溺愛
それからは、結構頻繁にシロのところで颯太君に会うようになった。
颯太君は本当に犬好きなのか、溺愛と表現しても良いくらいシロの事を可愛がってた。
たまに、見てるこっちが恥ずかしくなった。
「シロ!」
颯太君のシロを呼ぶ声は激甘で、シロも自分がどれだけ愛されてるのか分かるんだろう、すぐに颯太君に懐いて颯太君に着いて帰ろうとするようにまでなった。
だから、颯太君はいつも餌をあげて気を散らさせておいて、こっそり帰るようになってた。
教室内での彼も、シロと一緒にいる時と同じ感じで、とても明るくて友好的でみんなから好かれてた。
綺麗な顔立ちとスタイルの良さも手伝って、女の子の間ではとても人気が高くて、たまに校舎裏とかに呼ばれてるのを目にした。
でも、今は友達との学校生活を楽しみたいから、特定の恋人を作る気はないって言って、いつも断ってるみたいだった。
そんな、女に媚びないしっかりしているところが、より人気に火をつけてるって彼、気付いてるのかな。
次第に、あたしの目も気付いたら颯太君を追うようになった。
シロと一緒にいる颯太君はあたししか知らなくて、それがあたしに大きな優越感を与えた。
「朱里!」
颯太君は、あたしの事も名前で呼ぶようになった。何でって聞いたら、たちばなより一文字少ないから呼びやすいだろって、何だそんな理由かよ。
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今日も、シロのところに行くと颯太君がいた。
今日の颯太君は、いつものほどよく着崩した制服姿じゃなく、何故か体操服姿だ。
「颯太君、どうしたの。何で今日は体操服なの?」
あたしは、怪訝な気持ちを隠せない。
「や、俺たちいつもこの狭い空間でしかシロと遊んでやってないだろ?だから、今日は思いっきり走らせてやろうと思って」
颯太君は、そう言いながらシロを抱き上げた。シロは嬉しそうにしっぽを振る。
「シロ、今日は俺といっぱい走ろうな」
綺麗な顔をくしゃくしゃに崩して、颯太君はシロに笑いかける。ああ、本当に可愛いんだな、シロが。その全身全霊から溢れる愛情に、見てるこっちも癒される。
パッと、思いがけなく颯太君がこっちを向いた。
「な、何」
「朱里、お前も来るだろ」
「どこに」
「うーん、すぐそこの川原」
「何で」
「だからシロと遊ぶんだって」
あたしは、シロと颯太君の嬉しそうな笑顔につられて、つい無意識のうちに頷いてしまった。
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「シロ!シロ!」
颯太君は、本当に言葉通り容赦なくシロと遊んでる。うん、本当に容赦ない。
何て体力のある男の子なんだ。
もうかれこれ、一時間くらいぶっ通しで走ってる。
爽やかな顔に汗ダラダラ。髪もボッサボサになってる。
普通はね、気にして少しは汗ふいたり髪整えたりすると思うんだ、年頃の男の子だし。
でも、颯太君は遊ぶのに夢中なのか、シロが可愛くて仕方ないのか、自分の事は何も構わずシロ!シロ!って。
その少年っぽい且つ愛情あふれる姿に、あたしの方が胸の鼓動を速められる。
あたしは全く走ってないのに、何故か身体が熱くなって、特に顔は赤くなってるんだろうなって自分でも分かるくらい火照ってる。
あたしは、この日はシロじゃなくて主に颯太君をずっと見てた。




