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恋空桜模様  作者: 乾 碧
3/10

サクラ×ノ×デアイ

 

「ん………………? 」


 誰かに見られている。そんな気がする。


「うーん……………………」


 気のせいなのかな。僕と桜花(さくら)を見ていたであろう視線が消えている。まぁ、テラスにいて、男と女が2人きりで食事をしてるんだから、気にして誰かが見ていても仕方がない。

 でも、今感じた視線は、そういうのではない気がした。よく分かんないけど。


「どうかした? (れん)? 」


 最後の1個のコロネをもぐもぐとしている桜花が、聞いてくる。きょろきょろしていたからかな。


「どうもしてないよ」

「そう? 」


 そう言うと桜花は僕から視線を外し、カレーパンに目を向けた。


 実はこのカレーパン。桜花専用のカレーパンである。

 辛いものが苦手な桜花。それでも何故かカレーそのものは好きなようで、そんな桜花でも食べれるように、購買部のおばちゃん達が、甘く甘く作ってくれたとか。


 まぁ、もちろん見た目だけでは判断出来ないため、大きめに作ってある。だから、それで、そのカレーパンが桜花専用のカレーパンだと分かる。

 僕も少しだけ食べさせてもらったがあるんだけど、甘すぎて、これはカレーなのかと問いたくなるほどだった。だって、僕は辛いほうが好きだ。カレーってその辛さがいいものだしね。

 てことを桜花にも言ったことがあるんだけど、やっぱり無理だった。


「んんんんっ……!! 」


 カレーパンを口にした桜花が、何故かいきなり涙目になった。顔を真っ赤になっている。


 え? 何で? 甘いんじゃないの? それとも、購買部のおばちゃんのお茶目な仕業かな?


「蓮っ……! お茶。お茶…………っ! ちょうだい」


 涙を目元に浮かべている桜花をずっと見ていたい気持ちに駆られるが、本当に辛そうなので、水筒についているコップにお茶を注いで手渡す。水筒持ってきてて良かった。


「ほら」

「ぷはーっ! ありがと……。はぁはぁ……」

「どういたしまして」


 少しは落ち着いたようだ。頬はまだほんのり赤くなったままだけど。


「ちょっと、そこのアンタっ! 」


 後ろから、物凄い剣幕で声が聞こえてくる。思わず耳を塞ぎたくなるその声だったが、呼ばれた以上、振り返らないといけない。


「な、何かな…………? 」


 見た感じ、ちっちゃい。1年生かな?


「アンタじゃないわよっ! そこのカレーパン持ってる子っ!! 」

「え? あたし……? 」


 よく見ると、その子の手にもカレーパンが握られている。それも、齧りかけの。


「そう。アンタ。そのカレーパンとあたしが持ってるカレーパンを交換するのっ! 」


 見た感じ、桜花の持ってるやつと同じような大きさのカレーパンを持っている。なるほど、間違えて渡されちゃったのか。


 その子は、ずかずかと桜花の元に近寄ると、「んっ! 」とカレーパンを突き出す。


 その剣幕に押されながらも、桜花はゆっくりと受け取り、自分のものを差し出した。


「次からは間違えないようにしてよねっ! あんな甘ったるいカレーパン。食べられたもんじゃないわ……っ!!!! 」

「なっ……!!? このカレーパンだって、辛すぎて食べれないわよっ!! 」

「カレーは辛いものでしょっ!! 」

「甘いほうが美味しいわよっ! 」


 えっと…………。どうしよう。カレーパン争議勃発。そりゃ、辛いほうが美味しいわけだが、桜花にも桜花なりの言い分があるわけで。


「ちょっと、ほら、言い争いはそのあたりにして…………」


 周りの視線がこっちに向き始めている。どうにかせねば。


「子供に言うような言い方をするのやめて。アンタ、2年でしょ」


 怒りの矛先が何故か桜花から僕にむく。口出しするんじゃなかったかな。


「でも、皆見てるし……」

「そうじゃなくて、アンタ2年だったら、あたしには敬語使うべきでしょ!? 」

「え………………? 」

「もしかして、アンタ。あたしがちっちゃいからって1年と間違えたとか言わないでしょうね!? 」

「う……………………」

「見た目で人を判断するなんて最低ねっ。アンタっ! 」

「う………………………………」


 返す言葉も見つからない。よく考えてみたらそうだ。入学式は、つい先週行われたもの。それなのに、1年生が購買部のおばちゃんと仲良くなって専用なものを作ってもらえるわけがない。


「蓮…………」

「何……? 」

「最低ね」


 加えてダメージがくる。桜花だって敬語使ってなかったくせに。


佐々木(ささき)葉月(はづき)。副会長よ。この人」

「え……? そうなの? 」


 気にしてなかった。だって、誰がどの役職についてるとか、僕にとって知らなくてもいいことだったし。


「まぁ、いいわ。昼休み終わっちゃうし。あたしは帰るから」

「あ、はい…………」


 くるっと、スカートを翻した佐々木先輩は、まだ怒った様子で僕達のもとから離れていった。


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