プロローグ
「えっと・・・それじゃあいってきまぁす」
外はカンカン照り、お家の古い扇風機は常時稼動中にしても一向に涼しくない。
この間お母さんに買ってもらったお気に入りの帽子を被ってお父さんを玄関で待つのが私の日常。
「おはようそうびは今日も可愛いよ」
流石俺の娘と抱きしめてくれるのは私のお父さん。お父さんはぴしっとスーツを着ているととってもカッコイイと思う。思うけど・・・
「お父さん・・・私もう子供じゃないよ」
ちゅーはやだよ、子供みたいと嫌がるとはっはっは、そうびはほんと可愛いんだからと尚も迫ってくる。これって・・・えっと・・・せくはら!
「いーやーっもう・・・っ、いってきます!」
そういって私は急いで走り出した。今日は夏休みの途中だけれど、学校の朝顔にお水をやる当番だから急がないとっ
「気を付けていっていらっしゃい」
そう言ったお母さんの声と、
「じゃあ行ってくるよ」
そういったお父さんの声。
それがこれで最後だったなんて、私は知らなかった。
知っていたら、きっともっと沢山甘えていた。
お父さんのちゅうもハグも沢山してもらえばよかったんだ・・・と、後に私はくーちゃんに泣きながら告白した。