第五話
船は確かに全く振動もないまま着陸した。
船の外をセンサー類で調べると、呼吸は可能そうだ。
テレビカメラによる映像では、着陸したのはどこかの草原といったところだろう。
「出てこられても大丈夫です。ここはむしろあなた方が住むべき場所ですから」
女性の声が船のスピーカーから聞こえる。
さっきのTeroという人だろう。
一つ分からないのは、地球が放棄されてから相当経っていて、全ての人類がいなくなったというのにも関わらず、人がいるということだ。
もしかしたら、遭難者の末裔かなにかかもしれない。
とにかく外へと出ることにした。
気圧差は無く、処理をすることもなく船から降りる。
人がいた。
ただ一人、女性がこちらを見ている。
「地球へようこそ」
彼女が俺に話しかけてきた。
「はあ、どうも」
なんと返せばいいものか、悩んだ末でそんな気のない間抜けな返事しかできなかった。
「あなたで、人類脱出以降4人目の人類です」
彼女はそれを教えてくれた。
そして、俺に背中を見せる。
「申し遅れました」
どうやらどこかへと案内しようとして、すぐに立ち止まる。
それから俺を再び見た。
「私がTeroです。地球の守り人、総支配人。少なくとも、私に危険がない限り、あなたを攻撃することはありませんから、ご安心ください」
そう言われても、安心はできない。
Teroの笑顔が、なにやらこちらへの威嚇に見えた。