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〈異世界アンチ北村〉

最悪だ。


僕は死にたかったんだ。いや、確かに死んだはずだ。だが今、なぜかこうして生きている。

「北村みなみ 男 高校2年生 学校でイジメられ、限界を迎えて学校の屋上から飛び降りて死んだ…はずだった」

うん、記憶喪失ではないな。

僕はどこかの草原にいた。ここはどこだろう。嫌な予感しかしない。さっきから見たこともない変な鳥がキーキー鳴いてるし、向こう側に見えるのは…城か?

「これはもしかすると…いや、まさかな…どっかの歴史的建造物だろう。きっと僕は病院かなんかで手術されてなんとか生き返ったんだ。そうだ、そうに違いない。じゃなきゃこんな状況おかしいだろ…」

普段僕はあまり焦らないマイペースな性格だが、僕が今こんなにそわそわしているのは、

『異世界転生』

この可能性がわずかにあるからである。いや、そもそもそんなファンタジックなことは信じたりしないたちだが、だからこそそういうありえないことが嫌いだった。

「どこかに鏡はないか…?」

目覚めて1番最初に気にしたのは、自分の容姿だった。理由は、転生だった場合顔がイケメンとかになっている可能性が高いからだ。あんな気持ち悪い顔になるなら、事故で手術されたぐちゃぐちゃの顔であってほしい。そう思いながら鏡を探していると、湖があった。僕は薄々気付いていた。ここは異世界だと。恐る恐る湖の水面に顔を近づけた。

「ほっ。よかった。全然変わって………る!鼻が少し高くなってる!キモッ。」

しかし、そこ以外特に変わったところはなかったので、ひとまず安心した。

僕はここがどこかを知るため、とりあえず城の方向に向かった。


城の付近に行くと、何やら人だかりができていた。

「おい、田中がまたやるんだとよ!」

「へえ?田中ってあのダイヤモンドメンタルの?」

「そうそう。」

「そいつはすげえや。ははっ」

(田中?やっぱりここは現世なのか?)

僕は気になって人混みをくぐり抜けた。いったいなにがあるのやら………!

「 ゲ ボ ゲ ボ オ ‼ ‼ ‼ 」

しまった。思わず声に出てしまった。周りが僕を見ている…

そこには、いかにも俺TUEEEとかいうやつをしそうな厨二くさい服装のイケメンの男が鎖に繋がれた強そうなモンスターの前に立っていた。あぁ…吐き気がする。ここはやっぱり異世界なのか…

その男がカッコつけた動きをして叫んだ。

「疾風竜巻サイクロン斬り‼」

ヒュゥゥゥ

「…」

「…」

「…」

その瞬間、軽くつむじ風が吹いた。…いや、この男の技で起こしたのか?なんだコイツ…俺TUEEEじゃないのか?

「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

周りの野次馬が一斉に笑いだした

しかし、男は技が決まったとドヤ顔をしている

「フッこの俺が強すぎて笑うしかないようだな」

男はそう呟いた

なんだ?強い?今強いと、そう言ったのかコイツは。あれで?…あのつむじ風が強い?

あまりにも気になったので、隣の人に聞いてみた

「あの、そこの男って、強いんですか?」

すると意外な答えが返ってきた。

「ブフッ!強い?あいつが?違う違う。そんなわけねえだろハハッ!ヒャア‼あいつはな、『ダイヤモンドメンタル』って言う自分のことを強いと思い込むスキルを取得してんだよグフッ‼クキキキキ」

「スキル…なるほど、ありがとうございます」

ってことはあの男は称賛されてるんじゃなくてむしろ馬鹿にされてるってことか

「疾風竜巻サイクロン斬り‼」

「疾風竜巻サイクロン斬り‼」

「疾風竜巻サイクロン斬り‼」

男は技を連呼しだした。鎖に繋がれたモンスターには、ほとんど効いていないようにみえる。

そういやさっき、誰かがこの男のことを田中とか言ってたっけ?気のせいだろうけど、なんか数年前に失踪したアイドルグループ『AZARASHI』の田中に似ているような…


ダイヤモンドメンタルの男は1時間程かけてやっと鎖に繋がれたモンスターを倒した。その間、観衆の笑いは止まらなかった。なんか、僕のイジメられていた頃を思いだして少し不快な気分だった

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