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葛藤、始まりました。

一人きりの寮室はいつも静かすぎる。

窓から差し込む夕陽が、床の上に長い影を落としている。

俺はベッドに腰を下ろし、膝を抱えて天井を見上げた。

学園に来てから、ほぼ半年が経った。

思えば、本当にいろんなことがあった。

厨二病だらけのクラス。

エレナの監視。

生徒会との関わり。

体育祭。

舞踏会。

温泉。

催眠のコイン。

そして、アリスとエレナの秘密。

どれも、普通の高校生活とはかけ離れた出来事ばかりだった。

それでも、俺はまだ「普通」でいられている。

いや、本当にそうだろうか?

最近、胸の奥がざわつく瞬間が増えた。

エレナの赤い頰。

アリスの震える肩。

あの二人の顔が頭から離れない。

半年経ってもこの学園の生徒たちは俺を女の子だと思い込んでいる。

最初は「名前がみおだから仕方ない」と思っていた。

でも、今はもう言い出せない。

言い出したら、すべてが変わってしまう気がする。

エレナは俺を「影の眷属・みお」と呼び続け、アリスは「みお」と呼ぶ。

もし「俺は男だ」と言ったら、、二人はどう思うだろう。

驚くか。

引くか。

それとも、怒るか。

想像するだけで、胸が締め付けられる。

でも、このまま女のふりをして、彼女たちと距離を縮めていくのは本当に正しいことなのだろうか?

俺は男だ。

エレナもアリスも女の子だ。

なのに、彼女たちの視線や言葉が俺の心をこんなに揺らす。

これは、ただの友情だろうか。

それとも、もっと、深い何か?

アリスとはあの温泉以来、ほとんど話していない。

彼女は俺を見ると目を逸らすようになった。

漏らしてしまったことが恥ずかしいんだろう。

タオル一枚で俺に抱きついたこと。

彼女はどう思ってるか分からないが、少なくとも俺はあのとき彼女を嫌いになんて思わなかった。

むしろ守ってあげたいと思った。

あの幼い表情。涙で潤んだ瞳。震える声。

全部、俺の胸に残っている。

アリスに、ちゃんと面と向かって話したい。

「気にしないで」って、もう一度言いたい。

でも、彼女が避けている以上、俺から近づくのは難しい。

同様に、エレナのことも、頭に残ってる。

催眠のコインで暴かれた本音。

「……わたしが気になっている人は……本城みお……です……」

あの言葉が、毎晩のようにリプレイされる。

エレナの赤くなった頰。震える唇。

「みおの優しいところが……気になります……」

彼女は俺のことを、そんな風に思っていたのか。

俺はどう思ってる?

エレナの笑顔を見ると、胸が熱くなる。

彼女の照れた表情を見ると、守ってあげたくなる。

これは、、恋?

