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9話 ~奇跡のスクワット~

 


「フリード様ですね、お待ちしておりました。私、案内役を務めさせていただきますドランミと申します。今後ともよろしくお願いします!」


 施設に入ってすぐにやってきたのは、小柄で丸っこい、人懐っこそうな顔をした前髪パッツンの若い女性だった。


「ここはどんな病でも治してくれると聞いたが、本当か?」

 ぶかぶかのローブを頭からずっぽりと被ったフリードの問いに、ドランミは勢いよく頷いた。


「もちろんです! あの人たちを見てください」


 自信満々に指し示した先には、力強く腕立て伏せを繰り返す老婆、スクワットに汗を流す老爺、そしてランニングウェアに汗を滲ませた若者の姿があった。


「彼らは皆、難病で医師から匙を投げられ、寝たきりだった方々ですよ。当教団の代表、ファルセット・エンヤ様が起こした奇跡によって、これほどの回復を遂げたのです!」


 その誇らしげな説明を、エリトンは冷たい微笑を浮かべながら聞いていた。


「ほう……。では、参考までにその『医師から匙を投げられた難病』の具体的な病名を教えていただけますか? どこの病院の何という医師が診断を下したのかも、併せて伺えるとありがたい」


「あなたは……?」


 ドランミの表情が一気に曇った。


「私は医師のエリトンと申します。今後の研究……いえ、参考のために是非教えていただきたい」


「ええと、そんなことを私に言われても……。私はただの案内役なので、そこまで詳しいことは……」


「知らない? 碌に知りもしないのに、あんなに声高らかに実績を語っていたのですか?」


「な、何ですかこの人! すごく失礼なんですけど!」


「まあまあ、エリトン。とりあえずは代表のファルセット・エンヤに話を聞いてみようよ。本人ならきっとわかるはずだから」


 フリードが宥めるように間に入ると、エリトンは慇懃無礼に口角を上げた。


「確かにその通りですね。失礼いたしました」


 エリトンは謝罪の言葉を口にしたが、頭を下げる代わりに、まるで獲物を値踏みするような薄笑いを向けた。ドランミは顔を赤くし、挑発的な表情で言い返す。


「エリトンさん、あなたはきっと疑っているんでしょうね。ですけど、エンヤ様の奇跡は本物なんですから! 今日であなたの価値観は三百六十度変わってしまうと思いますよ!」


「三百六十度、ですか。一周回って元通り……。ふふ、それは楽しみですね」


 エリトンが皮肉を込めて呟いたが、ドランミは気づかぬふりで背を向けた。


「どうぞ、こちらへ!」


 足音を荒げ、ドランミは一行を施設の奥へと導き始めた。






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