出会い２
今回は少し短いです。
毎日投稿をするぞと固い決意を自分の中でしていたのですが、早くも揺らぎそうです。
多分できないと思います。
暖かく見守ってください。
他の辺境の地も同じような状態なのだろうか。そろそろ別の場所に移動しなくてはいけない。ここで野宿することも考えたが、崩壊した建物は雨風を凌げないほどひどいものだった。これならば、山に入って小さな洞窟を探すほうがよっぽど賢い選択に思えた。
「行くか」
独り言を言うのは一人の時間が多かったからかもしれない。今更直そうとしたところで、不可能に近い。一人旅は面白いが、たまに話し相手が欲しくなるのだ。
ずっと同じ体制で座っていたからか、足腰が固まっているような気がした。山まで走るか。そう思った時、それは起こった。
鎖骨付近にある古傷が急に痛み出し、赤く発光し始めた。心臓は今まで経験したことのないほど早く、どこまでも早く動いていた。全身が沸騰しているように熱い。まるで過呼吸のように息の吸い方を忘れ、瞳からは生理的な涙が溢れてくる。なんだ、なんなんだ、この感覚は。自分にも何が起こっているのか分からなかった。
「おい、王都にはどうやって行けばいい。……聞こえないのか。早く答えろ。俺は国立軍所属第三番隊副隊長ホウショウだ。国立軍に逆らうことは国の御心に逆らうのと同義。三秒待ってやる。その内に返答がなければお前を切る」
かすむ視界の中で言葉もない屍を相手にしている声がはっきりと聞こえた。人間だったものに剣先を向ける人影を捉える。俺の意志関係なしに足は動き出した。
「なんだ、貴様は」
気が付いたら、剣を握る男の腕を掴んでいた。
自分でも何をしたのか、理解が追い付いていない。普段なら絶対声などかけない場面だ。信じられないような目で、掴んだ自分の手を見つめる。
「おい」
「……そいつはもう死んでる」
全身に力を入れ、声を振り絞った。握った手は嫌な汗で濡れていた。
「そうか」
冷たい声が空間に落ちていく。男と目線が合った。不思議な感覚だ。この世界には俺たち二人しか存在しないのだと錯覚する。二人で何もない世界を形作っていく。容易に想像できるそれに、目の前にいる男と自分が初対面だということが信じられなかった。
（前も、どこかで……）
突然頭痛がひどくなり、正気を保っていられなくなる。最後に見たのは男の焦った顔と男の後ろにある血塗られた屍たち。ああ、俺はどうなるのだろう。いや、そんなことどうでもいいか。人はいつかいなくなるのだから。何かを期待しても、それには意味がないのだから。
