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恋空桜模様  作者: 乾 碧
7/10

コイ×ノ×ウワサ

 

 時間は6時半。寮長室に飾られてる時計は、そんな時刻を教えてくれる。


「ありがとうございました。菊夕(きくた)先輩」


 どうやら年代別になっていなかったらしく、それを直したり色々、全部、先輩に手伝ってもらった。手伝ってもらってなかったらもっと時間かかっていただろうし、感謝したい。


「いいよ、いいよ。気にせんで」


  桜花(さくら)と約束した時間は7時。時間的にはちょうどいい感じ。


「そろそろ、桜花のところ行きましょうか」

「そやな。あ、蓮」

「何ですか? 」


 そのまま扉に向かおうとした僕の制服の裾をつかんで、止めようとする。あ、着替えないと。まぁ、食べ終わってからでもいいかな。


「許可書、書かないと駄目やで。一応、形だけになるけどな」

「あ、そうですね」


 そういえば、菊夕先輩も、許可書を持っていた。


 その許可書に必要事項を書き、寮長のハンコを押す。何という自演……。気にしちゃいけない。


「じゃ、行くで。桜花んとこに」



● ● ● ● ● ●



「そうだ。菊夕先輩」


 桜花の部屋に向かう途中、僕は先輩に質問をすることにする。出会った時からきになっていたことだけど、わざわざ聞くまでもないかな、と思って聞かなかったこと。


 今この場が無言の状態になるのが嫌だったから。


「なんや? 聞きたいことでもあるんか? 」

「はい。先輩って、京都からこの桜島(さくらじま)に来たじゃないですか? 」

「せやな」

「やっぱりそれって、この島の桜を見たいって思ったから何ですか? 」

「大体はそんな感じであっとるで。まぁ、もう一つ理由はあるんやけどな」

「そうなんですか? 」


 菊夕先輩だけではない。他の人だってそうだ。皆が皆、興味本位でこの島に来る。そして、この島に惹かれていく。だから、昔に比べたら、この島に住んでる人の数も増えたそうだ。


「一人暮らし、してみたいとか……、思ったことないか? あるやろ? 蓮だって、この寮に住んでるわけやし」

「そうですね。分かります」


 まぁ、僕の場合は、別の理由もあったりするんだけど。いくら菊夕先輩だとしても、小松(こまつ)のことは言えない。小松も普通にしてたら普通の女の子なんだけど。


「せやろ? だから、ちょっと無理言って、ここに通わせてもらったんや」

「そうだったんですか」

「あん時の選択は間違ってなかったと思ってるで。この島、この学園での生活はおもろいし、なんたって、蓮に会えたからな」

「へ…………? 僕ですか……? 」


 唐突だったもんで、声が裏返ってしまう。


「なんでか知らんけど、蓮の近くにいたら落ち着くんや。そんな理由じゃあかんか…………? 」

「い、いえ……。そんなことはないですよ。ありがとうございます」


 桜花にも、そんなこと言われた記憶はない。素直に嬉しい。


「ほんとやったらもっと蓮の近くにいたいんやで、でも、寮じゃ無理な時もあるし、学園内でも、桜花ちゃんがいるやろ? 」

「桜花は別に友達です。お昼一緒に食べたりしてるのも、ただ仲が良いだけですし」


 まぁ、周りから見たら、仲が良すぎってことになるんだろうけど。


「そうなんか? 二人は付き合ってるんちゃうんか? 」

「……………………それは噂ですよ…………」


 その噂。まだ出回ってるのかな。勝手になくなってくれるのを待つしかないのかな。


「噂…………? そうなん? 」

「えぇ。まぁ、そういった噂が広まってしまったのも仕方なかったとは思ってますけど」

 他の学年にも広まってたんだ。今知った。

「なんや、そうやったんか……」


 どこか嬉しそうな菊夕先輩。理由は分からないし、聞いても教えてはくれないだろう。

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