01 期待
季節は春の装いから徐々に夏に移り変わり日差しが少し焦ったく感じる6月初めの朝である。
今日は僕、佐藤波風にとって大事な日であり、新しい青春のスタートである。とてもきらびやかに感じた空と景色を眺めながら歩いているとなんだかあっという間に目的地に着いてしまった。少し薄汚れた外壁が伝統と哀愁を漂わせ、校内から微かに聞こえてくる生徒の声が僕の気分を高鳴らせた。ここ平和学園高校に転校生として今日から僕は通うことになるのだ。
季節外れの転校に戸惑いもあるが、転校生という圧倒的レアキャラが自分だという事実が戸惑いを打ち消していた。なんたって転校生だ、クラス中、学年中、いやはや学校中が転校生に期待を寄せているに違いないのだ。その期待と転校生というレッテルによって、転校生効果、転校生フィルターで僕はたちまち人気者のモテモテ青春道を送ること間違いなしってわけ!人間ってのは第一印象がすごく大切だ高校生活なら尚更である、この日のためへの準備に抜かりはない。
勇気を出し書店でメンズ雑誌を買い、普段絶対行かないオシャレえーな美容院で綺麗なお姉さんとのおしゃべりにどぎまぎしながら髪を切ってもらい、一枚二千円する勝負パンツを履き、決して不自然にならないよう軽めにワックスをつけ、今日のラッキーアイテムである絆創膏までも持参している。
自分の顔は決してイケメンとは言えないが中の上くらいだと自負している、これに転校生フィルターで上の中くらいまでランクアップするはずだ。
ここまで入念な準備をしたんだ大丈夫だ、そう自分に言い聞かせ平和学園高校へ足を踏み出した、僕の新しいスタートへ踏み出した。
この平和学園高校全体で起きている面倒ごとに巻き込まれるなんて、当然今の僕は知るはずもない。




