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冥界探偵 煉獄創  作者: 輝
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探偵喰い

丸い空間から抜けた先には、町があった。イギリス風の建物が立ち並び、美しい街並みだった。

 「ここが冥界に存在する町。ヘルパークだ。」

 「何でいきなり英語なんだよ。」

 「だって建物とかを見た感じ日本ってよりは海外風だろ?だから英語にしたみたいだぞ。」

 「確かに冥界村だとちょっと重いもんな。でも、ただ英語で訳しただけだけど。」

 町はとても賑やかだった。創はあることを思い出した。

 「そう言えば、今って何時?」

 監獄さんは、首にかけていた懐中時計をシャツの中から取り出した。

 「んーっと・・・10時だな。」

 「やっぱりそんぐらいだったのか。夜だし、酒場も盛り上がってるし。何か人間界に居た時となんら変わりないなー。」

 「あっ?夜じゃねーぞ。バリバリの朝だ。」

 「えっ?じゃあ何で暗いんだよ。月も出てるし。」

 「馬鹿かお前は。町はあってもここは冥界だぞ。そんな冥界に朝があってたまるか。」

 創は再びここが冥界だった事を思い出した。ただ今まで人間界に居た人に、そんなことは当たり前だろと、あちらの常識を怒り口調で言われても困ると創は心の中で思った。

 そんなこんなで、商店街を歩きながら話していると、突然何人もの叫び声が聞こえた。

 「鏡魔さまー。鏡魔さまー。」

 事件や事故では無く、誰かを崇めるような物だった。名前を呼ばれている者を探そうと辺りを探すが誰もいない。その時誰かが創の肩を叩いた。

 「創くーん。そっちじゃないよ。う・し・ろ。」

 うしろの言い方が気持ち悪かった事には触れずに、監獄さんの指さす方を見てみると、身長は小さく、銀髪で左目は隠れて見えない感じのアシメトリーの髪型で、服装は高級感のあるスーツを着ている少年がいた。どうやらここにいる人達は、この少年に向かって叫んでいたらしい。

 「あいつは誰なんだ?」

 興味は無かったが、思わず聞いてしまった。

 「あー、あいつも冥界探偵さ。」

 「そうなのか。あの感じだと相当腕は良いみたいだな。」

 「確かに腕はいい。だが俺は好きじゃねぇ。」

 その時、監獄さんは嫌いな人を見る眼差しではなく、冷たくて、冷酷な目で、彼を見つめていた。

 「監獄さんも嫌いな人とかいるんだな。」

 「あいつが裏で呼ばれている名前が何だか分かるか?」

 「んー服装が金持ちっぽそうだから、・・・富豪探偵とか?」

 創は見たまんまの想像で答えた。

 「金持ちなのは確かだ。だが違う。あいつが呼ばれている名前は、探偵喰いだ。」

 いかにも関わってはいけなさそうな名前だった。 

 「えっ?ノーマルですか?それともゲイかバイか・・・。」

 「バーカ。下の方の喰うって意味じゃねーよ。でもボケとしては面白かった。」

 監獄さんの空気が少し重かったので、恐る恐るボケてみたが以外に高評価だった。そのおかげで監獄さんも、少し笑みを戻していた。

 「あいつはな、人の手柄を横取りするんだよ。」

 「そんな事ができるのか?そんな事するなら、早く罪を解消してここから出て行った方がいいじゃねーか。」

 「それがあいつには関係ないんだ。」

 「関係ない?・・・あっ。」

 「そうあいつはこちら側の人間なんだ。だからここに送られてくる奴らが担当している事件を奪い、解決し、自らの手柄にする。そのおかげで奪われた奴らはここから出られるのが長引いてしまう。」

 「そんなのってありなのかよ。だったら人がやってる事件に、他の奴らが手出しできないようにすればいいじゃねえか。」

 自分もいつかそうなるんじゃないかと言う事ではなく、人間の道理として間違っている事に腹を立てた創は声を上げた。しかし周りの歓声がうるさく、その声はこの場だけで収まった。 

