変わり始めた日常、始まりました。
休日の朝。
学園の寮室は、いつもより静かだった。
俺はベッドに座って、窓から差し込む柔らかい日差しを見ていた。
エレナと付き合い始めてから、二週間が経った。
毎日が、少しずつ変わっている。
朝はエレナと一緒に食堂に行き、授業中は隣でノートを取る。
放課後は屋上で手を繋いで歩くか、図書室で本を読む。
エレナは少しずつ、厨二病の仮面を外し始めている。
昨日は、俺の膝に頭を乗せて、
「……みお。今日も……好きだ」
と小さな声で言ってきた。
俺は胸が熱くなって、彼女の髪を撫でた。
まだ、完全に普通にはなっていない。
でも、彼女の笑顔が増えた。
それだけで、十分だった。
スマホがないこの学園で、連絡手段は直接会うしかない。
だから、朝の食堂で待ち合わせるのが休日でも日課になっていた。
今日も、エレナが先に席を取って待っていた。
彼女はトレイにパンとスクランブルエッグを乗せて、俺を見つけると、小さく手を振った。
「……みお。おはよう」
「おはよう、エレナ」
俺が隣に座ると、エレナは少し照れながら言った。
「……今日は……休日だから。学園内の喫茶店に行かないか?二人で……ゆっくり、話したい」
俺は頷いた。
「いいよ。行こう」
エレナの頰が、ほんのり赤くなった。
彼女は嬉しそうに微笑んだ。
学園内の喫茶店は、図書室の奥にある小さなスペースだった。
木製のテーブルと椅子、壁に飾られた古いランプ。
カウンターには、手作りのケーキと紅茶のポット。
生徒会の誰かが管理しているらしく、今日はエレナが鍵を持っていた。
俺たちは窓際の席に座った。
エレナが紅茶を淹れてくれる。
湯気が立ち上る。
甘い香りが広がる。
「……ミルク、入れる?」
「うん。お願い」
エレナは丁寧にミルクを注ぎ、俺の前に置いた。
彼女は自分のカップを抱えて、俺を見た。
「……みお。最近……普通に話すのが、楽しい」
俺は微笑んだ。
「俺も。エレナと話すの、好きだよ」
エレナはカップで顔を隠すようにして、
「……っ。また……そんなこと言う……」
でも、口元が緩んでいる。
俺たちは他愛もない話をした。
好きな本のこと。
プールの思い出。
エレナが作った紅茶の味。
彼女は少しずつ、言葉を選ばずに話すようになっていた。
「みおの好きなところは……優しいところと、笑顔と……全部」
そんな言葉を、照れながらも素直に言ってくれる。
俺は胸が温かくなった。
エレナの普通は、まだ始まったばかりだ。
でも、俺はそれを、ずっと見ていたいと思った。
喫茶店を出ると、廊下にアリスとルナがいた。
二人は俺たちを見て、目を丸くした。
アリスはモカちゃんをポケットに隠す仕草をし、ルナは興奮気味に手を振る。
「エレナちゃん!みおちゃん!休日なのに一緒にいるの~?もしかして、デート?デート?」
エレナは動揺して、慌てた。
「……ち、違う!これは……監視!みおの光を……浄化するための……!」
ルナは目を輝かせる。
「えー! 絶対デートじゃん!ねえ、アリスちゃんもそう思うよね!」
アリスは頰を赤らめて、俯く。
「……う、うん……二人……仲良さそう……」
エレナはさらに慌てて、
「……そ、そんなわけ……!みおは……ただの監視対象で……!」
俺は苦笑して、代わりに口を開いた。
「いや、別に隠すことじゃないよ。実は俺たち、正式に付き合ってるから」
エレナが「みお!」と小さく叫ぶ。
ルナの目がキラキラ光る。
「えええ! マジで!?びっくりー! エレナちゃん、おめでとう!みおちゃんも!」
アリスは少し寂しそうに、でも微笑んだ。
「……おめでとう……みお……エレナ……」
ルナが手を叩く。
「じゃあ! せっかくだから、四人で遊ぼうよ!体育館空いてるみたいだし、いろいろしよう!」
エレナはまだ赤い顔で、俺を見る。
俺はアリスの目が少し光っているのに気づいて、断れなかった。
「……いいよ。遊ぼう」
体育館に移動した。
