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恋空桜模様  作者: 乾 碧
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サクライロ×ノ×デアイ

 

  桜。それは春の代名詞。


  桜。桜が咲くと皆、それを愛でる。


  桜。その存在が、心を落ち着かせる。


  僕ーー比良(ひら)(れん)が住む所では、そんな桜が一年中花を咲かせている。

  特段、他の所より気温が高いとか、そんなことはない。ただ、ずっと咲いてるのだ。街に住むおじいちゃん、おばあちゃんでも、その理由は知らないらしい。

  本来の桜が咲くシーズンもそうだが、珍しい桜を見ようと、観光客が多く訪れる。


  僕は、僕が住んでいるこの街ーーというか島が、好きだ。

  この島のことを皆はこう呼ぶ。


  桜島(さくらじま)、と。



● ● ● ● ● ●



  「あ、桜……」


  ふっと、手の甲に桜の花びらが一枚舞い降りてきた。よくある光景。少し風が強い日だったりすると、綺麗な桜吹雪が見れたりする。


  桜島の中心には、とても大きな桜の木がある。本当に、大きな木だ。島の皆は、この桜が咲き続ける現象はこの木から始まったのではないか、と言う人もいる。もちろん、僕だってそう思ってる。


  で、そんなこの島のご神木のような桜の木の近くに、僕が通っている高校、桜島学園がある。


  え? 名前? この島の大体の建物には、桜なになに、とか、桜島なになに、とか、そんな名前が付けられている。この桜島学園だって、その中の一つ。


  桜島学園にも何本もの桜の木が植えられている。もちろん、大きな桜の木も見える。近くにあるのだから。近くといっても、3kmか4kmか、それくらいは離れていると思う。それでも、中心に存在している桜は、とても立派に見える。


  で、今はお昼休み。そして、僕のいる場所は中庭。

  学食とかもあるから食堂もあったりするのだけど、やっぱり外で食べるのも良い。それに桜も見れるし。


  僕みたいな人が多くいるから、こうやってテラスみたいなのが用意されているのだろう。

  僕以外にも沢山の生徒がここに来ていて、楽しそうに、桜を見ながら、昼ご飯を食べている。


  僕はまだ、お弁当に手をつけていない。友達が来るのを待ってる。


  「先に食べ始めててもいいからねっ! 」なんて言われたけど、僕はそれには従わない。


  だって、一年の時に学んだんだ。先に食べていいとか言いながらも、僕が先に食べてるの悲しそうな顔をするから、先には食べられない。どれだけお腹が減っていたとしても、その友達が来るのを待つのだ。


  「れんーっ!! お待たせーっ」


  元気な声が、僕の耳に届く。お友達の到着。


  平野(ひらの)桜花(さくら)。それがお友達の女の子の名前。


  ニコニコとしている桜花。この笑顔を見ると元気になる。これで僕が先に食べてるとちょっと泣きそうになるわけで、そんな顔を見ると、食べれなくなる。言葉と行動が一致しない時がある。それが、桜花。


  鼻歌を歌いながら、桜花は購買で買ってきたのであろうお昼ご飯を、机の上に並べている。

  いつもよりご機嫌。何か良いことでもあったのかな。


  一年の時もクラスが一緒で、二年になった今も一緒。苗字が似てるから席も近いわけで、離れたことがあまりない。

  だから、昼ご飯を二人で食べるほどに仲良くなった。二年になった今でも変わらない。


  「一杯買ってるね。食べ切れる? 」

  「大丈夫っ。あたしが食べれなくなったら、蓮が食べてくれるでしょ? 」

  「まぁ…………。そうだどさ……」


  週に何回か、桜花は購買部でパンを買ってくる。いつも多めに買っていて、そのあまりを僕が食べることになる。お弁当がちゃんとあってその上にパンまで食べるのはちょっと厳しい時があったりするのだけど、桜花に頼まれたら仕方ない。食べなかったら不機嫌になるし、桜花は笑ってるほうが可愛いから、そんな桜花の顔は見たくない。


  チョコがたっぷりついているコロネと、カレーパン。その組み合わせは合うのか? なんて思うけど、そんなことを口に出したりはしない。言ったらどんな反論が待っているか分からない。


  ……僕も食べよ……。


  桜花がコロネを頬張っている可愛らしい姿を見てるのも良いんだけど、時間がなくなってしまう。


  「ねぇ、蓮っ」

  「ん? 何? 」


  お弁当箱を開けて中身を確認しようとした時、不意に桜花が僕の名前を呼ぶ。


  「はい。あーん、して」


  コロネを小さくちぎったのか、一口サイズになった小さいコロネを、桜花は指ではさんでいる。


  「ほーら。はやく」


  何とも可愛らしいお願い。こんな外でやるのにはどうしても恥ずかしさが先行していまうけれど、断るわけにもいかない。


  「あ、あーん…………」

  「はいっ! 」


  ほいっ、と、僕の口の中にコロネが放り込まれる。チョコの甘みが、口の中一杯に広がる。いつも桜花はこのコロネを買っていて、その理由が分かったような気がする。


  「どう? 美味しいでしょ? あたしのお気に入りのパンなんだ」


  にしし、と屈託のない笑顔を、桜花は浮かべている。


  「美味しい。すっごく美味しいよ」

  「でしょ」


  桜花は胸をはっている。


  「どう? もう一個食べる? 」

  「大丈夫。桜花が食べて。自分で買ったものなんだから」

  「そう? じゃぁ、遠慮なく」


  ほぼ、毎日。僕達はこうしてお昼ご飯を食べている。

  仲が良いんだから当然だと思っていたんだけど、周りは僕達を別の見方で見ていた。


  一回、僕と桜花が付き合ってる、というそんな噂が流れたことがあった。


  今思い返せば、お互いのことを名前で呼び合って一緒に二人だけでご飯を食べてたりしたら、そりゃ、噂されても仕方ないのかもしれない。

  あぁ、今では、そんな噂を言う人達はいない。思っていたとしても、口にはださない。

  桜花に気付かれるととんでもないことになるから。その噂はもちろん桜花にも届いていたわけで、その時は、暴れてたりしてたっけ。


  去年の秋くらいだったかな。時間が経つのははやいと、感じさせられる時がある。

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