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神使のお狐さまは異世界で何を成す?

作者: 狐野るるら

とある人に言われた。

「なろうで」と

「昔、お世話になった御方の所に急な空きが出来てしまってねぇ…」


 上役である雷神様に呼ばれたと思ったら、突然そう告げられた。


「それで私に?」


 長年、この御方の下で色々な経験を積んでいると何を言いたいか理解するのは容易い。 

 元々私は人であったが、雷神様の些細なうっかりで雷を落とされ見事死亡。

 謝罪はされたものの生き返らせるのは流石に無理と告げられ、代わりに魂を宿す身体として神使の血を引く白い子狐の身体を貰い、されど下界で野生な生活と言われても無理なのでこの御方の住む神界の屋敷で色々お手伝いしながら今まで暮らしてきた。


「君も私の下で修業してそれなりの格を持つぐらいには成長したし、近い内にどこかの社か杜を任せようと内心考えていた所にこの話がやって来てね」


 それが今回の出向話である。


 元が人であるので神らしさは無いと自覚はしているが、まさかの大抜擢。

 たとえ出向いた先が劣悪な環境であったとしても、今の自分なら野生生活しなくても過ごせるだけの力はある。


「それで、何方へ向かえばよろしいのですか?大体どこへでも行けると思いますが?」


 私のその問いに、雷神様はニッコリと笑って。


「魔法のある異世界」


 と、短くそう告げた。





 -----





 元人間で今は狐ではあるが、犬である。

 この世界には狐と言う生物が存在しないらしいので仕方がない


 最もよく似た存在が犬、若しくは狼なのだ。

 なのでこの世界での私は犬なのだ、いまいち納得は出来ないが。


(さて、これはどうすればいいのだろうか?)


 森の中に作られた小さな石造りの祠。

 立地としては小高い山の上にあり、その麓には村以上町未満な感じの人里がある。

 見た感じの文化や文明としては近代寄りの中世南欧地方といった感じだろうか?


 そして。


『GURUAAAAAAA!』


 この世界に降りた途端、住居予定である祠を掃除していた娘に襲い掛かろうとしていた緑色の全裸に近い小鬼(事前に覚えた知識でゴブリンとは知っている)数体をぶちのめし、今現在その内の一体を踏みつけている最中なのである。


 ゴブリンは爪や牙を使って押さえつけている私の前足を攻撃するが、神の使いたるこの身体の前には無意味。

 そして今の私の大きさはトラック程では無いが、ちょっとした大型乗用車ぐらいのサイズだ。後でサイズの調整を行っておこう。


 しかし、足元でもがいているゴブリンを見て、本当に魔物が居る世界なんだと、しみじみ思う。

 このゴブリンに限らず、オークやオーガといった闇の勢力に与する魔物が蔓延っているせいで人類の生存圏は思うように広がらず、発展は一部を除いてかなり遅れていると聞かされている。


 ちなみに私に与えられた使命はこの世界の人々に秩序を与え、発展を見守る事。

 私以外の神の使いや使命を与えられた者はこの世界には大勢居るようなので、あくまでもこの地方限定ではあるが仕事は仕事だ。


(とりあえず、魔法とやらを試してみようか?)


 神力では無く、魔法。

 一度だけ拝謁したこの世界の神である御方が言うには、私の属性は『光』らしい。

 ならばそれらしいのを使ってみようと、人だった頃によく遊んでいたゲームを思い出しイメージする。


(ニ〇ラム)


 浮かんだのは、めったに使われない魔法で確実に上位に入っているであろう呪文。


 だが…。


『GUEEEEEEEEEEEE!!!!!!!』


 眩い光がゴブリンを包み込むと、その光の中でゴブリンは断末魔を上げ、最後にはチリも残らずに分解されていったのである。

 威力は折り紙付きだった。想像したよりもかなりの斜め上な感じで。


「か、神様…なのですか?」


 適当に思いついた魔法の威力とゴブリンの最期に少しだけ唖然としていると、人の言葉が聞こえて来た。

 見ると、跪いて祈りの姿勢でこちらを見ている一人の娘の姿。ゴブリンに襲われようとしていた所を助けた娘である。

 服装は汚れてはいるものの、その身体は無事である事が喜ばしい。


(洋の顔立ちなのに、着ている衣装はなんとなく巫女服なのね)


 文化の違いなのかはまだよく分からないが、これは今後の勉強次第。

 そしてこの祠を掃除していたと言う事は、この娘はここに居た前任を信奉していた信者だと思われる。


 なお、前任は私と同じ獣系であったらしいが、居なくなった理由は弱ってた所を何者かによって倒され、消滅させられたと聞いた。

 そう聞くと危険な任地なのかもしれないが、闇の勢力が蔓延るこの世界ではそれが普通なのかも知れない。


 しかし、これは答えてよいものなのか?

 下手に答えると場合によっては双方共に余計なものを抱え込む可能性も。


 娘は無言を肯定と受け取ったのか、続けた。


「こ、この地を守る神犬コノル様が魔の氾濫から私達を守る為に傷つき御隠れになってから百猶予年、私は…私達はコノル様が復活する時をお…お待ち、しておりましたあああああ!」


 最期には感極まったのか、凄い表情で泣き崩れてしまった。

 可愛い顔が台無しである、泣き止みなさい。


(て、言うか?神犬?やっぱり私は犬にしか見えないのか?)


 泣き崩れている巫女の娘と、娘の些細な一言で小さく傷ついた、異世界の一地方を守り発展させると言う使命を託された元人間の神使の狐。


 果たしてその結末はどうなるのか。

 それは神ですら分からない未来なのである。

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