第壱話 ー 其の拾壱
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厨二溢れるバトルと言ったら、やっぱり詠唱かなって。
彼女に使わせるなんてそんな予定はなかったのですけど。
奴の記憶を起こさせろ。
エミシュに与えられた指令の一つにそのようなものがあった。
呪鬼に仲間意識はないと、先程彼女自身が言ったばかりだが、それとは別に主従関係というものはある。
呪鬼のなかにも階級は存在し、当然の如く上の階級の者には、下の階級の者が付き従う。
全員がそういう関係を持ってるというわけではない。だが、上の者との関係に少なからず差があることは皆が理解している。
エミシュが今回、呪鬼たちが住まう異界からこの世界にやってくるにあたり、目標である刻城 悠太の話は聞いていた。
罪を背負いし者ながら、その罪を忘れている者がいると。
要は罪人だと忘れてる奴に接触して、記憶を呼び戻せということなのだと、いちいち回りくどい言い回しをする主に、心の中で悪態をつきながらもすぐさま理解する。
そのための方法も丁寧に教えてもらった。ただ、なぜ人質なんて真似をするのに自分を送り出したのか。それについては未だに解せなかった。
だがエミシュは従順に、命令に従って動いた。
「くぅっ…!!」
その結果がこれだ。
思い出せば、それは必然としてまともに戦える器になるとは、予想出来ていた。ただ、それが予想以上であったということ。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
「っく……はっ!」
今まで自分が戦う者であったことを忘れていたというのに、刻城 悠太はエミシュを上回っていた。
実際の実力で言えば、エミシュの方が上だろう。いくら悠太に才があろうと、経験値の差が明らかに物を言っている。
これは不意をつけたから。途端に開始された攻防に、気持ちのスイッチを入れ替えることができないまま受け手に回っているから。
「急に…意気がるんじゃないわよっ!!」
ここでこのまま押されてばかりなら、それこそ戦士として三流。握りなおした剣を縦横無尽に振るう。
「こん…っのぉぉぉっ!!」
その差は拮抗。だが一つと二つ。手数にはどうしても違いが生まれる。
強いて言えば、勢いの差だろうか。明らかに攻めと守り、その役は変わらずに戦闘が続く。
「くっ……!お前はぁっ……!」
エミシュは、呪鬼の階級を三つに分けるとすれば、中位階級に属する。その中位階級の中でも、十分手練れと呼べる位置にいる。
呪鬼の実力を見た目で判断するのはあまりに愚かだ。鬼の寿命はそれこそ人の数十倍になる。見た目は同じく十代の容姿だとしても、その生が積み重ねてきた時は、一回りも二回りも上である。
「ここでぇ……!」
それに近いことを悠太は感じ取っていた。文字通り経験値の差を感じ、それによって生じる戦闘力の差。
やがて拮抗は崩れるだろう。このままでは、まず間違いなくこちらが倒れる。それを分かっているからこそ、引くことをしない。
「すぐにぶっ殺す!!」
「くっ!!」
死ねるわけがない。こいつを殺す前に死ねるわけがない。
なんのための力だと言う?なにを思ってこの力を得たのか、そんな理由など記憶の欠片と成り果て既に捨ててきた。
だがどうでもいい。少なくとも、こいつら鬼を斬るために求めたのには変わりないのだから。
だったら、ここで全力を振り絞ることになにを躊躇う?なんの間違いがあると言う?いや、そんなくだらないことたちがあるわけがない。
「こっのぉぉぉぉぉぉ!!」
先のことなど知ったことではない。何よりも、この命の未来の軌跡を投げ打ってでも、こいつを斬らなければならないのだ。
「なっ!?くっ……はぁぁ!」
悠太の剣は速度を増し、月の光に反射し銀の閃と化し暗闇に踊る。
短長異なる双剣は、片や敵に斬りかかり、片や敵の斬撃を払う。攻防一体のその独特な戦闘の様式はクセこそあるものの、逆にそれは相手にも厄介であるということ。
「……いい加減にしなさい」
だが、厄介であるだけとも言える。
「ぐっ!?」
手を抜いていなかったにしろ、本気ではなかったのだろう。たった一振りで身体は仰け反り、先ほどより速く洋剣がこちらへ駆ける。
「っ……はぁぁっ!!」
強引に身体を捻り直撃を免れる。いくつか骨が折れたような音が聞こえたが、今はかすり傷で済んだだけ良しと考える。
「……残念、ね」
「なに……?」
左腕の出血に目をやり、その呟きに鬼に目をやる。
「血を喰らえ 我が剣」
そしてまた呟きが紡がれる。
「その身に流れ滴るは」
その刀身には紅。悠太の血。
「汝が欲す 聖なる美味な酒なり」
その朱は刀身に溶け吸い込まれる。そして血の如く朱く染まる剣。
「ーーー血塗られし夜に踊れ」
瞬間理解する。
「さぁ……」
本気になったのだと。
「もう、直ぐに死なせたりなんかしないから」
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