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恋空桜模様  作者: 乾 碧
8/10

ツキ×ト×サクラ

 

「どこいったのよ…………。菊夕(きくた)のやつ……」


 葉月(はづき)は、男女共用スペースのソファに身体を預ける。


 牡丹(ぼたん)に案内してもらって菊夕の部屋、女子寮長の部屋まで来たが、その部屋に菊夕はいなかった。


 だから、葉月は菊夕を探し回っていた。一人で。そこまで牡丹を付き合わせるのは悪いから。

 この共用スペースから女子寮全部、ちゃんと探した。寮の入り口にある靴箱には菊夕の下靴が仕舞われていたから、この寮にいるのは間違いない。でも、見つからない。


「はぁ……………………」


 葉月は、盛大にため息をつく。

 用があった。だけど、急がなくてもいい。別に、見つからなかったとしても、後で言えばいいだけ。


「帰ろ……………………」


 気が付けば、時間はとっくに6時を過ぎていた。6時半になっている。夜ご飯の時間。葉月は寮に住んでるわけではないから、自分の家に帰らないといけない。


「はぁ…………」


 またため息をついて、葉月は身体を起こす。


「あ………………………………」


 その時、葉月は見つけた。目当ての人物と、その人と楽しそうに話している男の子を。



● ● ● ● ● ●



「あ…………………………」

「あ………………………………」

「葉月か。こんなところで何してるんや? 」


 えっと、佐々木(ささき)先輩だっけ。その佐々木先輩が、僕と菊夕先輩を見て、口をパクパクとさせている。何をそんなに驚いているのか。


「菊夕……っ! アンタ、何してたのよ…………っ!! 」

「何って、(れん)の部屋に行ってただけやで。それがどうかしたんか? 」

「よりによって男子の部屋……っ!? アンタのこと……ずっと探してたのに………………っ!! 」

「そりゃ、ゴメン」


 恐らく、佐々木先輩は、女子寮をくまなく探していたのだろう。でも、残念なことに、菊夕先輩は僕の部屋にいた。

 普通なら男子の部屋にいるなんて思わない。佐々木先輩もそう思っていたんだろう。


「しかも、よりによって、こいつの部屋なの……っ!? 」

「だって、僕も蓮も寮長やし、何もおかしなことはないで」


 こいつ呼ばわりが心にぐさっと刺さる。アンタ、という感じで呼ばれるのもあんまり好きではない。上から目線で呼ばれている気がするから。


「アンタ、寮長だったんだ……」

比良(ひら)蓮です。アンタって呼ぶのやめてもらえませんか? 」

「…………っ。そうね……。悪かったわ」

「で、葉月。僕を探してたってことは、何か用でもあるんか? 」

「まぁ、そうだけど…………。別に後でいいわ……。で…………、葉月と比良はこれからどうするの? 」

「一緒に夜ご飯を食べるつもりです」


 そのために、桜花さくらに伝えにいこうとしているところ。


「蓮の言う通りや。葉月もこうへんか? 」

「あたしはいいわ。それに、あたし。このサクラ寮に住んでるわけじゃないし」

「別にそこは気にせんでもええんやで。この寮に住んでなくても食べに来てる人もいるし」


 へぇ……。そうだったんだ。サクラ寮に住んでる生徒全員を把握してるわけじゃないから、そこまでは知らなかった。逆にそれを知っている菊夕先輩は、把握しているということなのだろう。凄い。


「そうなの? 」

「葉月が食堂に来ても問題はないで。だから、どうや? 」

「うーん……………………」


 やっぱり、佐々木先輩は悩んでいる。寮に住んでないということはちゃんと家に帰れば夜ご飯が用意されているわけで。


「ねぇ、比良…………」

「はい? 」

「別に、比良は菊夕と二人きりで食べるわけじゃないわよね? あの女の子もいるんだよね? 」

「そうですけど……」


 あの女の子ってのは、桜花のことだろう。カレーパンの件があるから、渋ってるのかな。そこまで気にしなくてもいいと思うけど。


「葉月は桜花ちゃんのこと知ってるんか? 」

「桜花って言うんだ……、あの子。知ってるというかちょっとね……。カレーパンのことで」

「カレーパン…………? よく分からんけど……、結局どうするんや? 」

「あたしがいてもいいなら行くわ。今日は自分で夜ご飯作る予定の日だったし」


 料理出来るんだ。


「ん。じゃ、一緒に頼みに行くで。桜花ちゃんのとこに」

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