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16/18

特別な夜、始まりました。

プールサイドの空気が、夕暮れの柔らかい色に染まり始めた。

水晶の照明が水面に反射して、青白い光が揺れている。

みんなが濡れた髪を拭きながら、ビーチチェアや浮き輪を囲んで座っていた。

俺はラッシュガードのまま、膝を抱えて座っている。

エレナは隣で、タオルを肩にかけながら、俺の顔をちらちら見ている。

アリスは少し離れたところで、膝を抱えてモカちゃんのことを思い出しているような表情。

セレスティアは鎖を鳴らしながら優雅に飲み物を飲んでいる。

リリス会長はビーチチェアに深く腰掛けて、静かに微笑んでいる。

ルナだけが、元気いっぱいに立ち上がった。

「ねえねえ! まだまだ遊び足りないよ~!

せっかくの貸切プールなんだから、もっと楽しいことしようよ!」

ルナが両手を広げて、みんなを見回す。

金髪のショートカットが水滴を飛ばし、フリル付きのスク水が揺れる。

「じゃじゃーん! 『闇の水晶ナイトゲーム』!みんなで夜のプールで、チーム対抗ゲームするの!勝ったチームは、負けたチームに一つだけお願いをするルール!どう? 面白そうでしょ!」

エレナが眉を上げる。

「……ふん。闇の儀式としてなら、悪くないな。だが、ルナ。貴様の提案はいつも無茶苦茶だぞ」

ルナは笑いながら手を振る。

「大丈夫大丈夫!最初は簡単なゲームから!まずは『闇の浮き輪リレー』!流れるプールで、浮き輪に乗って一周するの!

