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厨二病しかいない学園で、俺はどうやって正気でいられるか ~可愛いけど残念な美少女たちを普通に戻してみた~  作者: さめお


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秋の訪れ、始まりました。

文化祭の準備は、予想以上に慌ただしかった。

生徒会室は書類と段ボールの山で埋まり、黒いマントを羽織ったリリス会長が円卓の中央で指示を飛ばしている。

「闇の迷宮カフェの装飾資材は、体育館倉庫から運び出せ。封印の劇場の小道具も同時にだ。急げ、諸君。闇の祭典は、もう目前だぞ」

俺とエレナは、倉庫へ物資を取りに行く役目を押し付けられた。

エレナは少し不満げに眉を寄せたが、すぐに俺を見て小さく頷く。

「……みお。一緒に行こう」

「うん」

二人で生徒会室を出て、廊下を歩く。

文化祭準備中の生徒たちがあちこちで叫び声を上げている。

「闇の看板が完成したぞ!」「封印の鍵、紛失したー!」

いつもの学園の喧騒だ。

俺はエレナの横を歩きながら、ポケットに手を突っ込んで、ため息をついた。

「……エレナ。ちょっと、話があるんだけど」

エレナは足を止めて、俺を見上げた。

長い黒髪が肩に落ち、瞳が少し心配そうに揺れる。

「……どうしたの?何か……あった?」

俺は周りに人がいないことを確認して、小声で言った。

「学園長の様子が……おかしいんだ。この前、学園長室に呼ばれて……なぜか、俺にプレッシャーかけてくるし……なんか……隠してる気がする」

エレナの表情が一瞬で硬くなった。

彼女は唇を軽く噛んで、目を細める。

「……学園長が……?確かに……最近、妙に会議が多いわね。私たち生徒会にも、詳しいことは話してくれないし……」

俺は頷いた。

「うん。なんか俺に『生徒会五人を普通に戻せ』って……脅しみたいなこと言われたんだ。できなかったら退学だって」

エレナの目が大きく見開かれた。

彼女は俺の腕をそっと掴む。

指先が、少し震えている。

「……そんな……みお……それは……ひどい……」

俺は苦笑した。

「まあ……俺は、みんなを普通に戻したいと思ってるから……でも、学園長の言い方が……なんか、変なんだよ。まるで……誰かに言われてやってるみたいで」

エレナは深く息を吸って、俺の目を見た。

その瞳は、真剣だった。

「……分かった。私……調べてみる。生徒会として……学園長の動きを、注意深く見るわ。みおは……無理しないで。何かあったら、すぐに私に言って」

俺は胸が熱くなった。

エレナの小さな手が、俺の腕を強く握っている。

「……ありがとう、エレナ」

彼女は頰を少し赤らめて、目を逸らす。

「……当然よ。みおは……私の……大事な人なんだから」

俺は思わず笑ってしまった。

エレナは慌てて手を離し、歩き出す。

「……ほら、早く行きましょう。倉庫の物資、早く運ばないと……」

体育館倉庫は、埃っぽくて薄暗かった。

中に入ると、古いマットや跳び箱、色あせた幕が積み重なっている。

エレナはリストを見ながら、資材を探し始めた。

「迷宮カフェの黒い布……ここにあるわね。みお、こっち持って」

俺は重い布の束を抱えて、エレナの後ろを歩く。

彼女は時々振り返って、俺の顔を確認する。

心配してくれているんだな、と分かって、胸が温かくなった。

作業は意外と早く終わった。

段ボールに資材を詰め、二人で運んで生徒会室に戻る。

エレナは汗を拭きながら、俺に微笑んだ。

「……お疲れ様。みお、ありがとう」

「うん。椎名も」

部屋に戻ると、他のメンバーはまだ戻っていなかった。

エレナは資材を整理し始める。

俺は手伝おうとしたけど、エレナが小さく首を振った。

「……みおは、少し休んでて。私、一人で大丈夫だから」

俺は頷いて、椅子に座った。

すると、ドアが開いて、アリスが入ってきた。

彼女は俺を見ると、一瞬立ち止まり、すぐに視線を逸らした。

でも、すぐに俺の前に来て、小さな声で言った。

「……みお。今……屋上に来て」

俺は驚いた。

アリスはそれだけ言うと、踵を返して出て行った。

エレナが不思議そうに俺を見る。

「……アリス……どうしたの?」

「分からない。ちょっと行ってくる」

俺は生徒会室を出て、屋上へ向かった。

階段を上り、屋上のドアを開ける。

秋の訪れを感じる風が吹き抜ける。

アリスはフェンスに寄りかかって、俺を待っていた。

彼女は俺を見ると、ゆっくり近づいてきた。

そして――

突然、俺に抱きついた。

「……っ!」

小さな体が、俺の胸に飛び込んでくる。

アリスの髪から、かすかなシャンプーの香りがする。

彼女は俺の胸に顔を埋めて、ぎゅっと抱きしめる。

何も言わない。

ただ、強く抱きついてくるだけ。

俺は驚いて、動けなかった。

アリスの肩が、わずかに震えている。

彼女の体温が、制服越しに伝わってくる。

しばらくして、アリスはゆっくり離れた。

顔を上げないまま、俺の胸元に視線を落とす。

「……ありがとう……これで……気が済んだ……」

小さな声。

アリスはそれだけ言うと、俺から離れて、屋上のドアへ向かった。

ドアが閉まる音が響く。

俺は、その場に立ち尽くした。

胸の奥が、熱くて、痛くて、温かかった。

アリスの抱きついた感触が、まだ残っている。

彼女は何を思って、俺を抱きしめたんだろう。

温泉の夜のことを……まだ、気にしているのか。

それとも……別の何か?

俺はフェンスに寄りかかって、空を見上げた。

風が、俺の髪を揺らす。

エレナの笑顔。

アリスの涙。

ルナの弱さ。

セレスティアの仮面。

リリス会長の冷たい視線。

この学園で、俺は少しずつ、みんなの本当を知っていく。

そして……俺自身も、変わっていく。

屋上のドアが開く音がした。

振り返ると、エレナが立っていた。

彼女は俺を見て、少し心配そうに近づいてくる。

「……みお。アリス……どうしたの?」

俺は微笑んで、首を振った。

「……なんでもないよ。ただ……ちょっと、話しただけ」

エレナは俺の隣に並んで、フェンスに寄りかかる。

二人はしばらく、無言で空を見上げた。

エレナが、そっと俺の手を握る。

俺は彼女の手を握り返した。

エレナは小さく微笑んだ。

風が、二人の髪を揺らす。


遅くなってすいません!第二十一話です!ありがとうございました!

少し物語が進みました!どっちの目的が先に終わるか楽しみです!

次は文化祭です!楽しんでください!

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