無題
緑色の扉の前に立った<センナ>はノックをした。
「来たか。入れ」
低く良く響く声が聞こえた。
<センナ>は後ろに立つ、クロウと<ショナ>に頷く。
クロウは自然と姿勢を正しくする。
「失礼します」
小さく扉を開けると、温かい空気が流れ込んだ。火の精霊の働きで暖めただろう。
<センナ>、<ショナ>、クロウの順で部屋に入る。
部屋には1人の女性と腰に長剣を付けている男が居た。
「こんな時間に呼んでしまい、すまない。私が<マサリ>だ」
椅子に座った女性が厳しい口調で発言した。銀色の髪で長さは肩までの程度。スタイルそこらの女性と変わらない。 ただ、ジャージを着ているので、クロウは少し引いた。
「君がクロウだな? ”傲慢の神”ダライマン様からおおよその話は聞いている」
「やっぱり、あいつかよ」
「だが、直接会ったんだろう? 私達からにすれば、羨ましい。ただ、この一言に尽きる」
「・・・・。ど・こ・が?」
「神様に文句を言える所」
「だろうな」
クロウが力なく笑うと咳払いが聞こえた。
<マサリ>の隣にもう1人の女性が立っていることにクロウは驚いた。
気配が全く無かったのだ。
「私は<ダーク・ドールです>。あと、影が薄いと良く言われています。あなたも今思ったでしょう」
言い当てられた。
「いやぁ、胸が薄いなぁと」
「そこ? そこを言うのか?」
<マサリ>が困惑した顔で言い放つ。
「まぁいい。クロウ。君を呼んだのは他でもない。そこに居る男を何とかしてほしい」
クロウは<マサリ>から目を逸らした所で、長剣を腰に付けている男と目が合ってしまった。
「僕はドンークリ・グッバラィ。よろしく」
「ボクはアロンダ・クロウ。依頼を受けてきた者だ」
「うむ。性格は三下ではないのか。ならば、興味が失せたな」
「三下?」
<マサリ>に問うと、苦笑いと共に答が返ってきた。
「まぁ、敵の雑魚キャラのようなものだと分かって貰えば・・・・・」
「それなら問題にならないが」
「クループ行動を良く掻き回している。『お前は三下キャラではない』という理由だけで」
「ああ、なるほど」
グッバラィという男の人物像が見えてきた。
「依頼分かった。で、私に丸投げか?」
「いや、冒険仲間として、一緒に行動できれば安心できる」
「・・・・。分かった」
クロウはグッバラィに歩き寄る。
「ボクは大剣使いだ。君は?」
「私は誰かを庇ったり、敵の攻撃を防ぐ事ができる。だが、三下キャラではないお前を庇ってやれる義務はない」
「いや、守れよ。今から君の仲間になるんだから」
クロウ強引にグッバラィと握手を交わした。
それが2人の邂逅であり、伝説の始まりだった。