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まおちゃんとゆみちゃん  作者: 世々良木夜風
第一章 魔王の襲来
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Mao 8. 理事長の正体

「素晴らしいですわ!!まさか、魔王様にお会いできる日が来るなんて!!」

うれしそうにまおちゃんを見つめる理事長。

「ふむ。そなたは(わらわ)の眷属か?」

まおちゃんが問いかける。

「はい!先代の魔王様の部下の部下の隣の家に住んでいた魔物の友達の子供です!」

「それって、ほとんど他人...」

ゆみちゃんはつい、口に出してしまうが、まおちゃんはうれしそうだった。

「うむ!妾も仲間に会えてうれしいぞ!今後は妾に仕えるがよい!」

「・・・・・・ふ・・ふ・・ふ、ふはははは!」

その言葉を聞いた理事長は、しばらく無言で顔を硬くしていたが、その後、いきなり笑い出した。

「冗談もほどほどにしろ!!400年も経って、まだ子供の魔王に仕えよと!ふざけるな!!」

「・・・」

急に態度が変わった理事長を、まおちゃんは特に反応することもなく、見返している。

「お前が成長する頃には俺は消えてしまっているだろう...それまで待っていろと?!」

「将来、魔族復興の折には、そなたのことも称えてやろう」

まおちゃんはそう言うが、

「そんなに待ってられるか!今からお前を倒して、俺が魔王になる!!」

「ほう...そなたごときが妾を倒せると?」

まおちゃんが言ったその時、

「二人とも何言って...あれっ?」

さすがに話についていけなくなったゆみちゃんが口を挟もうとしたその時、立とうとした足に力が入らず、倒れ込んでしまった。

「ドサッ!!」

「うっ...まほたん...わらし...」

上手くしゃべることもできない。

「貴様!何をした!!」

まおちゃんが理事長を睨みつける。

「先程の菓子に痺れ薬を混ぜておいたのよ!お前もそろそろ...えっ??」

なんの変化も見せないまおちゃんに理事長が焦りだす。

「そなた、魔王に状態異常が効くと本当に思っておったのか?めでたいヤツじゃのう...」

「くっ!ならば、これはどうだ!俺が長年、研究して編み出したバフにより、即死魔法の成功率が90パーセントを超えておるのだ」

理事長はそう言うと、魔法を詠唱しようとする。すると、

「ちょっと待て!これから戦闘ということで良いのじゃな?それなら...」

急に、周りの景色が変わり、生活感のない部屋のような空間が現れる。まるで作り物のようだ。

それと共に、どこからか勇ましげな音楽が聞こえてきた。

「チャラチャラチャラ~~~~!!」

「ら、らに...」

ゆみちゃんが混乱した様子で声を出す。

「おお、しもうた!ゆみは妾のしもべじゃから戦闘に参加してしまうのじゃな!すまんが、巻き込まれんように大人しくしておれ」

「あ、あ...」

「ん?『ここはどこだ』?『この音楽は』?ここは『戦闘空間』じゃ。ここで戦わねば、周りの構造物に被害が出てしまうじゃろ!それと音楽はBGMじゃ。それが何か?」

「あ、う...」

「まだあるのか!『なんでそんな都合のいい』?知らん!昔から戦闘とはこういうものだと決まっておる!ゆみはじっとしておれ!すぐに終わらす!」

二人の会話を聞いていた理事長が口を出す。

「ふん!随分と余裕だな!おかげでこちらはバフをかけ終えることができた」

そう言うと、魔法の詠唱を始めだす。

「我は死神。この手に持ちたる鎌によってそなたの魂を刈り取らん...『デス』!!!」

「・・・」

派手なアクションで手を振り上げる理事長に対し、まおちゃんは無反応だ。

「なぜだ!ちっ!運のいいヤツめ!しかし次は逃れられまい!」

再び、理事長が魔法を詠唱する。

「デス!!」

「ふぁぁ~~~あ。即死魔法はダメージが無くていいのう」

「どうして...」

焦る理事長に対し、まおちゃんが答える。

「ラスボスが即死魔法で死んだら興ざめじゃろ!妾の『漆黒のサークレット』は即死魔法成功率マイナス100パーセントの効果がある」

「くそ!俺の最大の魔法が...そうだ。これは言っておこう。俺の正体は霊体だ。この女に取り憑いているので、俺を攻撃すると、この女もダメージを受けるぞ。お前は良くても、そっちのお嬢ちゃんはどう思うかな?」

