【第二話】入隊
目が覚めると白い天井が目に映る。ここは病院だろうか。体が重い。
「起きたのね」
「ここは?」
「医務室よ」
「医務室?」
「そう。あなたはポータル災害で怪我して、ここに運ばれたのよ」
俺が怪我。あ、そうか。あの時気絶したのか。ユウキは考える。
「莉子は?同い年くらいの女の子運ばれませんでしたか?」
「来てないわね。能力による事故が起きた人やウチに来る見込みがある人が運ばれるのよ。残りの人は一般の病院よ。」
「なるほど。てことは」
「ええ。いるかもしれないわね。まあ、まずは安静にしてね」
莉子の無事を願う一方。疑問が思い浮かぶ。
「ウチって?」
「俺が説明しよう」
医務室の扉を雑に開け、男が入ってくる。
「ここは対異討隊。聞いたことはあるな?」
「あります」
「お前のことは軽く調べさせてもらった。菱井勇気。十五歳。九年前に両親を亡くす。また、昨日のポータル災害の被害者秋葉莉子と幼馴染。だそうだな。」
「待ってください。今なんて?」
災害の被害者という言葉を聞き間違いだと思い、聞き返す。
「昨日の被害に遭い犠牲になった方の一人だ」
「嘘だ。一般の病院にいるって」
「生きていればな。」
「なんで莉子も」
自分を責める。
「お前、魔素感応障害なんだって?」
うつむくユウキは無力感にさいなまれうめき声をあげる。
「昨日の被害を抑えたのはほかでもないお前だ」
「え?」
記憶にない事実に困惑する。
「あくまで俺の推測になるがお前は昨日、能力を発現し魔物を倒した。が、その様子だと記憶はないみたいだな。秋葉莉子の死をトリガーとしてお前に覚醒を促させたんだろう。お前に提案がある。」
「提案?」
「ウチに来い」
戸惑うユウキ。さらには今も能力を探ったり魔素を感じようとしたりしてみても少しもピンとこない。
「無自覚に発現した能力をつかいこなすため、またお前の幼馴染と両親を奪ったポータルの敵を倒すためにさ。まあ親御さんの死の真相が知れるかもしれないぞ」
「あぁ考える時間をください」
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺は錦だ。それじゃ返事待ってるぜ。」
「…」
―――数日後
神妙な面持ちをした人がぞろぞろと集まってくる。
「諸君聞いてくれ。まずは入隊おめでとう。ここに来られるのはとても倍率が高い試験か副隊長以上の推薦を受けたものだけだ。誇ってくれ」
周囲がざわつく。何人かは顔見知りのようですでにグループもできている。
「今日、行われるのは、適性検査である。まずはルールを説明する。今から三ラウンドに分け審査をする。一ラウンド目は四級相当の魔物を三十体倒せたタイムを競う。四級は危険度としてはピストルを持つ民間人だと思えばいい。そして二ラウンド目は四人一組でチームを組み、模擬線を行う全十六パーティのトーナメントである。これも順位によりポイントが付く。三ラウンド目は―――だ。以上で説明を終える。また、順位は入隊時の階級、本人の希望の部隊の優先度に関係する。基本はこちらの判断でそれぞれの部隊に割り振るがな。質問のあるやつはいるか。」
渇いた声を上げる色白の青年。
「邪魔をしたらどうなりますか」
「無論、殺さない範囲でなら認める。今後の人間関係を考えるとおすすめはせんがな」
「じゃ、じゃあパーティ戦で殺しちゃったらどうなるの」
どこからか声が聞こえる。
「三等隊員以上が試験官としてつくので基本は安心せい。」
ユウキは心を落ち着かせる。この中で能力が使えないのは自分のみだと悟っているからである。
深呼吸の後、一ラウンド目の会場へと足を運ぶ。
今から新隊員適性検査が始まる。
審査を書いていきますが次回からあとがきは予告ではなく設定を書いていこうと思います。