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17/21

恋、始まりました。

一人きりの寮室は、夏の終わりを感じさせる静けさに包まれていた。

カーテンの隙間から差し込む朝日が、床の上に細い線を描いている。

俺はベッドに座ったまま、いつもの日課を始めた。

鏡の前に立ち、深呼吸を三回。

自分の姿をまっすぐ見つめて、声を出す。

「本城みおは、男だ。名前は女の子っぽいけど、俺は男だ。ここは厨二病学園だけど、俺は普通だ。今日も、正気を保つ」

声が少し震えた。

半年以上、この言葉を繰り返してきた。

でも、最近は……少し違う。

鏡の中の俺は、髪が伸びて、顔立ちが柔らかく見える。

この学園では、誰も俺を男だと思っていない。

エレナも、アリスも、ルナも、セレスティアも、リリス会長も。

そして、俺自身も……少しずつ、慣れてしまっている。

夏休みのプールの夜が、頭に浮かぶ。

水晶の光の下で、エレナが言った言葉。

「……みお。わたしは……みおのことが……好き……かもしれない」

彼女の手の温かさ。

星空の下で握った指。

あの瞬間、俺の胸は熱くなった。

好きとは、まだ言えない。

でも、エレナの笑顔を見ると、守りたいと思った。

アリスの震える肩も、忘れられない。

「大好き」と耳元で囁かれた声。

彼女の小さな体が、俺に抱きついた感触。

二人とも、俺を「女の子」として見てくれている。

それが、嬉しいような……苦しいような。

俺は鏡に向かって、新たに呟いた。

「……残りの半年は、女として過ごす」

決めた。

会長が卒業するまでに、生徒会には言う。

それまで、エレナとアリスに……普通の気持ちを、教えてあげたい。

俺は男だ。

でも、今は……この学園で、彼女たちの側にいたい。

フィギュアのためだけじゃない。

もう、そんなことのためだけじゃない。

俺は制服に着替えて、部屋を出た。

廊下は相変わらずうるさい。

「闇の朝の儀式開始!」「封印が解けたー!」という声があちこちから聞こえる。

俺は無視して、食堂へ向かった。

食堂に着くと、エレナがすでにいつもの席に座っていた。

彼女はトレイに納豆と味噌汁を乗せて、俺を待っていた。

俺が近づくと、エレナは小さな声で言った。

「……おはよう……みお」

声が、いつもより柔らかい。

俺は少し驚いて、隣に座った。

「おはよう、椎名」

エレナは頰を少し赤らめて、俯いた。

彼女の制服はいつも通り、黒いリボンとスカート。

でも、ネクタイの結び目が少し緩くて、髪を耳にかける仕草が、なんだかいつもより普通の女の子っぽい。

俺は思わず言った。

「……エレナ、なんか……普通っぽくなった?」

エレナは慌てて顔を上げた。

「……っ! 何を言う!これは……ただの……その……闇の姫として、変化球を……!いや、違う!普通に……普通にしてみただけだ!みおが……教えてくれたから……」

必死の言い訳。

頰が真っ赤で、目が泳いでいる。

俺は笑ってしまった。

「うん。似合ってるよ。可愛い」

エレナはさらに赤くなって、味噌汁を勢いよく飲んだ。

少しむせて、咳き込む。

俺は背中をさすってあげた。

彼女は照れくさそうに、俺を見た。

「……ありがとう……みお」

ご飯を食べながら、俺たちは他愛もない話をした。

夏休みの思い出。

プールの夜のこと。

エレナは時々、俺の顔を見ては目を逸らす。

俺も、彼女の横顔を見ながら、胸が熱くなる。

授業中も、俺は上の空だった。

エレナの後ろ姿を見ながら、プールの夜を思い出す。

「好き……かもしれない」

あの言葉が、頭の中で繰り返される。

エレナが振り向いて、俺と目が合う。

二人とも、すぐに視線を逸らした。

でも、その一瞬で、胸がドキドキした。

昼休み。

エレナが俺を誘った。

「……みお。屋上……行かないか?」

俺は頷いた。

屋上は静かで、夏の風が吹いている。

エレナはフェンスに寄りかかり、俺を見た。

「……みお。あの夜のこと……覚えてるか?」

「うん。忘れられるわけないよ」

エレナは深呼吸して、俺の目を見た。

瞳が真剣だ。

「……わたし……みおのことが……大好きです」

ストレートな言葉。

俺は息を飲んだ。

エレナは頰を赤らめて、続ける。

「……催眠のときも、本当だった。みおの優しさが……笑顔が……声が……全部、好き。女の子同士なのに……こんな気持ち、変かもしれないけど……わたし……みおと、付き合いたい」

俺は戸惑った。

胸が熱い。

頭が真っ白になる。

でも、考えるより先に、声が出た。

「……はい」

エレナの目が大きく見開く。

彼女は信じられないという顔で、俺を見た。

「……本当……?」

俺は頷いた。

「うん。俺も……エレナのこと、特別だと思う。付き合おう」

エレナの顔が、一気に明るくなった。

笑顔が、太陽みたいだ。

彼女は俺に抱きついてきた。

「……ありがとう……みお!」

俺は彼女を抱きしめ返した。

正式に、付き合うことになった。

エレナは俺から離れて、屋上から飛び出すように走り出した。

「教室に戻る!みお、早く来い!」

俺は笑って、彼女の後を追った。

その夜。

エレナと別れた後、俺は部屋に戻った。

机の上に、学園長からの手紙が置いてある。

封を開けると、短い文。

「学園長室にすぐに来い。」

俺は慌てて部屋を出て、学園長室へ向かった。

重厚な扉を開けると、学園長が椅子に座っていた。

いつもの穏やかな笑顔だが、目は冷たい。

「……期待外れだな、みお君」

俺は息を飲んだ。

「どういう……意味ですか?」

学園長はため息をつく。

「半年経ったというのに、一人も普通に戻っていない。特に生徒会の五人。彼女たちは、この学園の中心だ。君に頼んだのは、この学園の全生徒を普通に戻すことだったはずだ」

俺は言葉に詰まった。

「……まだ……時間は……」

学園長は手を挙げて、俺を制す。

「残りの半年で、生徒会の五人を普通に戻せ。それができなかったら……退学だ。もちろん、フィギュアもなし」

俺は衝撃を受けた。

退学。

フィギュアがない。

何より、エレナと付き合ったばかりなのに……。

学園長はあきれるように笑った。

「……応援はするよ。だが、君の覚悟が足りないようだな。せいぜいがんばれ、みお君」

俺は学園長室を出て、廊下を歩いた。

足が重い。

部屋に戻って、ベッドに倒れ込んだ。

天井を見つめながら、途方に暮れる。

エレナの笑顔。

アリスの「大好き」

生徒会の五人。

半年で、普通に戻す。

俺は……どうすればいい?

胸が苦しい。

でも、諦められない。

エレナと、もっと一緒にいたい。

アリスとも、ちゃんと話したい。

俺は枕を抱きしめて、決めた。

「……絶対に、普通に戻す。みんなを……そして、俺自身も」

夜は深まる。

俺の戦いは、始まったばかりだ。

第十六話です!ありがとうございました!

えーついにエレナが本気の告白をしました!

みおがえぐいことを平然としてやっちゃいました、、彼も心の中では葛藤が生まれてるので許してください!

そして、久しぶりの学園長!すごい要求ですね!

えーそして、十七話では約束通りルナのあのシーンを出すのでお楽しみに!

みおは半年でできるのでしょうか、、


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