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まおちゃんとゆみちゃん  作者: 世々良木夜風
第一章 魔王の襲来
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Mao 4. まおちゃんは居候?

「お昼ご飯、できたわよ~~~!」

お昼ご飯は食パンとジャムだ。ゆみちゃんは薄~~く塗っているが、まおちゃんは構わずたっぷりとパンに載せている。

そして『特に何の感想もない』といった表情で食べるまおちゃん。

そのまおちゃんにゆみちゃんはさりげなく気になっている事を聞く。

「その~~、まおちゃんはいつまでここにいるつもりなのかな~。なんて...」

「うむ。安心するがよい。人間は寿命が短いからな!そなたが死ぬまでずっといてやろう!」

「そ、それって一生、面倒見ろという事かな...」

ゆみちゃんの額に汗が流れる。

「うむ。感謝するがよい!!」

まおちゃんは笑顔で答える。

「は、はい...」

その笑顔が可愛くて、思わず肯定の返事をしてしまったゆみちゃん。

(ど、どうしよう...こんな小さい子に『出てけ』とも言えないし...何とか自分からその気にしないと!!)

「こ、ここよりまおちゃんに相応しい場所があるんじゃないかな?」

ゆみちゃんは思い切って口にしてみる。

「あっ!もちろん、一緒にいるのがイヤという訳じゃないよ!!」

周到なゆみちゃんは言い訳も忘れない。

「う~~む。しかし、(わらわ)はゆみが気に入っておるしのぉ...」

まおちゃんは乗り気ではないようだ。

「で、でも、見ての通り、うちは貧乏だから、もっと裕福なお(うち)で贅沢に暮らした方が楽しいんじゃないかな?」

ゆみちゃんはなおも食い下がる。

「そういえば、ここには何も無いのう。ゆみが勉強とやらをしている間、ヒマで仕様がなかったわい。ここには『てれび』はないのか?」

「持ってないのよ。一応、くれるという人はいるんだけど、受信料、払わないといけないしね...」

「そうか...では『すまほ』はないのか?!あれはなかなか面白い!」

「スマホは知ってるのね...」

「何か言ったか?」

「え、えっと、ここにはテレビもスマホもないから、あるお家に行って、そこで暮らした方が楽しいんじゃない?」

ゆみちゃんが慌てて誤魔化すと、まおちゃんの様子が変わった。

「そうじゃのう...それも悪くないのう...」

このチャンスを逃すまいとゆみちゃんは畳みかける。

「そ、そうよね。やっぱりスマホがないとね!それじゃ...」

しかし、まおちゃんに遮られてしまった。

「...と思ったが、やっぱりゆみと一緒がいい!!ゆみは妾と一緒はイヤか?」

まおちゃんが寂しそうな顔をする。

「そ、そんなことはないけど...私はまおちゃんに幸せになって欲しいの!その為には...」

「では、ここで暮らすことにしよう!それが妾の一番の幸せじゃ!!」

「まおちゃん...」

満面の笑顔でそう言うまおちゃんにゆみちゃんはそれ以上、何も言えなかった...



(どうしよう...どうしたらその気になってくれるかな...)

昼食後、勉強の続きをしながらゆみちゃんは考えていた。すると、

「洗濯物とやらはまだ乾かんのか?」

まおちゃんがゆみちゃんに聞いてきた。

「う~~~ん。夏ならともかく、まだ春だしね。夕方までは干しとくつもりだけど...でもどうして?」

ゆみちゃんが聞くと、

「早く、下着をつけたゆみを見たいのじゃ!もっと可愛くなるのであろう?」

とまおちゃんがワクワクした様子で言う。

「わ、私は、そんなに可愛いわけじゃないし...」

ゆみちゃんが照れながら言うと、

「何を言う!そんなに抜群のプロポーションをしておるではないか!妾も成長したらゆみのようになりたいものじゃ!!」

とゆみちゃんの胸を見ながら言う。

「そ、そんなにいいものじゃ...」

ゆみちゃんは恥ずかしくなって胸を両手で隠してしまう。

「なぜ、それほど綺麗なものを隠すのじゃ!妾なら自慢して回るがのう」

そう言うまおちゃんにゆみちゃんは思わずきつい声を出してしまう。

「私はこの胸、嫌い!男の子とかにジロジロ見られるし...大体、男なんて!」

そこまで言って、ゆみちゃんはまおちゃんが引いているのに気づく。

「ゴ、ゴメン。まおちゃんには分からないよね...」

ゆみちゃんは寂しそうな顔をした。

「そうか。悪かったのう...じゃが、妾はゆみが好きじゃ!その顔もその胸も!だから誇りに思うがよい!!」

まおちゃんはそう言うと、一人で遊び出した。

「...ありがとう...」

ゆみちゃんはそっと自分の胸を見る。なぜか、そんなに悪くない気がしてきた。


ゆみちゃんが男嫌いになったのには訳がある。

父親がダメ男で、散々、借金を作った挙句、蒸発してしまったのだ。

その為、子供のころから、借金の返済と生活費を稼ぐ為に、苦労している母親を見てきた。

今も、住み込みで休まず働き続けている。ゆみちゃんは高校の近くのアパートに一人暮らしだ。

また、中学の時の思い出も男嫌いに拍車をかけた。

美しく成長し、特にプロポーションが良かったゆみちゃんは男子の遠慮のない視線を浴びせられた。

しかも、相手の立場を考えない、男子の会話には馴染めなかった。

その為、何度も告白されたにもかかわらず、一度も男子と付き合ったことはない。

そして、高校も、女子高を選んだ。

私立しか女子高がなかったので学費の問題が生じたが、今の学校は成績優秀者には学費免除の制度があるので問題ない。

どちらかといえば、お嬢様校の雰囲気があるのだが、男子と共に過ごすよりははるかにマシだった。

将来は奨学金で大学を出て、できれば女性が活躍している会社でキャリアウーマンになるつもりだ。

当然、一生一人で生きていくつもりである。

よって、まおちゃんが一緒でも問題はないのだが...

