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聞きたいんだよ君の話が。だから手段は選ばない


 敵を知り、己を知れば百戦危うからず。

 古代から現代において情報とは武器でもあり、各国間では日夜、情報戦争と言っても過言ではない程のやり取りが行われている。情報とは、それほどまでに大切なもの。


 何が言いたいのかと言うと、俺はあのキョウタとアヤヤについて知らねばならないということだ。

 マリア様に養豚場に押し込められてから人間性を取り戻し、何とか社会生活を送れるようになった頃。既に二人の仲は進展してしまっていた。


 図書委員以外でも一緒にいることが多く目撃されており、キョウタに至っては俺のいるアヤヤのクラスに直接迎えに来たりする程だ。

 男女の恋模様に敏感な女子達が囃し立てており、アヤヤは酷く困ったような表情を浮かべている。付き合うのも時間の問題か、とも噂されているらしい。


 しかも、だ。お昼休みになり、中庭のベンチで俺がツツミちゃんのお手製弁当に舌鼓を打っている頃。


「そう言えば、最近アヤヤさん来ないね」


 毎度毎度来ていたアヤヤは、お昼休みになっても姿を見せなくなっていた。ツツミちゃんが首を傾げるくらいに。


「やっぱりあの噂は本当だったのかな。ボクのクラスの男子が、アヤヤさんにアプローチしてるってやつ」

「…………」

「あっ、本当なんだね。先輩が無言で血涙流してるってことは」


 目から血の涙が出るって、創作の話だけじゃなかったんだ。俺はそっとハンケチで目元を拭いた。


「うーん。ボクとしては先輩と二人っきりになれるから、嬉しいなんてもんじゃないんだけど」

「キ~~~~~~~~ッ!」

「これだしなあ。先輩、ハンカチを噛み締め過ぎだよ。お餅みたいに伸びてるから」


 せっかくのツツミちゃんの弁当が、全然味わえない。彼女と二人っきりなのに、アヤヤのことばかり頭に浮かんできて全然お話できないんだ。

 こんな俺にも付き合ってくれているツツミちゃんには申し訳ない感が半端ないし、いつまでも手をこまねいている訳にもいかん。


 俺は早速行動に出ることにした。

 放課後。マリア様の言いつけ通りに図書委員の仕事をこなし、全てを片付けた後。俺は隣接している図書委員室の扉を勢いよく開ける。


 中にいたのは、帰りの支度をしているアヤヤだった。


「うわッ! な、なんですかナルタカさん。びっくりするじゃないですか」

「アヤヤ。あのキョウタとかいう後輩と何があったのか、詳しく聞きたい」


 俺は単刀直入に彼女に問いかけた。将を射んとする者は、まず将を射よ。ごちゃごちゃやってないで、さっさと本命に攻め込むのが吉だ。

 なに、馬はどうしたって? 奴は今度こそメリーゴーランドでキッチリ仕事をしてもらう為に、シベリアで再教育中だ。


「な、何があったのか、なんて。別になんでもないですよ。ただ同じ中学校で仲良くしていただけで」

「それだけには思えん。だってアヤヤの顔、いつもとなんか違うから」


 俺の言葉に、アヤヤは息を呑んだ。


「なん、ですかそれ。どうして分かるんですか?」

「一年以上、アヤヤのことをずっと見てきたからな」

「ストーカーで訴えたら勝てそうですよ、その台詞」


 お願い待って。ここまで来て逮捕エンドとか、ギャグ漫画でも許してもらえそうにないレベルの打ち切りだから。


「兎に角、ナルタカさんには関係ありませんッ!」


 アヤヤはぷりぷりと怒りながら帰った。残された俺はアヤヤの出て行った扉を見ながら、決意を新たにする。


「絶対に話を聞くぞ」


 次の日から、俺はアヤヤに対して猛攻を仕掛けることにした。朝から二つ隣の街にあるアヤヤの家の前まで行き、選挙前の候補者の如く拡声器を用いて陳情を行う。


「芝原ナルタカ、芝原ナルタカでございますッ! 俺はアヤヤから話を聞きたい者です。付近住民の皆様。何卒、何卒ご協力の程をよろしくお願いしますッ!」

「変質者だァァァッ!」


 隣の家から出てきた、後ろで髪をひとまとめにしたおばさんに110番通報され、俺は脱兎のごとく逃げた。

 後日、二人組の警察官が俺の家までやってきて、お袋と合わせてこってりと絞られた。名乗るんじゃなかったと後悔している、反省はしていないが。


 なお件の張本人であるアヤヤは、額に指を置いて顔を伏せていた。まだ効き目がなかったかとも思っていたが、学校に行った俺の元にあきれ果てた顔のアヤヤがやってきた。


「お話しますので、もう変なことしないでください」


 やったぜ。俺の世間体という多大な犠牲を払ったが、ようやくアヤヤから話を聞けるという。

 放課後に図書委員の仕事が終わった後。人気がなくなった図書委員室にて、俺は彼女と二人っきりになった。


 その日は曇天であり、今にも雨が降ってきそうな空。ゴロゴロと雷らしき音すら鳴っていて、何やら不穏な雰囲気だ。


 盛大なため息をついた後、彼女はポツリポツリと話し始めた。


「始まりは中学校の時。図書委員だった私が、偶然キョウタ君と出会ったことからでした」


 俺はアヤヤの話を聞きながら、彼女の中学校時代について思いを馳せた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございますッ!

もしよろしければ評価、ブックマーク、感想やレビュー等、お待ちしておりますッ!

(=゜ω゜)ノ

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