そう言って、理事長に取り憑いている霊体の魔物がニヤリと笑う。

「あ、あ、あ...」

ゆみちゃんは何か言いたそうだ。

「仕方ないのう...出でよ!我が使い魔よ!!」

その言葉と共に現れたのは漆黒の猫、みけだった。

「ふん!そんな猫しか使えぬか!落ちたものだな!!」

霊体の魔物が笑う。

「ふむ。見た目で相手を判断するか...雑魚らしい態度じゃの...なぜ、この猫が『三毛』というのか考えぬのか?」

まおちゃんは魔物を見下す。

「はは!黒猫なのに三毛か?笑わせる!」

魔物はまだ余裕のようだ。

「ふう...みけよ!一つ目の毛色を見せよ!!」

「フ~~~!!!」

まおちゃんの呼びかけに応じて、みけが毛を逆立てる。すると...みけの毛の色が変わった。青白く、幽かに発光している。

「そ、それは!!」

魔物の余裕が一瞬にして失われた。

「そうじゃ、みけは今、霊体に変化した。これでその女の肉体を傷つけずにそなたを攻撃できる」

「そ、そんな猫に何ができる!!」

魔物は精一杯の虚勢を張る。

それに対し、まおちゃんは無反応で命令した。

「行け!みけよ!!」

「ブオ~~~~~ォ!!!」

低く轟く声と共に、みけの体が10倍以上に膨らんだ。そのまま理事長の体、目掛けて襲い掛かる。

「うわぁぁぁ~~~!やめてくれぇぇぇ~~~!」

情けない声を出し、理事長の体から魔物が逃げ出す。

それと共に理事長の体が崩れ落ちた。

体から抜け出した魔物の大きさは人の半分ほどしかない。

その魔物、目掛け、みけは長く伸びた爪を振り下ろす。

「ギャ~~~~~!!」

魔物の体はみけの様に青白く光り、輪郭が曖昧だが、みけの一撃でその輝きが半分ほどになった。

「妾が出るまでもないか...」

まおちゃんがそうつぶやいた瞬間。

魔物が魔法を詠唱しだした。

「焔よ猛ろ!吹きすさぶ風に乗り、全てを飲み込め!」

「しまった!全体攻撃魔法!...天使、ガブリエルよ!」

まおちゃんがゆみちゃんに向かって、魔法防御の魔法を唱えようとする。


みけは元の姿に戻り、まおちゃん目掛け飛びつく。

そして、黒い穴のようなものの中へ消えていった。

おそらく、『元に戻った』のだろう。

理事長は気を失っているが、『敵』認定されていない為、魔法の効果は及ばない。

まおちゃんは素のままでほとんどダメージは受けないだろう。

しかし、ゆみちゃんは違う。ただの人間のゆみちゃんにとって、中級の全体攻撃魔法は、まおちゃんが唱えようとしている最上級魔法防御を以てしても耐えられないかもしれない。


「遅い!『ファイアストーム』!!」

まおちゃんの魔法は間に合わなかった。

辺りを炎と熱風が吹き荒れる。

「キャ~~~~!!」

「ゆみ~~~~!!!」

麻痺が解けたのか、ゆみちゃんの叫び声が聞こえる。

まおちゃんは自らの失態を嘆くがもう遅い。

そして、炎がおさまった時...

「あれ?私、生きてる...」

ゆみちゃんは生きているどころか、傷一つ負っていなかった。

「なぜだ!」

驚愕する霊体の魔物。

「あれ?あれ?」

その時、ゆみちゃんが何かに気づいたようだ。

片手をジャケットの中に入れブラウスの上から胸に触る。もう一つの手はスカートの中に突っ込んでいた。

「無い!なんで?!」

みるみるゆみちゃんの顔が赤くなっていく。

そして片手で胸を隠し、もう片手でスカートを押さえると、

「キャ~~~~!」

と悲鳴を上げてしまった。

その様子を見た魔物は、

「もしや『シミ付き下着』を装着していたのか!!」

と叫んだ。

するとゆみちゃんは、

「わぁ~~~~!!」

と大声を出して、その声をかき消そうとする。

しかし、魔物はそれを無視して説明を続けた。

「『シミ付き下着』はそれ自体と引き換えに、一度だけ、本人の致命傷を無効化するレアアイテム!そんなものを持っていたとは!!」

「!!!」

ゆみちゃんは消えてなくなりたそうな顔をしている。

「なんと!ゆみの下着にはそんな効果があったのか!なぜ色が変わっているのか不思議じゃったが、あれはやはりシミだったのじゃな!そんなすごいアイテムを持っているとは、ゆみ、恐るべし!!」

「言わないで~~~!」

ゆみちゃんはもう顔から湯気が出そうになっている。

「ふっ、ふっ、ふ。ゆみだけでなく、妾もシミ付き下着を装着しておるのじゃ!勝負あったな!」

まおちゃんが勝ち誇ったように言う。

「・・・」

ゆみちゃんはもう叫ぶ気力もないようだ。

「くそっ!」

魔物が次の攻撃を始めようとするが、

「ゆみにそこまですごいアイテムを見せられては、妾も最上級の魔法で応えてやらねばな!オーバーキルじゃがいくぞ!」

「ま、待て!」

魔物がそれを聞いて慌てるが、

「待たぬ!...赤き焔、しかしそれは始まりに過ぎぬ。灼熱と共に白く輝くとき、全てを無に帰さん...」

「そ、それは最上級の!!」

「消えてなくなれ!『ヘルフレア』!!」

魔物の前に赤い炎の弾が現れる。

それはどんどん、光りを増し、輝きと共に真っ白になる。

まぶしさでゆみちゃんは目を開けていられない。

「うわぁ~~~!...」

魔物の叫び声が途中で消えた。

再び、ゆみちゃんが目を開けた時、魔物の姿はひとかけらもなくなっていた...


そして、また周りの景色が変わったかと思うと、ゆみちゃんたちは理事長室に戻っていた。


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