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まおちゃんとゆみちゃん  作者: 世々良木夜風
第一章 魔王の襲来
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Mao 9. まおちゃんはこれから...

「えっ、えっ、今の何?今、起こったことは現実なの?!」

ゆみちゃんは混乱しているようだ。

「...その状態は『混乱』!!まだ、術が残っていたか!!」

身構えるまおちゃん。

「ちっが~~~~~う!!さっきまでの戦闘は本当?そしてまおちゃんはゲームとかに出てくる魔王?」

そう言って、ゆみちゃんはスカートの上から下腹部を触ってみる。

「!!」

そして何かを確かめると真っ赤になってしまう。

「だから最初からそう言っておるであろう。全く。今までなんだと思っておったのじゃ...」

そんなゆみちゃんの様子などお構いなく、まおちゃんは呆れ顔になる。

「だとしたら...ど、どうしよう...そうだ!理事長は!!」

ゆみちゃんは倒れている理事長を見つけると、そっと抱き起こす。すると...

「うっ!」

理事長が意識を取り戻したようだった。

「理事長!!」

「大丈夫じゃ。取り憑いていたものが倒された今、すぐに元通りになるであろう」

まおちゃんの言葉通り、ソファに座らせ、水を飲ませると、すぐに意識がしっかりしてきた。

体にもなんの異常もないようだ。

「あら、わたくし、どうしたのかしら?確か、常春(とこはる)さんが話があるとかで待っていたら急に意識が朦朧としてきて...」

理事長は状況が飲み込めていないようだった。

「あ、あの...ノックしても返事がないので、失礼ですが無断で入らせていただきました。そしたら理事長が倒れていて...」

ゆみちゃんは咄嗟に誤魔化す。

(『霊体の魔物に取り憑かれてました』って言っても、信じられないよね...)

「そうでしたか。どうやら突発的な低血圧のようですね。心配をかけました」

「いえ、ご無事でなりよりです。それより勝手にお部屋に入ってしまい、申し訳ありません」

「いいえ。いい判断です。さすが我が校、始まって以来の成績優良児。褒めこそすれ、叱責することはありません!」

どうやら、ゆみちゃんの評価は学内では高いようだった。

「ありがとうございます」

ゆみちゃんは礼を言う。

「それではお話というのを聞きましょうか。あら?このお菓子は...」

見ると、皿にお菓子の欠片が残っていた。残りかすだけであとは全部、まおちゃんが食べてしまっていたようだった。

「申し訳ありません。この子が手持ち無沙汰だったので、用意してあったお菓子に手を出してしまいました」

ゆみちゃんが謝る。

「それはいいのですが、こんなもの用意したかしら...少し、記憶が飛んでいるようですね」

理事長が不思議そうな顔をする。

「もし、お疲れならば、明日にでも出直しますが...」

ゆみちゃんはそう言うと、心の中で諸手を挙げて喜んでいた。

(よし!今日はもう戻ろう!まおちゃんの正体が分かった以上、相談はできないし、それに私、今...あれ、つけてないし...気づかれないとは思うけど...)

ゆみちゃんは無意識に足をギュッと閉じる。

しかし、ゆみちゃんの期待はあっさりと裏切られた。

「いいえ。急ぎなのでしょう。今は意識もしっかりとしていますし、疲れもありません。すぐに聞きましょう...それで相談というのは...」

「そ、それでしたら...」

(ど、どうしよう!何を話そう!『まおちゃんが魔王で勇者に狙われてるから匿ってほしい』??そんなこと言ったら、私が病院に連れていかれる!)

ゆみちゃんは焦って、代わりの相談内容を考える。そして咄嗟に出た言葉が...

「この子を、まおちゃんをこの学校に編入させてもらえませんでしょうか!!」

(ええぇぇぇぇ~~~~~~!!!)

