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異世界と俺

作者: 3馬身2分の1

異世界で冒険をしている俺(20)と、いとこの萌花ちゃん(8)が交流するおはなし


誰だって冒険者、勇者になれるんです。

「おにいちゃん、まだ生きてる?」


今いる『異世界』と今までいた『現実世界』とを区切る扉から聞こえる声に、俺は強く反応する。


「おうよ、生きてるぜ!この間、ゴーレムを討伐したんだ!」


今でも思い出す。いやあ、あんときは壮絶だった。

俺と対峙する黒い塊。いざっゴーレム!ということで、攻撃力がある割りには、素早さも高くて俺も少し本気を出しちまった。

まさか、俺が素手でなくて武器を使うなんてな。

それもワープゲートを使って、別の世界から飛び道具を召喚しての討伐。

まさかあんなチートを使うことになるとは……。

まあ、あんまりやり過ぎると悪目立ちするからな。今後は控えよう。


「おにいちゃんすごーい!」


聞こえてくる幼い声は、俺の発する言葉に心底感動しているようだった。


「だろだろ?萌花ちゃんも早くこっちに来いよ」

「ええ-。でも、そっちに行くためには『死ななきゃ』ダメなんでしょ」


そっそうだよなぁ。

さすがにこちらに来るために死ぬのは色々と荷が重すぎる。

異世界を守るために犠牲になるのは俺だけで良い。

俺が現実世界で死んでからもう1ヶ月が経過している。

あれは7月の中旬。

これから暑くなるぞと天気予報が言っていたので

「いやっ!もうすでに暑いんですがっ!」

と突っ込んでいた時期だった。

当時はここで生活して最初はどうなるのか全く想像もつかなかったが、案外なんとかなるもんだ。

異世界は俺を快く迎えてくれた。ねぐらもある。

なぜか分からないが、食料も定期的に送られるシステムになっていた。


この世界は最高かっ!


きょうはこれからギルドからの依頼を待ちつつ、この世界にいる働き者のモブたちの動きを観察する予定になっている。

あいつらはなにが楽しいのか一心不乱に獲物を確保しては、ギルドに集めている。

俺にしてみればゲームのNPCみたいなもんだが、こいつらの働きっぷりを観察しているとなかなか面白い。

おっと、まだ萌花ちゃんと話をしている途中だった。


「まあ、そんな感じで俺は大丈夫だ。萌花ちゃんも元気でやれよ」


扉の向こうで雑音が聞こえる。そろそろタイムオーバーか。


「うん、あっおにいちゃん、私いかないと。ごめんね――」


そして通信が途絶えた。萌花ちゃんは昨日から、こうして俺と通信をしてくれる。

どういう仕組みで通信が出来ているのかはよく分からないが、こうして萌花ちゃんとの通信を楽しみにしている。


俺も少しはあっちの世界に未練があるのかもしれないな――。


おっと、そんな感傷に浸っている訳にもいかない。

俺はなんとかしてこっちの世界で生きていかなければならないのだ。


と、ギルドからの依頼があっても良いように待機をしていると「そいつ」は姿を現した。


「マ、マジかよ……」


俺は言葉を失った。

平和だった世界にヤバイ奴が現れたのだ。

「そいつ」は俺が観察を楽しんでいたモブたちをぱくりと食べ始めた。

激震が走る。俺はつばを飲む。


――とうとう姿を現しやがった。


話には聞いたことがあった。この世界には滅多に姿を現さないが、かつて見たものがいると……。

長い尻尾にギロリと獲物を睨む目。そして鋭い爪。


そう、ドラゴンだ!


平和な街に現れたドラゴンはゆっくりとしかし確実に俺に迫っていた。

手元にある武器を……そうだっ!

俺は手元にあった身近な素材で即席の剣を錬成した。

素材はお粗末だが……まあ、倒すまではいかなくても追い出すくらいは可能だろう。

ドラゴンと俺はにらみ合ってしばらく、ドラゴンがよそ見した瞬間に俺は一気に剣を振り下ろした。

しかしドラゴンはさっと攻撃を避けて体制を整える。

一進一退の中、萌花ちゃんからの通信が入る


「おにいちゃーん」


くっこのタイミングでかっ。

さすがに今は――。


俺があちらの世界に声を掛けようとしたときだった。

萌花ちゃんとは別の声が俺の耳に届いてきた。


「萌花!この部屋は近づいちゃダメ!ほら、おじいちゃんの墓参りに行きますよ」


その声に促されてか萌花ちゃんの小さな声と階段を降りていく音が聞こえた。

(社会的に)死んで、妄想の世界に転生しました。

ちなみにゴーレムはゴキブリです。

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