第三話
飛行は安定していた。
磁気嵐や恒星風といった障害も少なく、今回は運がいいようだ。
ジャンピングと呼ばれるワープを何回か繰り返しているうちに、予定していた故障ポイントにやってきた。
「では、始めるか……」
故障のやり方は実に簡単だ。
エネルギーを注入するだけで済む。
このやり方は、宇宙船の定期点検、通称 船検の時に回避するためのものが最初だといわれている。
船の用途によって半年から1年に1回、船検を受けなければならない。
さらに3年に1回は大規模なもので連邦が指定した工場でなければならない。
それを少しでも遠のかせるためにするというものだそうだ。
エンジンで使用するエネルギーの110%を少し強めに入れ続けると、ある地点でエンジンが過供給扱いとなり停止する。
停止すると本来であれば補助エンジンが起動するが、それはあらかじめ切っていた。
「……よし、今」
俺が独り言を言うと、その通りにエンジンからエラーが吐き出される。
それを回避するためにエネルギーが停止し、船は漂流を始めた。
ただ、どこに向かっているかは分かっている。
太陽の重力に引っ張られて、その方向へと動いていっているのは、観察するだけではっきりと分かった。




