ドラムポエム
誰もが自分の人生の苦悩を詩っている。
愛の経験も、苦しみの経験も、像にもならない虚像を抱えている。フォグのような。
誰もが己の歌を歌っていて、愛する人の存在は愛を形づけるための虚像。
光り輝いているシンボルだけれど。
人が人に愛を囁いているとき、愛を囁くことに躍起になっているように見える。
彼は悲劇の渦中に自然と迷い込んだのか。それとも悲劇という大舞台で主役を張れることに感涙しているのか。
涙の形は定まらないで、感情のこもりかたは透明の中に映らない。
映るのは光り輝く愛を囁く相手。ベアトリーチェ。
ダンテ・アリギエーリは地獄を晴れ舞台にし、ベアトリーチェを役柄とした。
病に伏して死んでいった彼女の死を乗り越えるための悲劇を用意し、悲劇で自らを鼓舞した。
悲劇は自らが作り出した大いなる霧、森、闇。
主人公が自分が主人公と気づかない限り、絶望が壮大で緻密になり続ける世界で幕引きなく踊り続けることになる。
悲劇ならば嘆かなくてはいけない。
声にだして、或いはモノローグを書いて。
嘆きの力は希望を見出す。
心を落ち着け、強くする。
愛と詩的感性が絶望の中光明として差し込む。
ポエムはドラム。
叩き、震わせ、心に訴えかける。
理屈で全てが絶望的であると堅持されても、愛のポエムが鼓舞し、打開させる。
ベアトリーチェが死んだという事実がすべての理屈で否定できない絶対的なものなら、無数の理屈は一つの希望で打破できるマジックを彼は知らねばならない。
声を上げて、心のうちにまだ震えがあるならば大丈夫。
リバーブする、木霊する、響き渡り、天へと届く。
誰もがあなたを無視しても、あなたが力強く声を上げ続ければいずれ眼にとまる。
理屈じゃないポエムこそ人の心を震わせる。
自分も、他人も、世界も。
ポエムをドラムとして一人でに立ち上がることができる。
世界に両足を踏ん張れる。




