第四話
やはり、何もない……。
もう一度ロッカーを調べてみたが、何もわからなかった。強いて発見を挙げるとすれば、便所のロッカーにしてはバカにたて付けがしっかりしてることだった。
ロッカーの四隅がアンカーで固定されている。便所のコンクリートの壁にぴったりくっついて、びくともしない。普通、掃除用具入れにここまでするか? これではまるで配電盤か何かみたいじゃないか。
僕は半分諦めかけていた。
もう、また今度でいいじゃないか。次に佐藤さんが折り鶴を持っていたとき、再びここまでつけてくればいい。そしてそのときこそ、佐藤さんがここで何をしていたのか突き止める。
僕は男子トイレの外に出た。
通行人の、スーツ姿の男性が横切った。その見知らぬ通行人は男子トイレから出てきた僕を見ると、ニヤッと笑って、「そこのトイレ水止まってますよね」と言った。
去っていく男性。呆気にとられる僕。
急いでトイレの中に戻る。
小便器は昔ながらの手でボタンを押すタイプ。手前から順番に勢いよく押していく。一つも出ない!
個室を試す。和式の上下レバータイプ、洋式の回転レバータイプ、全て水が止まっている。これじゃウン……をしても流れない!
なんてこった。佐藤さんは見知らぬ男と、水の流れないトイレでYセツ行為をしていたというのか!?
ひゅう、と、冷たい風が僕の足元を流れた。
屈んで足元をさすってみた。僕の手にも冷たい風が当たった。継続的に吹いているのだ。
どこからくる風だろう。というか冷たい風? このクソ暑い夏に? エアコンも無い水の止まったトイレの中で?
僕はトイレの入り口付近で、うろうろしてみた。しかしどうやら外から流れ込む風ではない。
どこだ? どこだ? あ、あった。ここだ。
僕は風の通り道を見つけた。それはロッカーから来る風だった。
掃除用具入れのロッカーをもう一度開ける。中には何もない。そしてロッカーの下部を見てみる。土台の側面部分が錆びて、穴が空いているのがわかる。冷たい風はここから横向きに流れて来ていた。最初に見たとき気付くべきだった。
僕はロッカーの底面部分を、思いっ切り踏みつけた。
思った通りだった。
底面は外れて“下”に落下し、固い地面に当たってグワングワンと平たい金属の音を立てた。そう、このロッカーには下がある。
僕はその真四角に空いた空洞を覗き込んだ。コの字型の取っ手がいくつも連なって下に続いていた。しかし途中で見えなくなっている。金属の底面が音を立てるのに要した時間からいって、かなり深い穴だ。