05 詩季 伊檻
詩季伊檻、性別女、職業教師、担当教科化学、なんだかかっこいい感じの女教師に連れられ学校の屋上までやってきた。
「話と言ったがその前に一服を失礼するよ。」
そう言ってシルバーのジッポで火をつけ煙草をふかした。
「じゃあこの学校について話そう、この学校で男と女の仲が悪いってことはわかってるよな?まずはその原因となった事件から話そう。
うん十年前の、まだこの学校が平凡な普通科高校で平和だったある日のことである……
昔まで行事として存在していた合唱コンクールの練習をしているとき、普段は静かな女子が言ったんだ
女子A「ちょっと男子ちゃんと歌ってよ!」
男子「なんだようるさいなあ、早く帰らせろよ部活あるんだけどー」
女子A「男子がちゃんと歌わないからじゃん!」
男子「うっわ、面倒くさ……帰ろ帰ろー」
女子A「みんなで練習しないと意味ないじゃん、……うっぐ……えっぐ」
女子A泣いて教室出て行く。
女子B「ちょっと男子!A子泣いちゃったじゃん、謝ってきなよ!」
女子達激おこ。
男子「は?勝手に泣くのが悪いだろ、別に本気で帰る気なかったし……」
男子達こんなことで泣く女子のせいで面倒なことになってうんざり、早く帰りたいなどと騒つく。
今まで男女それぞれに少しずつ溜まってきていた不満などが限界を迎えていたのか、少し前からこの学校に感じていたよくない空気の所為なのか、はたまた別の理由なのかはわからないがこの出来事が引き金を引いた。
男子達のあまりのやる気のなさに女子達は糞ほど怒り狂い、男子達もそれに反発し対抗する。
たまたまそのクラスが当時の生徒会メンバーや部活のリーダーが多かったからか、少しずつ学校中を巻き込んでいった。
ひとつのクラスの出来事が、学校中を巻き込み男女の仲に溝を作った。こうして男女が戦争する学校が出来上がってしまったんだ。
その事件を在校生は新入生へと歴史を紡ぎ、今もこうして戦争が続いているんだそうだ。
って事件自体は良くあるやつじゃねえか!?え、なに?これで戦争になってるの!?言っちゃ悪いけどしょうもなさすぎない!?
しかしあくまで引き金になったというだけでその前から少しずつ歪みというかそう言ったものが生まれてきていたんだろう、社会全体が男女平等にしようと働きかけているしそう言った政治的なことも原因としてあるのかもしれない。じゃなきゃここまではならない、しかしこれを聞いたとしてどうしようもないんだけど。
「先生一同もなんとかしようと努力したんだ。しかし男女仲良くしようとする行事を行うと、そのたびに戦争が勃発し大惨事だ。出来たことと言えば合唱コンクールを無くす事と、男女平等の学校だと外部に建前を作る事くらいだ。
色々な教師を新しく学校に呼んで色んな事を試した、私もその呼ばれた教師のひとりで精一杯努力した。でもどうにもならなかった……。
どうしても諦めきれなかった私の耳に、ある一報が届いた。
この学校に転校生がやってくると。」
なんだか嫌な予感がする、なにより詩季先生のキラキラに輝くその瞳に見つめられている状況がそれを告げている。
「私は絶望の淵で最後の希望を見つけたと思ったよ、そりゃあもうビビビッときたね電流走っちゃったね。
先生にはどうにもできなかったことが生徒ならどうにかできるのではないかと思った。
私はすでに君に希望を抱いてしまっている。
だから頼みたいんだ、君には申し訳ないし教師として失格だと重々承知の上で、
この学校を救って欲しい。」
悔しさを噛み締めながらすがるような気持ちで頼んでいると先生の声から感じてしまった。
そんな先生の気持ちに答えられる気がしない、僕はそう思う、僕にそんな力はない。
「申し訳ないですけど僕では無理です、勘弁してください。」
正直に口から出た。
「君を助ける事を私が手伝ったことは聞いてるよね?
実は君が捕まっている場所を教えたのも私だし、突撃の合図を出したのも私で、君の腕の縄をライフルで千切ったのも私なんだ。
あー、あのとき助けなかったら君は今頃どーなっていたかわからないよー。
いや、これは脅している訳では決して無いよ?ただ事実として述べているだけでね?」
こ、この教師僕を脅していやがる……、いや確かにそれを聞くと僕が今男であることがこの人のおかげなのかもしれないが……。
「それに君、女の子にモテたいんじゃないのかい?いやあ、普通の男子高校生なら女の子とイチャイチャしたいって考えるのは普通のことだよ、恥じることじゃない。
それを叶えるためにはこの学校はあまりに不適切だ、だから変える。
偶然にも君の願いと私の願いが同じ方向を向いているじゃないかー!
だから頼まれてくれ、私も一緒に手伝うから頼むよ!」
先生は下手な演説のように喋ってこそいるが学校を変えたい気持ちは本当にあるんだと思ってしまった。
そこまで生徒に頼むものなのか。
確かにモテたい、それを叶えるのに学校を変える必要があるのもわかる。
でもそんなことは関係なく、困っている女性を見逃すことを僕の心が拒んでいた。なんでだろう、今まで困ってる人を見かけても、見て見ぬフリをして面倒ごとを避けてきたのに。転校して変わりたいと思ったからだろうか、この先生の気持ちに感化されたからだろうか。
「はあ……、わかりました。このまま身の危険を感じながら学校生活送りたくないですし。」
そんな自分に対する言い訳なのか照れ隠しなのかわからない御託を並べ。
「この学校を救いましょう。」
僕は意志を固め、転校前の朝のように絶対モテてやるという決意を胸に、学校を変えるために動くことを選んだ。