 「それは無理なんだよ。」

 「何でだよ。」

 「そうなると二人でやらなきゃいけない捜査が出来なくなる。例えば、トリックの実験とか複数人でやった犯罪の捜査とか。」

 「・・・理由がまとも過ぎて返す言葉が無い。」

 「そう凹むなって。あいつより先に解決しちゃえばいいだけなんだから。」

 事件捜査なんて一度もした事ないのに、いきなりポジティブな事を言われてもと少し困ったが、いきなりネガティブな事を言われるよりましかと思い、その言葉を受け取った。

 「とりあえずここはもういいだろう。お前の部屋に案内するよ。」

 「部屋何てあんのかよ。すげー待遇いいんだな。」

 創は家の有無の心配さへここに来て忘れていた。

 「立派では無いけど有るだけましだろう。」

 「そうだな。」

 家まで案内してもらうため後ろを振り返った時だった。

 「あれ?監獄じゃねーか。」

 聞き覚えのない声が後ろから聞こえてきた。

 「ちっ。」

 監獄さんが嫌そうな顔をして舌打ちをした。

 「監獄なにしてんだよ。っん?隣に居るのはもしかしてお前の担当の・・・」

 続きを喋ろうとした時だった。

 「それ以上喋んじゃねー。」

 監獄さんは突然喧嘩口調で喋った。

 「あれあれあれ。どうしちゃったのそんな怖い顔して。」

 「てめーの顔が気に入られんだよ、スネかじり糞坊主。」

 その言葉に創は笑い出してしまった。

 「てめー何笑ってんだ?あんま調子こいてっと喰っちまうぞ?」

 「いやいや、俺そっちの趣味無いんで。もし来たとしたら逆に潰してやるんで覚悟して来てください。

 創は瞬きを一切せず、敵意むき出しの目つきでタンカをきった。

 隣に居た監獄さんは大声を張り上げて笑ていた。少なからずだが、周りに居てこの話を聞いていた人たちも笑っていた。

 それにきずいた鏡魔は、恥ずかしさと、怒りで顔を赤くしていた。

 「ず、、ずずいぶんと威勢のいいガキだなコノヤロー。覚悟して待ってやがれ。」

 「お互いにな。」

 すると鏡魔は、後ろを振り返り去っていった。監獄さんは笑いながら口を動かした。

 「お前やっぱギャグ線高いな。」

 「いや監獄さんのスネかじり糞坊主も中々だったよ。」

 二人は笑いあいながら創の部屋がある場所へと歩き出した。

 

 「ここがお前の家になる地獄荘だ。」

 いかにも出そうな名前だった。

 「名前からして今日中に引っ越したいんですけど。」

 「何言ってんだよ。ここはあちら側から来た冥界探偵専用の寮だ。仲間もいっぱいいるから仲良くやれよ。」

 「えっ。一緒に住んだら手柄横取りされるんじゃないですか?」

 「安心しろ。あちら側の奴らにはその権利は与えられない。それに掛け持ちの事件担当は非常に難しい。こちら側の奴でもそうそう出来ない。」

 「それならいいけど。」

 監獄さんの言っている事が正しいのか嘘なのか、かなり不安になったがそうなると寝る場所が無くなるので飲み込んだ。

 「それと俺はちょっと用事があるからここで解散だ。中に入ったらフロントには今誰もいないから、そのまま部屋に行け。部屋番は5階の5号室だ。」

 「わかった。今日はありがとな。」

 「おう。それじゃまた明日な。」 

 また明日もくんのかよと思いながら創は中に入った。

 入るとフロントには誰もいなく、内装は魔女の館みたいで気味が悪かった。エレベーターが無く、階段で5階の自分の部屋までたどり着いた。部屋を開けると1Kだった。だが部屋は20畳あるくらいの大きさだった。それに家具も全て揃っていて、尚且つおしゃれだった。テーブルの方を見ると何やら白い封筒が置かれていて、言葉が書いてあった。

 「任務条令?」

 そしてこれが創の初めての冥界探偵として働く最初の事件だった

 

 

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