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第十六話
地下街への入り口は、枠こそレンガで作られていたが、それ以外の金属はすっかりと錆びてボロボロになっていた。
「入れるのか……?」
思わず疑問に思う。
昔は、この辺りはひまわり畑だったようだ。
とても綺麗だっただろうが、今は季節が違うのか、くるぶしくらいまでしかない草が生えているに過ぎない。
「昔はきれいだったんだろうな」
そういうと、ロボットが気を利かせたのか、あたりに映像が投影される。
それは、夏の暑い日、見渡す限りのひまわり畑の映像だった。
少し手を伸ばせば、いや、すでに足元からも触れるほどの近さで咲き乱れている。
「すごかったんだな、昔は」
言って後ろを向く。
地下街の入り口らしく、階段がずっと続く。
「よし、行こうか」
階段を降り出すと、すぐに映像は消える。
そして壊れたシャッターをのけながら、俺は放棄された地下街へと降りだした。




