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石壁に囲まれた暗く凍えるところの中、少年と少女は鉄格子越しで向き合っている。
『ナーティ、僕は大丈夫だよ。』
少年はずっとすすり泣いている少女を優しく慰める。
その頬を濡らした涙をいつものように拭ってあげたいが、手首と壁を繋げてる鉄の鎖で、ちゃらん、と虚しく鳴いただけで、何もできないままだ。
『シェン…やだ…やっぱりわたしがっ』
『ダメだよナーティ、これは僕が決めたことなんだ。ナーティのせいじゃないよ』
少女が言いかけた言葉を、少年は口調こそ柔らかいが、すかさず遮った。それだけはさせれない。
それでも少女も譲らなかった。
『わたしがシェンを助けるの!わたしは…』
『ナーティはただの、かわいい女の子だよ。だからそんなことをやらなくてもいいの。』
『シェンだってただの男の子じゃない…っ』
ぴしゃりと言われた少女はまた涙があふれだす。
『それは違うね。僕が「魔女の子」だから、普通の男の子じゃないよ。』
『それはシェンひゃないのに…』
『ふふ。僕は魔女の子だから、きっとまたナーティのとこに帰れる。だから、泣かないで。』
少年は手を伸ばそうとして、もう一度ちゃらんと鎖が鳴き、少女のほうの空気だけをつかんだ。
『ごめんね、ナーティ。僕はナーティの笑顔が大好きだけど、今のナーティの涙を止めないんだ。』
少年の言葉に、少女の涙はとめどなくぽたぽたと石造りの床にシミを作る。
『本当にごめんね。でもね、ナーティの未来はとっても長いから、いつか僕のことで悲しい心を楽しませることに出会えるよ。絶対に。』
『できないよ!わたしなんて、そんなの、できるはずがないもん!シェンがいなかったら、もう…』
少女はふるふると頭を横に振り、肩より少し長い、茶色いぼさぼさの髪も濡れてしまった。
その反応に、少年は苦笑するだけだった。
その数日後、帝国は「魔女の子」を処刑したと発表した。
魔女の子だとわかったきっかけは、町はずれの廃屋に捨てられた子供二人が、大人の助けがないのに5年も生きていて、その廃屋はなぜか修繕されたようにきれいになり、まだ10歳にもなってないのに、たびたび真隣にある森に入ってはケガすることなく食べるものを持って帰るからだそうだ。
それを聞いて見に行った領地のお城の役人は魔女の見えない罠にかけられて、廃屋の前で盛大に転んで、木からリスに木の実を頭に落とされて、それで確信したらしい。
その子供を魔女の子と知らず一緒に生活していた哀れな少女はどこかのお偉いさまに保護され、素敵なお姫様の生活を過ごしていくと言われていた。
だが悲しいことに、その少女を引き取った家は、数年後にひどい疫病にかかり、一人残らず亡くなられてしまった。
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