無
三題噺もどき―よんひゃくよんじゅうさん。
重たい頭がズキズキと喚く。
瞼は開いているはずだが、視界は未だぼんやりと暗いまま。
うっすらと光はさしているきがするけれど、暗闇には変わらない。
「……」
外はもう明るいはずなのだけど。
まぁ、布団の中に潜り込んでいるのだから。
当たり前なので、言い訳のしようがないのだけど。
「……」
数日前から、どうにも体が重い日々が続いている。
それが悪化の一途をたどってしまっていて。
重くなり始めた時は、まだなんとか動けたのだが……今日はそうもいかなかった。
何日か、眠れない日々が続いているせいだろうけど。
「……」
以前はこんな状態になりかけても、動けたのだ。
動けたと言うか……まぁ。
空元気を演じるのが当たり前になっていたので。
「……」
それがどこであろうと、なんであろうと。
家族の前だろうと、学校に行くときであろうと、職場に行くときであろうと。
自分の不調は隠すものであって、ひけらかすものではない。
「……」
それが当然になっていた。
家族の前では元気にいい子を演じて。
学校ではいい子で聞き訳のいい大人しいいい子を演じて。
職場ででも使い勝手のいい大人しいやつを演じて。
「……」
毎日頭が痛くても。
毎日腹痛に襲われても、
毎日吐き気を覚えながら食事をしていても。
「……」
他人に言うべきではないし。
そもそも言ったところで、他人は助けてはくれない。
だって、一番近くにいる大人がそうだったのだから。
それ以外の大人が、他人が、助けてくれるわけないだろう。
「……」
今だってそうだ。
どんな理由で私が倒れようが、仕事ができなくなろうが。
あの大人は一切の手助けをしない。
むしろ責める一方で。
「……」
そういえば。
ここ数日の不調はあれの送ってきたメッセージからじゃなかったか。
見たくもなかったが、一応の身内なので、返事をしてやろうなんて思ったのが悪かったのか。
少し気分もよかった日だったから、油断したのが悪かったのか。
「……」
思いだしたくもないので、事細かな内容は記憶にないが。
あれやこれやと、あることないこと言っていた気がする。
仮にも倒れた人間にいうことかという内容。
「……」
そろそろ、もう、そんなものは流せるようになってはみたいのだけど。
それができないから、現状に至ってしまっていて。
いい大人が……なんて自分でも思う程に。
「……」
自由に生きられる人間が羨ましいなんて。
自由に泳げる魚が羨ましいなんて。
自由に飛べる鳥がうらやましいなんて。
そんな風に思うなんて。
思っても居なかった。
「……」
今でもあんな大人にどこかで縛られて。
今でも水槽の中でしか泳げなくて。
今でも鳥籠の中でしか飛べなくて。
「……」
それを破る術は確かに持っているのだろう。
でも、そんなことをして何になるのだ。
自由になってどうする。
走るのか?泳ぐのか?飛ぶのか?
狭い世界しか知らないやつは、そんなことできやしないのだ。
恐怖に負けて、結局狭い世界に閉じこもる。
それがまさに、今の私だ。
「……」
助けてと言えなかったのが。
助けてと言わなかったのが。
「……」
私が。
悪かったのだ。
「……」
いっそ。
さっさと。
お題:鳥・演じる・空元気