いや、まだ分からない。

でも、確実に、俺の中で何かが変わり始めている。

「男だって、ちゃんと言った方がいいのかな」

俺は呟いた。

声に出すと、胸が痛くなった。

言ったら、エレナはどう思うだろう。アリスはどう思うだろう。

二人は俺を女の子として見てくれている。

もし男だと知ったら距離を置かれるかもしれない。

それが怖い。

でも、このまま嘘をつき続けるのも苦しい。

葛藤が頭の中で渦を巻く。

答えが出ないまま時計の針が進む。

学校に行く時間だ。

俺はため息をついて、立ち上がった。

一旦保留だ。

まだ、決められない。

教室に着くと、エレナがいつもの席で待っていた。

俺は隣に座ったけど、上の空だった。

前の催眠のことが、頭をよぎる。

エレナのぼんやりした目。

敬語で俺の名前を呼んだ声。

あのときのエレナは、まるで別人だった。

でも、あの本音はやっぱり本当の気持ちなんだろうな。

俺は無意識に、エレナの方を見た。

彼女も、俺を見ていた。

目が合う。

エレナは慌てて視線を逸らす。

俺も、慌てて教科書に目を落とした。

心臓の鼓動が、少し速くなった。

授業中も、全く集中できない。

先生の声が遠く聞こえる。

俺はエレナの横顔を見てしまう。

長い黒髪。白い首筋。

時々、頰が赤くなる。

エレナも、俺をちらちら見ている。

また目が合う。

今度は、二人ともすぐに逸らした。

でも、その一瞬で、胸が熱くなった。

エレナの瞳に、はっきりと俺の姿が映っていた気がした。

お昼休み。

いつものように、エレナと食堂で向かい合う。

俺はから揚げを箸でつつきながらぼんやりしていた。

エレナの話が耳に入ってこない。

彼女が疑問に思ったのか、箸を止めて俺を見た。

「影の眷属・みお。どうした?今日、なにか変だぞ」

俺はハッとして、現実に引き戻された。

「あ、ごめん。ちょっと、考え事してて」

エレナは少し心配そうに眉を寄せる。

「何かあったのか?だが、貴様の光が、いつもより弱まっているように見える」

俺は苦笑した。

「いや、それはないよ。ただ、、いろいろ考えてただけ」

エレナは納得いかなそうだったけど、それ以上追及しなかった。

俺たちは静かに食事を続けた。

そんなとき、元気な声が響いた。

「やっほー!エレナちゃん、みおちゃん!また邪魔しちゃうよ~!」

ルナだった。

トレイを持って、笑顔でテーブルに座る。

手に持っているのは、あのコイン。

紐に通して、揺らしている。

「ねえねえ!また試してみよっか?この前の面白かったよね!今度はみおちゃんに、、」

エレナが即座に立ち上がった。

「ルナ!貴様、またそのコインか!この前のことは、もう忘れろ!」

エレナはルナの手からコインを奪い取ろうとする。

ルナは笑いながら逃げ回る。

「わー! 待って、エレナちゃん!一回だけ! 一回だけだよ~!」

俺はその光景を見て、思わず笑った。

二人がじゃれ合う姿が、なんだか微笑ましくて。

胸の重さが、少し軽くなった。

頭が、スッキリした気がした。

午後の授業もずっと考え事だった。

先生の声が頭に入らない。

エレナの横顔を見るたび、催眠のときの言葉が蘇る。

そして放課後、エレナに呼び止められた。

「……みお。生徒会室に来い」

正直、乗り気じゃなかった。

でも、頭のモヤモヤを減らせるかもと思い頷いた。

生徒会室に入ると、全員が揃っていた。

リリス会長、セレスティア、ルナ、アリス。

アリスは俺を見たとたん、顔を下げてしまった。

俺は胸がざわついた。

やっぱり嫌われてるかも。

不安が広がる。

しばらく黙っていると、リリス会長が口を開いた。

「諸君。前期生徒会としての活動ご苦労だった。そこで、夏休みの予定について話そう。提案だが、休息を兼ねて、生徒会メンバーとみおで、学園内の巨大プール施設に行こうと思うんだがどうだ?」

俺は驚いた。

「……プール?」

「然り。学園の外にある、闇の水晶プールだ。貸切で、もちろん無料。夏の闇を、共に楽しもうではないか」

俺は即座に拒否しようとした。

「いや、俺は……」

でも、エレナの目が輝いている。

ルナが「やったー! プールだー!」と飛び跳ね、セレスティアが「光の残滓を水で浄化するのは、面白い」と笑う。

アリスは俯いたまま、でも小さく頷いた。

俺は、、なにも言い出せなかった。

「、、分かった。行きます」

詳細は後日と会長に言われ、俺は生徒会室を出た。

頭をスッキリさせるつもりだったのに、問題がまた一つ増えた。

重い足取りで部屋に戻ってると後ろから声が聞こえた。

「……みお」

アリスだった。

彼女は俯いて、小さい声で言った。

「……ごめんね。あのときから……ずっと、避けてて……」

俺は慌てて首を振った。

「いや、俺の方こそ、、気にしないで。俺は、なんとも思ってないから!」

アリスは顔を上げた。

瞳が潤んでいる。

そして、突然、俺に抱きついてきた。

子供のような勢いで。

俺は驚いて、固まった。

「え……アリス?」

アリスは俺の耳元で、囁くように言った。

「……大好き」

一言だけ。

それだけ言って、アリスは俺から離れ、走り去っていった。

俺はその場に立ち尽くすしかできなかった。

胸が、熱い。

アリスの温もりが、胸にまだ残っている。

彼女の小さな声が、耳に残っている。

「大好き」

女の子同士なのに、、いや、俺は男だ。

でも、アリスは知らない。

このまま、俺は嘘をつき続けるのか。

胸の奥で、葛藤が再び渦を巻く。

頭痛がめちゃくちゃ痛かったがなんとか部屋に戻りベッドに倒れ込んだ。

天井を見つめながら今日のことを思い出す。

エレナの視線。

アリスの抱きつき。

「大好き」の一言。

俺は、二人に特別な気持ちを抱いている。

それは、きっと、、友情以上かもしれない。

だけど、俺は男だ。

この秘密を、いつか明かさなきゃいけない。

でも、今はまだ、怖い。

俺は枕を抱きしめて、目を閉じた。

今は一回全部忘れよう。

夏休みのプール。

そこで何かが変わるかもしれない。

俺の心も。

彼女たちの心も。

第十三話です!ありがとうございました!

みおの気持ちを分かってもらえたと思います!

そして、アリスが思い切ったことをしてきました!アリスは一歩を踏み出しましたが、みおは、、

次はプール回です!

半分コミカルに半分はラブを書けたらなと思うのでお楽しみに!


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