広いコートに、バドミントンラケットとシャトル、バスケットボール、卓球台が用意されていた。
ルナが興奮して叫ぶ。
「最初はバドミントン!ダブルスで!みおちゃんとエレナちゃん対、私とアリスちゃん!」
俺とエレナはコートの一方、アリスとルナは反対側。
ラケットを握る。
俺はバドミントンなんて久しぶりで、緊張する。
エレナはラケットを構えて、言う。
「……みお。我々が勝つ。闇の勝利を!」
俺は苦笑した。
「うん。がんばろう」
試合開始。
ルナがサーブを打つ。
シャトルが飛んでくる。
俺は下手くそに打ち返す。
エレナが素早く動いて、スマッシュ。
ルナが「わー!」と叫びながら返す。
アリスは静かに、でも正確に打つ。
俺はミスを連発するけど、エレナがカバーしてくれる。
彼女の動きは速くて、正確だ。
「みお! 右!」
俺は指示に従って動く。
ルナの強烈なスマッシュを、エレナがブロック。
シャトルがルナのコートに落ちる。
エレナがガッツポーズ。
「よし!次!」
スコアは接戦。
ルナの身体能力が高く、アリスの正確なショットが脅威。
でも、エレナのスマッシュが決まり、俺も少しずつコツを掴む。
最後はエレナの強烈なスマッシュで、21-19。
俺とエレナの勝ち。
エレナが俺にハイタッチ。
「……よくやったな、みお」
俺は笑った。
「エレナのおかげだよ」
次はバスケットボール。
今度はペアを変えて、俺とアリス、エレナとルナ。
アリスはシュートが苦手で、パスを俺に出す。
俺は中学でバスケ部だったから、ドリブルとレイアップは得意だ。
エレナとルナは二人とも運動神経がいい。
ルナのドリブルが速く、エレナのジャンプシュートが決まる。
でも、アリスがディフェンスでルナをブロック。
俺がパスを受け、ダンクは無理だけど、レイアップで決める。
最後はアリスのファインプレー。
ルナのシュートをブロックし、俺にパス。
俺がシュートを決めて、僅差で勝利。
アリスが小さくガッツポーズ。
俺は彼女に笑いかけた。
「アリス、ナイスプレー!」
アリスは頰を赤らめて、
「……ありがとう……みお」
最後は卓球。
ペアはルナと俺、エレナとアリス。
ルナは意外と上手い。
俺は下手で、ラリーが続かない。
エレナも珍しくミスが多い。
でも、アリスは驚異的だった。
ラケットを振るたびに、正確なスピンショット。
ルナのスマッシュをすべて返し、俺の弱いショットを次々打ち返す。
2-11で圧勝された。
アリスがラケットを置いて、静かに言った。
「……勝った……」
ルナが「うわー!アリスちゃん強すぎ!」と叫ぶ。
エレナが笑う。
「……アリス、すごいな」
俺も拍手した。
「アリス、ほんと上手いね」
アリスは少し照れて、微笑んだ。
四人は遊び疲れて、体育館のベンチに座った。
汗が引いて、心地よい疲労感。
エレナが俺の隣に座り、肩を寄せる。
「……みお。今日は……楽しかった」
俺は頷いた。
「うん。みんなと一緒で、楽しかったよ」
ルナが伸びをする。
「またやろうね~!次はもっと本気で!」
アリスが小さく頷く。
俺たちは体育館を出て、寮に戻った。
エレナと二人で歩きながら、彼女が俺の手を握る。
「……みお。これからも……一緒にいてくれる?」
俺は彼女の手を握り返した。
「うん。あたりまえでしょ」
エレナは幸せそうに微笑んだ。
第十九話です!ありがとうございました!
みおがルナとエレナにカミングアウトしましたが、その理由は2人の秘密を知っちゃったからです。
隠してもフェアじゃないですからね、、
女の子同士なのに~とか言われなかったのはエレナとみおが誰からもみても仲良かったからまあそうなる予感はあったなという気持ちがあったからです!
説明できなくてすいませんでした!
そして、体育祭ぶりの運動。やっぱエレナは強いです!!
えー第二十話はあの、セレスティアの例のシーンを出すつもりなのでお楽しみに!
長くなってすいませんでした!




