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第壱話 ー 其の弐

前置き長くてすみません。

もう少し続きます。

「あ、刻城くん」

「……雪野先輩」


前から走ってくる生徒会長こと、雪野 薫(ゆきの かおる)。手を振りながら駆けてくる様に、悠太は苦笑いを浮かべる。


「何してるの?」

「迷子の迷子の子犬を探して」

「…?」

「……ちょっと喧嘩してしまったので、謝りに行こうかと」


最初の比喩に溢れた発言に薫が首を傾げるのも無理はない。選択を誤ったと、若干後悔しつつ訂正する悠太。

事実を言うと、自分の問題点が分からない悠太は、謝ろうにも謝れない。ので、まずはその理由を聞こうとしているのだが。


「へぇ〜あなたも喧嘩するのね」

「その発言には、些か疑問に思うところがあるのですが…」


(そこまで感情が無いように思われているのだろうか?)


などと考えてみるが、良くも悪くも素直なのだろう。そこに悪意は感じられなかった。


「それで?なんで喧嘩したの?」

「……言ってしまえば、先輩にも多少原因があるのですが」

「わたし?わたしの知り合いか誰かかしら?」

「いえ、おそらく向こうが一方的に知ってるだけかと。…いや、名前なら知ってるかもしれません。天河 遙音って奴なんですけど」

「天河さん?確かに名前だけは知ってるわね。彼女、学校の有名人だし」


改めて、天河 遙音の知名度を実感するのであった。


「なら、よりどうして?わたし、彼女に何かしてしまったかしら?」

「いえ、先輩が直接どうこうしたってわけじゃないです。ただ……」


悠太と薫が一緒にいるとこを盗撮したと思われる写真を、遙音が見て勘違いした。それを簡単に説明した。


「あら、それってわたしと刻城くんがそういう関係に見えたってこと?いやぁね〜」

「なんで若干嬉しそうなんですか?今拗れてると分かって、なんでそんな反応するんですか?」

「だって、学校の女子の憧れ、刻城 悠太くんの彼女だなんて、この上なく誇り高いことじゃない?」

「本人に同意を求めないでください」

「けど、女の子たちからのやっかみとか嫉妬とか凄そうね」

「安心してください。俺と先輩がそういう関係になることはまずないですから」

「……分かっているけど、そこまではっきり言われると複雑ね」


知り合って間もない、そういう関係の男女がする交際は、あまり良くないものだと悠太は思っていた。


「話を戻します。遙音をどこかで見ませんでしたか?」

「そうねぇ〜〜……覚えは、ないわね」

「そうですか。時間を取らせてすみませんでした」


本当はこっちが浪費したと思ったが、そこまで礼儀知らずのつもりはない。


「いえいえ、邪魔したのはわたしだし」

「……俺の心の中の上部だけの敬意を僅か数秒で無駄にしないでください」

「その発言で全部台無しよ」














少し、言い過ぎた。


「……いきなり怒られちゃ、悠太も困るよね」


ただこっちが、勝手に抑えきれなくなっただけ。彼になにも落ち度などない。

彼が言っていることも、本当だろう。それは彼と長い時間共にしている、自分だからこそよく分かる。生徒会長と一緒にいたところなど、記憶の中で一つも思い浮かばない。


「人気者だもんね……」


学校の多くの女子が気になっている悠太。生徒会長だって女子。それは同じだろう。


「……謝らないと、ね」


ただ悔しかった。


「お前は関係ないだろ」


その一言が辛かった。

ずっと一緒にいた。いろんなことを知ってる。何が好きで何が嫌いか。自分以外にはまるで興味がないことも。というか自分にだって興味がないことも。他者との関わりを持ちたがらないことも。いつも無愛想で表情を崩さないことも。そのくせちゃんとツッコむところも。なんだかんだ言って優しいところも。

誰より知ってる。その自信がある。


「……今さら、だよね」


幼い頃からの想いが報われないことも。

彼は言っていた。


「人を好きになるってどういうことなんだろうな?」


分からないと言っていた。人への好意というのが。


「確かに、お前とか玲が死んでしまったりしたら、悲しいと思う。けど、その光景が浮かばない。自信がないんだよ、悲しいって思える自信が」


自分は本当に誰かに好意を持っているのか?偽りじゃないのか?自分で信じられない、と。


「分からない。でも、一つだけ分かることがある」

「…なに?」

遙音(お前)や玲は、失っちゃいけないって。たとえ他の誰を殺そうと、お前二人だけは失いたくないって」


お父さんは?お母さんは?学校の友達は?

そんな浮かんだ疑問を気にしたくなかった。だから出てきた言葉は……、


「ありがと、悠太」


素直な感謝の言葉だった。

急展開な気もしますが、見守ってください。

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