が和む。だが少しサヤの顔が曇っているようにユウキは感じた。
すると、目つきの悪い男が何人か仲間を引き連れてユウキ達に話しかける。
「やあどーも」
「おう。誰だ?」
「俺かあ。俺の名前は蛭間だ。」
「蛭間か。よろしくな。俺はユウキ一緒に頑張ろうな」
「随分余裕なんだなユウキ君は。肩書きばかりのお嬢ちゃんに世間知らずな坊主とひ弱な坊主。ふっ、まあせいぜい頑張れよ一位を取れるようにな。温室育ちの子猫ちゃん達」
「なんだあいつ」
不吉な笑みを浮かべ蛭間が去っていく。
号令が聞こえて来る。
「今から第一区画に入場する」
重い扉が開かれ、湿った空気が入り口の広場に流れ込む。
「よし全員入ったな。只今より、適性検査第一ラウンドを開始する」
「イツキまた後で会おうな」
「うん。また後で」
すぐさま魔物の姿が見える。辺りでは大きな音、光、早速みんなが狩り始めている。
ユウキの前にも魔物が現れる。核を破壊するために腰にかかっていた剣を抜く。
「うりゃあああああ」
相手はいくら下級と言っても魔物である。すくむ足を全力で動かし切りかかる。数回切り付けると核がむき出しになってきた。ユウキは大きく一歩踏み出し、核を破壊した。
あと39体。
残りは52分。
【参考】
魔物は等級が分かれており以下は驚異の目安である
五級、四級、三級、二級、一級、特級、零級、に分かれる
五級:一般人の素手
四級:ピストルを持った一般人
三級:グレネード
二級:建物を破壊
一級:市区町村規模を破壊
特級:都道府県規模を破壊
零級:国家を破壊