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月曜はまたやってくる

登場人物

東条 一  :二十二歳 俺

佐々木 裕人:二十歳  俺?

白井 伊織 :十七歳  俺? いや私? 女子高生

渡瀬 沙紀 :二十二歳 俺? いや私? 美しいOL?

石田 大造 :六十代男性 俺? いや……おっさん


由香    :遠距離恋愛していた元カノ。『サヨナラ』の置き手紙でフラれた

係長    :鬼のような(?)係長

斉藤 美奈 :二十四歳 隣デスクの少し気になる女性。父親が会社の専務

斉藤専務  :閻魔大王のような(?)専務


 何をする気力もなく日曜日を過ごしてしまった俺は、体と頭のメリハリを取り戻すため、月曜は少し早く出社した。


 昨日までの一週間が、まるで嘘だったかのように感じてしまう。


 営業二課の部屋に入ると、斉藤の姿を見つけた。もうすでにパソコンの電源を入れ、キーボードを叩いている。普段見られない姿なのだが、先週休んだ二日分の仕事を少しでも片付けておこうと思ったのだろう。

「お、おはよう。この間はすまない」

 俺は嘘や言い訳をたくさん用意していた。もしそれで斉藤が納得しなくても、まさか俺達の事情を公にすることはできない。詐欺師になったようで胸クソ悪いのだが……。

「おはよう」

 ……斉藤の返事はそれだけだった。

 問い詰められることもなく、ただパソコンを見ながらそう言っただけだった。


 いつも通りといえばいつも通りだったのだが、変化があったのは昼食の時だった。



「いつまで仕事してるんだ。昼飯なくなってしまうぞ」

 時計を見ると、もう十二時を十五分も過ぎてしまっているのに気付く。

「係長! 飯に行く時に声掛けてくれてもいいじゃないですか!」

 係長は爪楊枝をくわえ、持っている紙コップからはいいコーヒーの香りが立ち上っている。

「つべこべ言わずにさっさと飯食ってこい! 今日はエビフライがあったぞ」


 ――!

 慌ててパソコンを省電力モードに切り替え、隣の席のパソコンをシャットダウンし、食堂へと向かう。係長は満足そうな顔でコーヒーをかき混ぜていた。


 仕事に夢中になって昼飯の時間に遅れてしまう。こんなにも頑張っている俺の姿を、是非とも専務などに見てもらいたものだ――。


 満席の食堂で座る所がなく、俺はちょうど一週間前と同じようにガラス戸を開け、ベランダ席で食べることにした。

 すると一週間前と同じように斉藤が本を持って俺の前に座った。前とは違い、何も言わずに座り、何も言わずに昼食を食べ始める……。

 俺も同じように何も言わずに食べ始める……のに、気まずくないのが不思議だ。


 大好物の海老フライを口に頬張り、尻尾ごとバリバリ食べていると、斉藤の箸がすっと俺の皿の海老フライをついばんだ――。

「――あ! こら、俺の海老フライになにすんだ斉藤」

 まったく聞こえてないかのように本を読みながら……俺の海老フライに――ガブリとかぶりついた。

「ああ~! そんなに食べたいのなら斉藤も海老フライ取ってこれば良かったんじゃないのか?」

 っていうか、「一本頂戴」の一言くらい、あってもいいのではないか――?

 これ以上減らされないよう、残りの海老フライを急いで食べた。それを見て斉藤が……、

「ケチ」


 なに? ケチ? やっぱり俺のこと?

 いやいや、これは値段うんぬんの問題じゃない。

 それに……この前の『友鳥』での飲み代は俺が全て払ってるじゃないか~。本当は斉藤が奢ってくれるはずだったのに~。そんなことを考える俺……ちょっとケチなのかもしれない……。

「この前はごちそうさま。海老フライ食べ過ぎると太るわよ」

「よけいな御世話だ」

 斉藤は本を閉じ、食べ終えた昼食のトレーを持って立ち上がった。

「今度は私が奢ってあげるわ」


 そうとだけ言い残して去って行く斎藤の頬が、少し赤かった気がした。


 はいはい、そうですか。

 期待せずに……待っていますよ。


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