(まおちゃんと暮らすといっても、学校とかの問題もあるし、生活費もかさむよね...それにお嬢様のまおちゃんにはきっと今の生活は続けられない...やっぱり、何か他の方法を考えないと!)

とはいっても、すぐには妙案が浮かばない。

とりあえず、今は勉強に集中することにした。すると...


「ふむふむ。これはa=8とb=12じゃな」

まおちゃんがいつの間にかゆみちゃんの参考書を覗きながらつぶやいてきた。

(ふふふ。お勉強ごっこかな!)

ゆみちゃんはそんなまおちゃんが可愛らしくて、つい、笑顔になってしまう。

「すごいね!まおちゃんはこんな難しいのが分かるんだね!」

「当たり前じゃ!妾はINT(インテリジェンス)はもちろん、全てのパラメータが最高水準じゃからな!!」

(また、お金持ち言葉...つまりは頭がいいってことだよね!)

「すごいすごい!」

そう言いながらも、ゆみちゃんはその問題を解いていく。

(そうはいっても高校生の問題は分からないよね!偶然当たってたりし...)

「えっ!合ってる...」

「そうじゃろう。妾にかかればそんな問題、簡単じゃ!」

驚くゆみちゃんに対し、何事もないかのように答えるまおちゃん。

「じゃ、じゃあ、これは?」

ゆみちゃんは一番、難しい問題を見せてみる。

「う~~~む。これがこうでこれがこうだから...」

まおちゃんはしばらく考え込んでいる。

「こうじゃ!」

そう言って、参考書に答えを書き込んだ。

「・・・」

それらしい答えに、ゆみちゃんも慌てて、解いてみる。

なんとか出した答えはまおちゃんの書いたものと同じだった。

「もしかして、他の教科も?」

その後もいろいろ解かせてみたが、高一レベルの問題は難なく解けるようだった。

(さすが、お嬢様ね!きっと小さいころから英才教育を受けていたんだわ!!)

ゆみちゃんは改めてお金持ちのすごさを思い知ったのだった。



そして、夕方になり...

「ど、どう...」

恥ずかしげに自分の姿を見せるゆみちゃん。

「おお!やはり下着はすごいな!より美しく見えるぞ!!」

それを見たまおちゃんは大興奮だった。

「は、恥ずかしい...」

「そんなことはない!妾も早くそのような体になりたいのう」

ゆみちゃんはまおちゃんとの約束通り、下着をつけてから、立ち姿を見せていた。

もちろん、下着姿ではない。その上にTシャツとスカートをつけている。

なので、下着をつける前の方がよほど恥ずかしい格好をしていたと思うのだが、改めて『美しい』と言われ、照れてしまったようだ。

それにゆみちゃんの下着はオシャレではないし、素の胸の形もいいので、綺麗になった訳はないのだが、プラシーボ効果というヤツだろうか?

とにかく、まおちゃんには美しく見えたらしい。

「うむ!今日は『下着』という素晴らしいアイテム?を教えてもらった。ゆみといると楽しいのぉ。これからもよろしく頼むぞ!」

まおちゃんはすっかりここに居付くつもりのようだ。


「そ、その件なんだけど、一度、警察に行ってみないかなぁ?きっと親切に...」

「警察は嫌いじゃ~~~~~!!!」

ゆみちゃんの提案に、突然、まおちゃんはひどく取り乱してしまった。

「どうしてそんなに警察が嫌いなの?何かされたの?」

ゆみちゃんが驚きながら聞くと、まおちゃんは嫌な思い出を話し始めた。

「妾が街を歩いていると、何度か警察に声をかけられたことがあるのじゃ。そして決まって交番に連れていかれた...」

「そうでしょうねぇ...」

「そして『親はどこだ』だの『家はどこだ』だの『知り合いの連絡先は』だのしつこく聞かれるのじゃ!」

「大体の結末は予想できるわ...」

「妾が本当のことを言っても信じてもらえず、解放してくれないのじゃ!毎回、妾は逃げ出すのにとても苦労したのじゃ!」

(そっか...交番勤務のお巡りさんは庶民が多いからお金持ち言葉が理解できなかったのね...)

「妾は警察にだけは絶対に行かんぞ~~~!」

そう言って、まおちゃんは泣き出してしまった。

「大丈夫!そういうことなら警察には行かないから安心して!よしよし!」

ゆみちゃんはまおちゃんの頭を撫でてあげる。

「うっ、うっ...」

まおちゃんが落ち着きを取り戻すのにしばらくの時間が必要だった。

(この分じゃ警察に頼るのは無理ね...他にどうしたら...)

またしてもゆみちゃんは途方に暮れるのだった。


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