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無音の魔術師  作者: 芹沢桐花
第一章 白き森
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断章.ソフィア・アサラベル



 近頃、アリスちゃんが男の子にべったりで、少し妬いています。

 冗談です。

 人見知りなアリスちゃんなので、嬉しくもありますが、親として複雑なのです。

 男の子の名前はゼシカ。メフィルス伯爵家の長男ですね。

「ゼシカ……ジェシカ…ジェシー……」

 ハーフエルフでつまり母親が人間なのですが、私は彼女を知っているのです。

 とても綺麗な黒髪と黒い瞳の、活発なお姫様でした。

 私が彼女にあったのは、二度だけ。

 一度は彼女が嫁いできた時、もう一度は、アリスちゃんの出産祝いで。

 その時連れていた男の子がジェシーくんでした。

「ソフィア様、ご機嫌ですね」

「ジェシーくんって、どんな子?」

 私は、部屋の掃除をしてくれているメリちゃんに聞いてみる。ジェシーくんとは確か幼なじみのはず。

「……あ、ゼシカちゃんですか」

「……?」

「良い人ですよ。はっきりしていますけど。少し冷めているように見えて近寄りがたい空気はありますが、向き合えば無視はしませんよ」

 ジェシーくんを冷たいと言うメリちゃんの笑った顔を、私は未だに見たことがありません。

 昔はアリスちゃんと仲良くしてくれたけど、今は顔を合わせているのも見たことが無かったりします。

「母さん」

「セイくん。どうしたのですか?」

 私のことをそう呼ぶのは、兄弟の中で唯一、銀髪なアレクセイだけです。もしかしたら、エルフの中でも銀髪は珍しいかもしれませんけど。

 ともかくリクくんもアリスちゃんもエミちゃんも、母様と呼びます。

 少し寂しいです。

「どうかしましたか?」

「本を返しに来ただけだよ。メリアちゃんがいると知ってたら邪魔はしなかったけどね?」

「ちゃん付けは止めて下さい」

「ゼシカちゃんは良いんだ?」

「…………」

 私にも、この二人はあまり仲が良くないのは分かります。この間はアリスちゃんの話をした時、火花が飛び散りました。

「また、黙り? たまにはあのハーフエルフみたいに愛想を使えばいいのに」

「嫌です。構わないで下さい」

 大変です。かなりバチバチきてますね。しかし、口を挟む前に話し出してしまいました。

 タイミング読めません。

「まぁ、君は賢明な方か。無駄な足掻きはせず、危険は避けて通るってね」

「……」

 セイくんは、口が達者です。

 元々は良い子なのに、どうしてしまったのでしょう。

「セイくん。メリちゃんをいじめてはいけませんよ」

「……母さんに免じて、勘弁して上げる。くくくっ……そんなに眉間にしわ寄せてると、可愛い顔が台無しだよ?」

「思ってもないくせに、ふざけないで下さい」

「確かに、アリスティの方が何十倍も可愛いよ」

 二人の気が合わないのは今更だけれど、私の部屋でぶつかり合うのが大半な気がして仕方がありません。

 私はため息を吐き、結局まだ言い合っていたセイくんを、もう一度止めてみることにしたのでした。


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