決意2
暫くすると、俺は唐突に動き始めた。何かをしなければいけないという衝動に駆られた。一刻も早く、自分の目的を探したかった。俺は覚束ない足取りで、階段を降りていく。時には、手すりに掴まりながら。無我夢中で降りていった。
やっと、階段の最期の段を降りると、俺は目を見張った。眩い光が瞳を刺激する。いくつかの机や椅子が並べられており、とても心地の良い空間が広がっていた。木特有の匂いが俺の心を落ち着かせる。
「あら、身体の方は大丈夫ですか」
この空間に感動していると、宿の店主に話しかけられた。彼女はいつも変わらぬ笑顔を見せる。あの笑顔を見ると、心が軽くなった気がする。
よく見ると、部屋の隅に、フードを被った人たちが固まって座っていた。三人。きっと、俺以外の客だろう。店主が言っていた人数とも合う。それにしても、不思議な格好をしている。顔を隠すように、深く被ったフード。不自然に目新しい服。身を寄せ合って会話する姿。
俺はその人たちに近づいていく。何かをしなければいけない。これがシナノとホウショウへの罪滅ぼしになるとでも、思っているのかもしれない。出来ることなら、助けたい。困っている人の助けになりたい。そんな付け焼刃の善行など、薄っぺらいだけだ。分かっている。それでも、何かをしなければ、気が済まない。
「なあ」
俺はもう、投げやりになっていた。普段、怖がっていた人との関わりを作ってしまうぐらいには。本当にどうしようもないと思う。ただ、俺が満足するためだ。俺のエゴでしかない。
「……なんだ」
三人は警戒しながら、俺を見る。答えたのは男は腰の剣に手をかけている。睨まれているのが、顔を見ないでも分かった。ホウショウと出会った時はよく、ホウショウに睨まれていた。最近はその回数も減っていた気がする。少しずつ、少しずつ、解けていった。懐かしいという場違いな思いが心を温かくする。
「俺が助けてやろうか」
俺は得意気に笑って見せた。上手く笑えているかは自分では確認できなかった。
相手が、困惑しているのが伝わってくる。暫くの沈黙の後、三人が目配せし合った。いつの間にか、剣から男の手が離れている。少しは、警戒が解けた様に思う。三人の肩の力が抜けていく。
俺は近くにあった椅子を寄せると、話を促した。
「で?困っていることがあるんだろう?」
これで何かが変わるのだろうか。別に、シナノとホウショウの代わりを見つけたい訳ではない。俺はこの窮屈な世界でも、生きることが出来る術を探している。同じ過ちを繰り返さないために。俺が追い求めた世界には何も残らなかったんだから。シナノとホウショウを見捨てて、逃げた結果がこれだ。自分でも呆れてしまう。だからこそ、俺は最後まで足掻かなければいけない。もう、何かに縋りつくのは終わりにしよう。
俺の決意は固かった。