このセリフに一番驚いたのはゆみちゃんだった。


それからゆみちゃんは一生懸命、説明した。

まおちゃんが自分の遠い親戚であること。

両親が事故に遭い、亡くなってしまって、行く当てがないこと。

まおちゃんはまだ子供だが、頭の良い子で、外国で飛び級を重ね、高校一年くらいの学力があること。

自分には他に頼れるものがおらず、理事長が最後の頼みの綱であると、涙ながらに訴えた...演技であるが...

まおちゃんはゆみちゃんに事前に言われていたためか、大人しくしており、何か聞かれた時には、ゆみちゃんの話に同調してくれていた。


「そうですか...確かに外国では14、5才で大学に入学という話も聞いております。その子も生まれ持った才能があるのでしょう...」

「では...」

ゆみちゃんが期待に目を輝かせる。

「しかし、規定通り、編入試験を受けてもらわなければなりません。それはよろしいですね?」

ゆみちゃんは自分の勉強中に、まおちゃんが難しい問題を苦もなく解いていた事を思い出す。

「もちろんです。そうすればこの子の実力も分かってもらえると思います」

「...特別ですよ。何やら訳ありのようですし...」

理事長のその言葉に、ゆみちゃんの肩がビクッと動く。

「まあ、話せる時が来たら話してください」

「ありがとうございます...」

理事長の言葉にゆみちゃんは深く感謝する。今度は演技ではない涙が出た。

「それで、学費ですが...」

理事長の言葉に再び、ゆみちゃんの肩がビクッとなる。

「成績次第では免除対象となります。それでよろしいですね」

ゆみちゃんの顔が輝く。

「あ、ありがとうございます!本当に...ありがとうございます...」

また、ゆみちゃんの目から涙がこぼれた。

「まあ、あくまで試験に合格したらの話です。そこは公正に行いますのでそれは覚えておいてくださいね!」

理事長がふっと息を吐き、優しげな顔になる。

「はい!お願いします!まおちゃん!頑張ってね!!」

「任せておけ!!」

まおちゃんはやる気満々だ。

「では、早速、試験の準備をしましょう。それまで二人は教室に戻って授業を受けていなさい」

「はい!!」


こうしてまおちゃんは私立大和撫子(やまとなでしこ)女学院の編入試験を受けることになった。



そして、教室までの廊下を行きと同じように二人、手を繋いで帰る。

(ふふ。まさか、また一緒にいられることになるなんてね!)

ゆみちゃんが笑っていると、

「いいのか?」

「えっ?」

まおちゃんが問いかけてきた。

(わらわ)と一緒にいると、また、戦闘に巻き込まれるかもしれん。いくら『シミ付き下着』を持っているとはいえ...」

「キャ~~~!!それは口にしないで~~!」

「なぜじゃ?まさかゆみがそのようなレアアイテムを持っておるとは...皆に自慢して回りたいくらいじゃ!」

「絶対にやめて!!」

ゆみちゃんが強い口調で言う。

「ふむ。不思議なヤツよのぉ...それで...本当にいいのじゃな?」

まおちゃんが再度、確認する。

「うん!だって、まおちゃんと一緒にいると楽しいんだもの!」

「それは妾も同じじゃ!それと前にも言ったと思うが、ゆみが死ぬまで一緒にいるが...」

「もちろん!私から離れちゃダメだよ!」

「やれやれ...分かっておるのかのぉ」

呆れ気味にそう言ったまおちゃんの頬が緩んだ気がした。


しばらく歩いていると、ふとまおちゃんの視線を感じる。

気がつくと、ゆみちゃんの胸を凝視していた。

「えっ!えっ!」

ゆみちゃんが赤くなり胸を隠すと、今度はスカートの裾を眺めた。

「キャッ!ちょっと」

ゆみちゃんはスカートの前を片手で隠す。

「やはり、下着があった方が綺麗じゃのう...あまり、下着をつけずに出歩くものではないぞ!」

「私だって、好きでこうなった訳じゃないのよ~~~~!!」

ゆみちゃんの声が学校中に響き渡った...


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