二人一組で、バトンタッチしながら!ペアは……じゃーん!エレナちゃんとみおちゃん!アリスちゃんと私!会長とセレスティアさん!」

俺は一瞬固まった。

「え、俺とエレナ?」

エレナの頰が少し赤くなる。

「……仕方ないな。監視役として、しっかり見守らせてもらうぞ」

ルナが浮き輪を三つ持ってきて、みんなに渡す。

流れるプールはゆっくり回る川みたいで、ライトアップされて幻想的だ。

俺とエレナは同じ浮き輪に乗り、エレナが前、俺が後ろ。

彼女の背中がすぐ近くて、濡れた髪から滴る水が俺の胸に落ちる。

甘いシャンプーの香りがする。

「スタート!」

ルナの合図で、みんなが浮き輪を漕ぎ始める。

エレナが一生懸命に手で水をかく。

俺も一緒に漕ぐけど、エレナの背中が視界を占めて、ちょっと集中できない。

「……みお、もっと漕げ!我々が負けるわけにはいかぬ!」

「わ、わかった!」

浮き輪がゆっくり進む。

アリスとルナのペアは、ルナが元気に漕いで、アリスが小さく手伝っている。

アリスの表情が、少し笑ってる。

会長とセレスティアは、優雅に漕いでいるのに、なぜか速い。

俺たちはなんとか一周して、ゴール。

結果は、会長チームの圧勝。

ルナが「うわー! 負けたー!」と叫ぶ。

「じゃあ、勝ったチームは、負けたチームにお願いを一つ!会長チーム、何かお願いする?」

リリス会長が優雅に微笑む。

「ふむ……では、負けたチームは全員で、闇の水晶プールに『闇の叫び』を捧げよ。一斉に『闇万歳!』と叫ぶのだ」

ルナが「えー!」と文句を言うけど、エレナは真剣に頷く。

「……仕方ない。闇の儀式だ。やるぞ」

みんなでプールサイドに並んで、一斉に叫ぶ。

「闇万歳!」

声が水晶の壁に反響して、響き渡る。

俺もつられて叫んだ。

なんだか、馬鹿馬鹿しいけど……楽しい。

エレナが俺を見て、小さく笑った。

「……貴様、意外と様になってるな」

「まあ……うん」

次のゲームは『闇の宝探し』。

プールの中に沈められた小さな宝箱を探す。

宝箱の中には、みんなの名前が入った紙が入っていて、見つけた人がその人に願い事を一つ言えるルール。

みんなで潜って探す。

俺はエレナと一緒に潜った。

水中で彼女の髪が揺れて、きれいだ。

エレナが宝箱を見つけて、俺に手招きする。

一緒に浮上して、箱を開ける。

中には「みお」の紙。

エレナが俺を見て、照れながら言った。

「……みお。願い事……一つ、聞いてくれ」

俺は頷いた。

「うん。何?」

エレナは少し俯いて、囁く。

「……今夜……一緒に、星を見ながら……話したい」

俺の胸が熱くなった。

「……うん。わかった」

続いて、ルナが見つけたのは「アリス」。

ルナは笑いながらアリスに抱きつく。

「アリスちゃん! 願い事は……これからも、一緒に遊ぼうね!」

アリスは少し照れながら、頷いた。

「……うん」

セレスティアが見つけたのは「ルナ」。

セレスティアは鎖を鳴らしながら言う。

「ふふふ……願い事は、貴様の騒がしさを少し抑えてもらうことだわ」

ルナが「えー!」と叫ぶ。

リリスが見つけたのは「エレナ」。

リリスは優しく微笑む。

「エレナ。願い事は、これからも、人として、強くあれ」

エレナは少し照れて、頷いた。

「……はい、会長」

ゲームが終わって、みんなでプールサイドに座った。

夜のプールは、水晶の光がより幻想的だ。

みんなとは少し離れた場所で、エレナが俺の隣に座り、膝を抱える。

「……みお。今日は……楽しかったな」

俺は頷いた。

「うん。みんなと一緒で、楽しかった」

エレナは少し俯いて、指をいじりながら言った。

「……あの……そのだな……みお」

「ん?」

「……普通のことを……教えてほしい」

俺は少し驚いた。

「普通のこと?」

エレナは頰を赤らめて、続ける。

「……我は……ずっと、闇の姫として生きてきた。普通の女の子が……どうやって、友達と話すのか……どうやって、好きな人に……気持ちを伝えるのか……知らないんだ……」

彼女の声が震える。

俺は胸が熱くなった。

「……エレナ」

エレナは俺を見上げた。

瞳が潤んでいる。

「……教えてほしい……みお。普通の……女の子として……どうしたらいいのか……」

俺は彼女の手を取った。

冷たい手が、俺の温かさで温まる。

「……うん。俺が……ゼロから教えてあげる」

エレナの頰が、さらに赤くなった。

彼女は小さく微笑んだ。

「……ありがとう……みお」

その後、みんなが少しずつ散らばり始めた。

ルナは流れるプールで浮き輪に乗りながら歌い、アリスは浅いところで足をぱちゃぱちゃさせている。

セレスティアはジェットバスで鎖を鳴らしながらリラックス。

リリス会長はビーチチェアで本を読んでいる。

エレナは俺の手を引いて、プールの端にある小さな階段を上った。

「……こっちに来い。星が見える場所がある」

階段を上ると、そこはプールの屋上部分。

ガラスドームの天井越しに、夜空が見える。

水晶の光が抑えられ、星がきれいに輝いている。

エレナは俺を連れて、ドームの端にあるベンチに座った。

二人は肩を寄せ合うように座る。

エレナの濡れた髪から滴る水が、俺の肩に落ちる。

彼女は膝を抱えて、星を見上げた。

「……みお。普通の女の子は……こんなとき、何を話すんだ?」

俺は少し考えて、答えた。

「そうだな……好きなこととか、嫌いなこととか……将来の夢とか……あとは、今日楽しかったこととか」

エレナは頷いて、俺を見た。

「……では……わたしから。今日、一番楽しかったのは……みおと一緒に浮き輪に乗ったことだ。貴様の胸が……すぐ後ろにあって……安心した」

俺の胸が熱くなった。

「……俺も。エレナと一緒に浮き輪に乗ったとき、楽しかった。エレナの笑顔が見れて……嬉しかった」

エレナは頰を赤らめて、目を逸らす。

「……馬鹿……そんなこと……言うな……」

でも、彼女の手が、俺の手をそっと握る。

指が絡む。

俺は彼女の手を握り返した。

「……エレナ。普通の女の子は、好きな人に……こうやって、手を繋ぐんだよ」

エレナはびくりと肩を震わせた。

でも、離さない。

「……そう……なのか……」

俺は星を見上げながら、言った。

「うん。そして……気持ちを、素直に伝える」

エレナは俺を見上げた。

瞳が潤んでいる。

「……みお。わたしは……みお……のことが……」

言葉を途中で切る。

エレナは深呼吸して、続ける。

「……好き……かもしれない」

俺の心臓が、大きく跳ねた。

エレナの頰が、真っ赤になる。

俺は彼女の手を強く握った。

「……俺も……エレナのこと……特別だと思ってる」

エレナは目を閉じて、俺の肩に頭を預けた。

静かな夜。

水晶の光と星の光が、俺たちを包む。

エレナの普通は、まだ始まったばかりだ。

俺は、彼女に、もっと教えてあげたいと思った。

この学園で、正気を保つのは大変だ。

だけど俺は、彼女の側にいたい。

水面が静かに揺れる。

夏の夜は、まだ長い。

第十五話です!ありがとうございました!

ついに!!エレナがみおに気持ちを伝えました!そして、普通について興味がでてきました!

これで、やっとみおの目標一歩前進です!

次の話は、エレナとの日常がメインになります!お楽しみに!

追記(十七話では、ついにルナが、、、、しちゃいます!)

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