センパイ×ノ×ホウモン
「むむむむ……………………」
葉月は一人の男の子の後ろ姿を見ていた。それも、窓の外から。
女の子が男の子の部屋を覗いている。こんな光景を誰かに見られたらそれは問題になりかねないが、幸い(?)葉月の周りには誰もいない。だから、葉月は覗いている。
昼休み、カレーパンを間違えて持っていた子の隣にいた男の子。葉月が副会長であるということを知らなかった男の子の後ろ姿を、葉月見ている。
ちょっとした出来心。気になったから、こういう行動をとっている。断じて、変な意味はない。断じて。
……寮長だったんだ……アイツ……。
たまたまふっと覗いた部屋が、丁度アイツの部屋だっただけ。
「佐々木…………先輩……………………? 」
「ひゃぁ………っ、わっ………………っ!! 」
突然後ろからかけられた声に、葉月はびっくりしてしまう。身長が足りなく、普通にしては覗けなかった葉月は、近くにあった放ったらかしにされていたバケツを台にしていたため、少しグラついてしまう。
「牡丹…………? アンタ、こんなところで何してるの? 」
誰かに見られたが、牡丹なら大丈夫。知り合いだから、後輩だから、友達だから。
「それはこっちのセリフです………………。副会長が……なにしてるんですか……」
オドオドとしながら、葉月がしていることに注意してくる。
……もっとハキハキしゃべりなさいよ……。
鳳仙牡丹。生徒会の一員であり、担当は書記。
牡丹は一年生ながら、入学一週間しか経っていないのに、書記になつている。それは、桜島中学校に通っていたから。
……本当に一年かしら……。
葉月は牡丹の胸を凝視する。自分よりはるかに大きい。三年の自分より大きい胸を。羨ましい。
「な…………なんですか…………? 」
「いや、何もないわ…………。そういや、牡丹は寮に住んでるんだっけ? 」
自分のことを棚にあげ、葉月は話題を転換させる。あ、きちんと、バケツからは降りておく。
「そうですけど………………、何か……用があるんですか…………? 」
「まぁね。菊夕に用が、ね」
「寮長にですか。案内………………しましょうか? 」
「そうね。頼める? 」
「は、はい……。分かりました」
● ● ● ● ● ●
小松を部屋から追い出せたので、早速仕事にとりかかる。
まぁ、仕事といっても、日誌みたいなものをまとめたりするくらい。暇にまかせて、昔の寮長のデータを見たりもしている。
データはこのパソコンに入ってるものもあるし、元から置かれていた本棚の中にあったりする。
僕としては全部まとめてほしかったが、この桜島学園はかなり前からあるらしく、パソコンが普及する前からあるらしく、今からデータを移し替えるのは、やっぱり、大変なのだろう。
僕だって、そんな仕事を頼まれたりしたら嫌だ。パソコンとか、こういったものに対して、得意というわけでもないし。
パソコンの電源を入れ、起動するのを待つ。
コンコン。
扉がノックされる。誰かな? 小松ではないだろうし、他の男子生徒かな。女子寮に行っても良いか? とか、そんな頼みだったらどうしよう。
「あ、寮長…………」
扉を引くと、そこに見えたのは、女子寮長の島原菊夕先輩。用事かな。寮長は僕のその声を聞くと、すぐに部屋の中に入ってくる。その手には、男子寮入室許可書が握られている。
「寮長言うなゆうたで? 去年は菊夕って呼んでくれてたやろ? 」
「まぁ、そうですけど…………」
扉を閉めて、一応、パソコンの元に戻る。起動したままだった。あ、カーテンも閉めておこう。
「で、どうかしたんですか? 菊夕先輩」
寮長から菊夕先輩に呼び方を戻すと、菊夕先輩はニッコリと微笑む。やっぱり、こう呼んだほうがいいみたいだ。
「そんな大した用ではないんやけどな、ちょっと手伝ってあげよっかなって。その方が、蓮も助かるやろ? 」
「ありがとうございます」
椅子に座って、パソコンに目を向ける。あ、パスワード請求されてる。何だっけか、パスワード……。教えてもらったのに。
「菊夕先輩」
「何や? 」
「パスワード…………。何でしたっけ? 」
「もう忘れたんか? しゃぁないなぁ……」
このパソコンは寮長しか使わないわけだが、なんでか知らないが、パスワードがかけられている。防犯のためだとか。
「座るで。蓮の膝に」
「え……? あ………………、え……? 」
とまどってるうちに、菊夕先輩はきにしないように座ってくる。膝というか、身体全部を僕に預けてくる感じ。なんというか…………。
「どうかしたんか? 」
顔だけをこっちに向ける菊夕先輩。菊夕先輩と僕の身長差はそんなにないわけで、至近距離で顔と顔が近づく。いろいろと大変…………。