携帯電話と猫
携帯電話が鳴った。
一緒に『にゃーん』三毛猫のハルキが鳴いた。
ハルキは、一週間前から私の部屋に居候している。
携帯電話が鳴るといつも一緒に鳴く。
ハルキは私の猫じゃない。
彼氏のアキトの猫。
いや、猫だった、かな。今は居候。
また携帯電話が鳴った。
ハルキも「にゃーん」と鳴く。
泣きたいのはこっちなのに。
アキトが旅に出て一週間。代わりにハルキを置いてった。
よろしく頼むって。
もう会えないってわかってたら、引き受けるんじゃなかった。
ハルキも巻き添えになったし。
ハルキは、携帯の音が好きらしい。
あいつのこと思い出させて、私と話させたいのかな。
私は思い出したくない。
携帯も壊れてるのにどうして鳴るんだろ。
それもアキトばっかり。
部屋もずっと暗いまま。真っ黒に焦げてる。
ああ、そっか。思い出した。
私は携帯を手にした。
ごめんねアキト。
携帯電話が鳴った。