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三題噺もどき3

作者: 狐彪
掲載日:2024/04/16

三題噺もどき―よんひゃくよんじゅうさん。

 


 重たい頭がズキズキと喚く。


 瞼は開いているはずだが、視界は未だぼんやりと暗いまま。

 うっすらと光はさしているきがするけれど、暗闇には変わらない。

「……」

 外はもう明るいはずなのだけど。

 まぁ、布団の中に潜り込んでいるのだから。

 当たり前なので、言い訳のしようがないのだけど。

「……」

 数日前から、どうにも体が重い日々が続いている。

 それが悪化の一途をたどってしまっていて。

 重くなり始めた時は、まだなんとか動けたのだが……今日はそうもいかなかった。

 何日か、眠れない日々が続いているせいだろうけど。

「……」

 以前はこんな状態になりかけても、動けたのだ。

 動けたと言うか……まぁ。

 空元気を演じるのが当たり前になっていたので。

「……」

 それがどこであろうと、なんであろうと。

 家族の前だろうと、学校に行くときであろうと、職場に行くときであろうと。

 自分の不調は隠すものであって、ひけらかすものではない。

「……」

 それが当然になっていた。

 家族の前では元気にいい子を演じて。

 学校ではいい子で聞き訳のいい大人しいいい子を演じて。

 職場ででも使い勝手のいい大人しいやつを演じて。

「……」

 毎日頭が痛くても。

 毎日腹痛に襲われても、

 毎日吐き気を覚えながら食事をしていても。

「……」

 他人に言うべきではないし。

 そもそも言ったところで、他人は助けてはくれない。

 だって、一番近くにいる大人がそうだったのだから。

 それ以外の大人が、他人が、助けてくれるわけないだろう。

「……」

 今だってそうだ。

 どんな理由で私が倒れようが、仕事ができなくなろうが。

 あの大人は一切の手助けをしない。

 むしろ責める一方で。

「……」

 そういえば。

 ここ数日の不調はあれの送ってきたメッセージからじゃなかったか。

 見たくもなかったが、一応の身内なので、返事をしてやろうなんて思ったのが悪かったのか。

 少し気分もよかった日だったから、油断したのが悪かったのか。

「……」

 思いだしたくもないので、事細かな内容は記憶にないが。

 あれやこれやと、あることないこと言っていた気がする。

 仮にも倒れた人間にいうことかという内容。

「……」

 そろそろ、もう、そんなものは流せるようになってはみたいのだけど。

 それができないから、現状に至ってしまっていて。

 いい大人が……なんて自分でも思う程に。

「……」

 自由に生きられる人間が羨ましいなんて。

 自由に泳げる魚が羨ましいなんて。

 自由に飛べる鳥がうらやましいなんて。

 そんな風に思うなんて。

 思っても居なかった。

「……」

 今でもあんな大人にどこかで縛られて。

 今でも水槽の中でしか泳げなくて。

 今でも鳥籠の中でしか飛べなくて。

「……」

 それを破る術は確かに持っているのだろう。

 でも、そんなことをして何になるのだ。

 自由になってどうする。

 走るのか?泳ぐのか?飛ぶのか?

 狭い世界しか知らないやつは、そんなことできやしないのだ。

 恐怖に負けて、結局狭い世界に閉じこもる。

 それがまさに、今の私だ。

「……」

 助けてと言えなかったのが。

 助けてと言わなかったのが。

「……」

 私が。

 悪かったのだ。

「……」

 いっそ。

 さっさと。








 お題:鳥・演じる・空元気

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